東西太平洋のマイワシ資源変動の同期性を検討するため,漁獲量,漁獲死亡係数,親魚量及び生産力(加入量の対数残差:LNRR)を検討した結果,以下の結論を得た:
1)フンボルト海域のマイワシ(Sardinops sagax sagax)と日本のマイワシ(S. melanostictus)太平洋系群の生産力は1970–99年に同期した,2)1970年代初期のフンボルト海域と日本のマイワシの加入量と生産力の増加は各海域の表面水温の好適な偏差と関連し,1977年以降の好適レジームにより水温偏差は更に増加した,3)フンボルト海域,日本および恐らくカリフォルニア湾のマイワシ(S. sagax caeruleus)で1988/89年に生じた加入の失敗は気候レジームシフト年と一致した自然現象,2008–12年に生じたカリフォルニア北部系群マイワシの加入の失敗はこの間のPDOとCalCOFI海域の表面水温の負偏差と一致した自然現象である,4)1990–2000年代はPDOが一般的にマイワシに好適と見なされるレジームであったが,フンボルト海域と日本のマイワシへの高い漁獲圧と各海域の不適な表面水温偏差により資源回復が妨げられた.漁業管理への意義についても考察した.
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