土木学会論文集
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1999 巻, 633 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 西野 文雄, 阿井 正博, 田村 健太郎, 今井 裕敬
    1999 年1999 巻633 号 p. 1-9
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    矩形ラーメン柱の有効座屈長が, 隣接するはり部材の弾性拘束をも含めた座屈挙動によって考えられるべきことは周知の処であるが, 理論的に確立された具体的な手法についてこれまで必ずしも明確ではない. 本文では, 各種類毎の柱とそれに接続するはり部材に注目したとき, それらの部材のみより成る一様なラーメン構造が存在し, その座屈モードの中に構造単位が見出せることを最初に示している. それらの構造単位の座屈軸力は, はりによって弾性拘束された後の各柱の軸力強度であり, 目的の有効長に変換することができる. 一般の矩形ラーメンは異る構造単位を組み合わせた構造であるが, 全体座屈時でのそれらの連成状態を評価することも行っている.
  • 劉 青芸, 葛西 昭, 宇佐美 勉
    1999 年1999 巻633 号 p. 11-24
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, 鋼製パイプ断面橋脚に対する4つの復元力モデル, すなわち: バイリニアモデル, トリリニアモデル, 統合2パラメータモデルおよびダメージインデックスモデルによる弾塑性地震応答解析結果を比較することを目的としている. 結果として, 強度および剛性の劣化を考慮していないバイリニアモデルは, 残留変位を精度良く予測できないことを示した. また, トリリニアモデルによる解析結果は, バイリニアモデルに比べて, 統合2パラメータモデル, あるいはダメージインデックスモデルによる動的解析結果に近いが, 繰り返しによる強度劣化および剛性劣化を考慮していないため, 適用範囲などに注意する必要があることを示した. 最後に, レベル2・タイプI・III種地盤地震動に対する残留変位を除いて, 統合2パラメータモデルとダメージインデックスモデルを用いた解析結果が適用範囲HrHy(Hr=終局強度) において良く一致していることを示した.
  • John BOLANDER, 吉武 謙二, Jeffrey THOMURE
    1999 年1999 巻633 号 p. 25-32
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    有限要素解析における要素内の応力がテンソル量であるのに対し, 剛体一ばねモデル解析で求められる応力は要素境界辺における表面力 (ベクトル量) である. 本論文では, ランダム形状要素を用いた剛体-ばね系モデルに基づく応力テンソルの解析法を提案する. まず, 一様な引張りを受ける材料の応力解析から, 剛体-ばね系は次の2つの条件を満たすとき弾性的に均質であることを示す. すなわち, 1) 剛体要素の幾何形状がヴォロノイ分割図で定義されること, および2) 系の変形自由度がヴォロノイ分割の母点で定義されること. さらに, より一般的な荷重条件に対して, この応力テンソル算定アルゴリズムの適用性と精度を有限要素解析結果との比較により提示する.
  • 大賀 水田生, 中村 大輔, 山田 勝己, CROLL J. G. A.
    1999 年1999 巻633 号 p. 33-40
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, サンドイッチ断面を有する円筒シェル構造が外圧を受ける場合について, まずその線形座屈強度を求める解析式を誘導し, 既往の解と比較することにより, 誘導した解析式の妥当性を検討するとともに, 円筒サンドイッチシェルの円周方向の座屈モードが線形座屈強度に及ぼす影響および座屈時のひずみエネルギー成分について考察する. さらに, 外圧を受ける円筒サンドイッチシェルの初期不整によるばらつきを考慮した弾性座屈強度すなわち弾性座屈強度の下限値を理論的に推察する方法を Reduced Stiffness 法 (RS法) に基づき導くとともに, 本法を外圧を受ける円筒サンドイッチシェルに適用し, 得られた座屈強度をFEM耐荷力解析による結果と比較することにより, 誘導した方法の妥当性, 有効性について検討する.
