北海道オホーツク海沿岸におけるスルメイカの漁獲量を漁期前に予測するためのモデルを,本種の北海道東部太平洋における分布量の情報と,北海道北東の国後島沖における表面水温を用いて検討した.モデルの応答変数とした1996年を除く1993–2011年の10–12月のオホーツク海における定置網類による本種の漁獲量は,調査船による8月下旬の釧路以東の北海道東部太平洋における本種のCPUE,小型いか釣り漁船による7–8月の釧路港における本種のCPUE,国後島の南側の7月の表面水温の3つの説明変数を用いた一般化線形モデルにより精度高く予測することができた.このモデルによる予測値と観測値の相関係数は0.853であった.北海道オホーツク海沿岸で漁獲されるスルメイカの主群が日本海ではなく太平洋からの来遊群であることが支持された.
2100年までのアカイカ(Ommastrephes bartramii)産卵場における餌環境変動を,気候変動に関する政府間パネルの第3次結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP3)の複数シナリオに基づく複数モデルのシミュレーション結果を用いて推定した.本種稚仔の餌量(動物プランクトン等)は混合層深度データから間接的に推定した.その結果,21世紀を通じて産卵場は北上し,産卵場の餌量も増加することが示唆された.産卵場での餌量の増加により資源量も増加する可能性はあるものの,温暖化による回遊経路の変化は考慮していないため,現在の主漁場である東北沖での漁獲量変動についてはさらなる調査・検討が必要である.
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