水温,塩分,溶存酸素(DO),化学的酸素消費量(COD),クロロフィルa,懸濁有機態窒素(PON),総窒素(TN),総リン(TP),溶存無機態窒素(DIN),溶存無機態リン(DIP)など,1970年代以降にモニタリングした三河湾の水質を基に解析した.その結果,水質の水平分布の特徴は地域的に異なり,水質の変動には長期的な傾向があることが分かった.透明度はTN,TPが高かった1990年代前半に低く,赤潮は頻発していた.その後,総量規制による陸域からの窒素,リン負荷量削減によってTN,TPは減少した.しかし,貧酸素水塊面積はTN,TP,赤潮延べ日数の減少,透明度の増加とは逆に拡大傾向にあった.重回帰分析の結果,1980年から1997年の間,貧酸素水塊にはアサリ(Rudittapes philippinarum)年間漁獲量が縮小要因として最も大きく貢献していた.一方,1990年代後半以降はアサリ年間漁獲量が増加しているにも関わらず貧酸素水塊面積は拡大傾向にあった.1997/1998年に水温が急激に上昇しており,貧酸素水塊の拡大原因に三河湾の環境の変化が考えられた.しかし,2011年以降,貧酸素水塊は縮小傾向にあり,この原因として,水温低下による成層構造の弱まり,アサリ資源量の増加,人工干潟の造成が示唆された
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