水産海洋研究
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原著論文
三河湾におけるアサリ浮遊幼生の鉛直分布に与える貧酸素水塊の影響
山田 智 岩田 靖宏堀口 敏宏鈴木 輝明
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2015 年 79 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

2010年春–2012年秋に三河湾でアサリ浮遊幼生および溶存酸素の鉛直分布を調査した.アサリ浮遊幼生は通常,底層あるいは水柱に均一に分布していた.しかし,夏季,底層に貧酸素水塊が形成されるとアサリ浮遊幼生の分布は表層–中層に限られた.D型幼生の出現はDOが4mg・l-1以下の層で,アンボ期およびフルグロウン期幼生の出現はDOが2mg・l-1以下の層ではわずかであった.アサリ浮遊幼生の日周鉛直分布は底層に貧酸素水塊が形成されていない時には昼間底層に,夜間表層に分布した.しかし,貧酸素水塊が底層に形成されると,終日,表層–中層に分布した.これらのことから,アサリ浮遊幼生は貧酸素水塊を避けることが示唆される.アサリ浮遊幼生の出現のピークは5–6月(貧酸素水塊が発達する直前)と10月(貧酸素水塊が消失した直後)に観察された.これらのピークの出現時期は産卵のピークと一致する.春季のアサリ浮遊幼生出現のピークの生残率は秋季のピークの生残率より低く,おそらく,春季の貧酸素水塊の発達が,アサリ浮遊幼生の高い死亡率をもたらしていることが示唆される.

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© 2015 一般社団法人 水産海洋学会
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