  • 野田 茂, 星谷 勝
    1999 年1999 巻633 号 p. 41-59
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    複数地点で観測値が与えられた条件付対数正規確率場において, 不偏推定・最小誤差共分散規範に基づく Kriging 法と条件付確率密度関数法には固有な差があるのであろうか. この疑問に答えるため, 前者から導いた最適推定値, 推定誤差共分散, 後者からの条件付平均値, 条件付共分散の検討結果ならびに数値分析の結果, 1) 最適推定値と条件付平均値は完全に一致すること, 2) 推定誤差共分散は条件付共分散と異なること, 3) 推定誤差共分散は観測位置のみに依存し, 観測値に無関係であるが, 条件付共分散は観測値に依存すること, 4) 推定誤差共分散は条件付シミュレーションに関与しないことが見出された. 2つの方法は正規確率場において完全に等価であるが, ここで指摘した知見は条件付正規確率場とは異なる性質である.
  • 野田 茂, 星谷 勝
    1999 年1999 巻633 号 p. 61-80
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本論文では, エントロピーの概念を用いて条件付確率場を推定する理論を提案した上で, 複数観測点のデータに基づいて未観測点での最大エントロピー推定値, 条件付エントロピー, 条件付平均エントロピーなどの性質を星谷・野田・稲田の理論 (1997) と比較分析した. 6つのタイプの確率場 (正規, 対数正規, 指数, レイリー, グンベル, 一様分布) を検討した結果, 1) 最大エントロピー推定値, 条件付エントロピーは観測値に依存すること, 2) 条件付平均エントロピーは観測配置のみに左右され, 無条件平均エントロピーよりも大きくならないこと, 3) 不偏推定・最小誤差分散に基づく最適推定値, 条件付分散, 推定誤差分散と同一の性質を有すること, 4) 正規確率場の Kriging と最大エントロピー推定法の結果は等価であることなど, 新たな知見が得られた.
  • 安松 敏雄, 石田 博, 田中 克則, 村山 八洲雄
    1999 年1999 巻633 号 p. 81-92
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    橋梁のゴム支承と併用される変位制限構造としてのアンカーバーを対象に, アンカーバー・コンクリート系の一連の交番加力模型実験を行った. その結果, アンカーバーの破壊モードはせん断破壊ではなく曲げ引張り破壊であることが確認された. 荷重-変位履歴曲線の形状は条件によって異なるが, 耐荷力は上下部工の隙間と鋼棒の直径の比が大きいほど小さく, 標準的な隙間・直径比では鋼棒のさや管内の遊び量にはあまり影響を受けないこと, 鋼棒の引張り強度が同程度なら降伏強度の影響は少ないことが明らかになった. これを基に耐荷力評価式を提案するとともに, モデル化した履歴曲線を用いて橋梁の地震応答解析を行い, 変形性能の観点からその耐震性を考察した.
  • 岡林 隆敏, 山森 和博, 讃岐 康博, 田村 太一郎
    1999 年1999 巻633 号 p. 93-102
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本論文では, うなりを伴う振動実測データより構造物の振動特性を推定する手法として, 実測データに2自由度系の単位衝撃応答関数と周波数伝達関数を非線形最小二乗法で曲線適合する, 時間領域と周波数領域の構造同定手法を提案した. さらに, データ入力から動特性推定までを処理できるシステムを仮想計測器ソフトウェアで実現した. 本手法を2自由度系と有限要素法でモデル化された吊床版橋の数値シミュレーションによる衝撃応答波形に適用し, 本推定法により高精度な推定が可能であることを確認した, さらに, 本手法をうなりを伴う吊床版橋の実測データに適用し, 本推定法により安定した高速の推定が可能であることを検証した.
