水産海洋研究
Online ISSN : 2435-2888
Print ISSN : 0916-1562
79 巻, 1 号
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原著論文
  • 山田 智, 岩田 靖宏, 堀口 敏宏, 鈴木 輝明
    2015 年 79 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2025/07/19
    ジャーナル フリー

    2010年春–2012年秋に三河湾でアサリ浮遊幼生および溶存酸素の鉛直分布を調査した.アサリ浮遊幼生は通常,底層あるいは水柱に均一に分布していた.しかし,夏季,底層に貧酸素水塊が形成されるとアサリ浮遊幼生の分布は表層–中層に限られた.D型幼生の出現はDOが4mg・l-1以下の層で,アンボ期およびフルグロウン期幼生の出現はDOが2mg・l-1以下の層ではわずかであった.アサリ浮遊幼生の日周鉛直分布は底層に貧酸素水塊が形成されていない時には昼間底層に,夜間表層に分布した.しかし,貧酸素水塊が底層に形成されると,終日,表層–中層に分布した.これらのことから,アサリ浮遊幼生は貧酸素水塊を避けることが示唆される.アサリ浮遊幼生の出現のピークは5–6月(貧酸素水塊が発達する直前)と10月(貧酸素水塊が消失した直後)に観察された.これらのピークの出現時期は産卵のピークと一致する.春季のアサリ浮遊幼生出現のピークの生残率は秋季のピークの生残率より低く,おそらく,春季の貧酸素水塊の発達が,アサリ浮遊幼生の高い死亡率をもたらしていることが示唆される.

  • 佐藤 充, 坂口 健司
    2015 年 79 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2015年
    公開日: 2025/07/19
    ジャーナル フリー

    北海道東部太平洋海域へ来遊するスルメイカの体サイズは長期的に変動をしていた.この変動は,資源量が変動した時期,そしてレジームシフトと同様の時期に起きた可能性がある.さらに,体サイズの変化は発生時期が変化した影響が指摘されている.本報告では,1965–2008年に標本を採集し,体サイズの変化を明らかにするとともに,1999–2008年について体サイズと発生時期の関係を調べた.体サイズは,1974–1988年に,それ以前および以後よりも大きくなった.スルメイカの体サイズは,来遊資源量の長期的な変化と同じであり,その時期はレジームシフトと同様の時期であった.1999–2008年の発生時期は11–4月にかけてで,2–3月が主体であった.さらに発生時期と体サイズの間には負の相関関係があり,体サイズの変化は発生時期が影響したと考えられた.

  • 本田 是人, 戸田 有泉, 二ノ方 圭介, 中嶋 康生, 鈴木 輝明
    2015 年 79 巻 1 号 p. 19-30
    発行日: 2015年
    公開日: 2025/07/19
    ジャーナル フリー

    水温,塩分,溶存酸素(DO),化学的酸素消費量(COD),クロロフィルa,懸濁有機態窒素(PON),総窒素(TN),総リン(TP),溶存無機態窒素(DIN),溶存無機態リン(DIP)など,1970年代以降にモニタリングした三河湾の水質を基に解析した.その結果,水質の水平分布の特徴は地域的に異なり,水質の変動には長期的な傾向があることが分かった.透明度はTN,TPが高かった1990年代前半に低く,赤潮は頻発していた.その後,総量規制による陸域からの窒素,リン負荷量削減によってTN,TPは減少した.しかし,貧酸素水塊面積はTN,TP,赤潮延べ日数の減少,透明度の増加とは逆に拡大傾向にあった.重回帰分析の結果,1980年から1997年の間,貧酸素水塊にはアサリ(Rudittapes philippinarum)年間漁獲量が縮小要因として最も大きく貢献していた.一方,1990年代後半以降はアサリ年間漁獲量が増加しているにも関わらず貧酸素水塊面積は拡大傾向にあった.1997/1998年に水温が急激に上昇しており,貧酸素水塊の拡大原因に三河湾の環境の変化が考えられた.しかし,2011年以降,貧酸素水塊は縮小傾向にあり,この原因として,水温低下による成層構造の弱まり,アサリ資源量の増加,人工干潟の造成が示唆された

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