三河湾において,漁場調査と長期水質データから,アサリ資源と栄養塩類(TNとTP)とクロロフィルa(Chl-a)の濃度の関係を整理し,アサリ漁業に必要な栄養塩類とクロロフィルa濃度の水準について考察した.秋冬季の現存量の変化量と漁場の水質との相関係数は正の値となり,特に夏のChl-aとは有意な相関であった.長期水質データでは閾値(TN: 385–417 μg·L-1, TP: 40–42 μg·L-1, Chl-a: 10.7–12.2 μg·L-1,いずれも年平均値)を下回ると低いCPUA(単位漁場面積当たりアサリ漁獲量)がみられた.ロジスティック回帰分析により,資源崩壊リスクが高まる濃度はTNで364 μg·L-1,TPで39 μg·L-1, Chl-aで9.3 μg·L-1,漁業成立水準を満たす濃度はTNで457 μg·L-1,TPで54 μg·L-1, Chl-aで14.4 μg·L-1と算定された.以上の濃度は,三河湾のアサリ漁場を含む海域に適用されている環境基準II類型の基準濃度より高く,アサリ資源回復には適切な栄養塩管理が必要であると考えられた.
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