抄録
近年の地域社会の多文化化の進展と、災害の頻発化・激甚化によって、多文化社会の地域防災においてパラダイムシフトが求められている。従来の「災害時にいかに外国人を救うか」から、「地域社会で外国人と共助の関係を築くか」が新たな課題となっている。そこで本研究では、外国人を交えた共助のネットワーク形成プロセスを明らかにすることを目的とし、地域社会のキーパーソンを対象にインタビューを行った。修正版グラウンテッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)によって分析を行った結果、狭義の防災活動に限らず、外国人住民が参加する地域日本語教室や国際交流活動等において防災の視点を取り入れることが有効であることが明らかとなった。また、「居場所」の視点は、主体的な防災活動を考える上で、外国人の防災教育に留まらず、日本人の防災教育においても生かしうると考えられる。