症例は54歳女性.右下腿後面の腫脹などのため前医を受診した.巨大卵巣癌による下大静脈の外的圧迫と易血栓性が原因と考えられる静脈血栓塞栓症を認め,一時留置型下大静脈フィルターが留置された.抗凝固療法として2日間ヘパリンの持続点滴を行い,DOAC内服に置き換えられた.その後卵巣癌の加療目的に当院へ転院した.転院後に撮影したCTで,下大静脈フィルター並びに両側下腿まで血栓が充満していたためDOACを中止し,ヘパリンの持続点滴を開始した.予定のように卵巣癌手術を行い,術後血栓溶解目的でt-PA, ワーファリンを追加したが血栓の状態に改善はなかった.牽引による下大静脈フィルター抜去が試みられたが困難であり,開腹下下大静脈フィルター摘出,下大静脈結紮術を施行した.下大静脈フィルターの留置中には,適切な抗凝固療法を行う必要があり,抜去困難となった際には,外科的摘出・下大静脈結紮術が有用であると考えられた.
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