  • 吉田 好孝, 藤野 陽三, 時田 秀往, 本田 明弘
    1999 年1999 巻633 号 p. 103-117
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    東京湾アクアライン橋梁部の最大支間長240mを含む10径間連続鋼床版箱桁橋 (全長1,630m) において, 部分模型及び10径間全体模型による風洞試験においてみられたのと同様の渦励振が発生した. そのため架設後の橋梁に対し動態観測を行い, 渦励振による鉛直撓み振動が桁に生じることが確認された. 実橋で観測された1次撓み振動は風速約16~17m/secで振幅が最大となり, 大きい場合には約54cmに達した. この振幅は, 風洞試験値を起振実験で得られた実橋の対数減衰率で補正した値と整合的であった. また風速23m/sec前後においては, 2次モードの渦励振と思われる振動の発現が認められた. 実橋において渦励振が生じた風向は, 橋軸直角方向を中心にほぼ±20°の範囲であった.
  • 吉田 好孝, 藤野 陽三, 佐藤 弘史, 時田 秀往, 三浦 章三郎
    1999 年1999 巻633 号 p. 119-134
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    東京湾アクアライン橋梁部の最大支間長240mを含む10径間連続鋼箱桁橋では, 桁架設後に. 風速16m/sec前後で振幅が50cmを越える1次モードの鉛直たわみ渦励振が生じた. 1次, 2次モードを対象として本橋のために新たに開発した制振装置 (TMD) 計16基を桁内に設置し, それにより振動を制御し, その効果を動態観測で確認した. TMD設置前の観測事例で, 1次鉛直たわみ振動の振幅がη=40.7cmとなったケースに対し, TMD設置後に類似の特性を有する風の条件下ではη=5.4cmとなり, 渦励振による振動が十分に抑制されたことが明らかとなった. 3次以上の高次振動については, 風洞試験に基づき, 桁上の鉛直板により空力的制御を行うこととした.
  • 中井 博, 北田 俊行, 祝 賢治
    1999 年1999 巻633 号 p. 135-154
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本論文では, 開口部を有する圧縮補剛板の終局強度特性を明らかにし, 効果的な補強方法について検討を加え, 簡便な耐荷力算定法を提案している. まず, 実鋼製橋脚20基の初期たわみを実測するとともに, 縮尺模型の残留応力を計測している. そして, この種の補剛板の終局強度に影響を及ぼす初期不整の特性を調べている. つぎに, 4種類の実験供試体による耐荷力実験, および, その実験供試体を対象とした解析モデルを用いた弾塑性有限変位解析を行い, 対象とする補剛板の終局強度特性について検討している. また, 多数の弾塑性有限変位解析を行うことによって, 開口部の補強方法, および開口部を有する補剛板の耐荷力の一算定法を提案している.
  • 長井 正嗣, 謝 旭, 山口 宏樹, 藤野 陽三
    1999 年1999 巻633 号 p. 155-167
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本論文はスパン1000mを超える長大斜張橋の静的, 動的安定解析を通し, 基本的な特性を明らかにするとともに安定性を確保できる最小の主桁断面形状設定に関する設計資料を提供している. 面内荷重を対象とした弾塑性有限変位解析, 桁の変位に依存して変化する風力を扱える有限変位解析, モード座標をベースとしたフラッター解析を用い, 試設計された桁幅, 桁高さの異なる4種類の断面を対象に安定性の検討を行っている. その結果, 横ねじれ座屈が生じる静的限界風速はフラッター風速に比べて低く, したがって風荷重作用下での安定性は静的問題に支配されること, また, 安定性が確保できる桁幅や桁高さのスパンに対する比はこれまでの設計で用いられてきた値に比べてさらに小さくできる可能性を明らかにしている.
  • 伊津野 和行, 武野 志之歩, 中井 博
    1999 年1999 巻633 号 p. 169-180
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    長大橋に中小橋梁が隣接するとき, その質量差や材質の相違により, 設計で考慮しなかった外力が中小橋に作用する可能性がある. 特に, 振動単位ごとに固有周期が著しく異なる場合, その連結部には大きな相対変位が生じ, 可動支承の移動制限装置の存在によって予期できない荷重の作用が想定される. 本研究では, 湾岸部の連続高架橋などでよく見られる, 軟弱地盤に支持された長大橋とそのアプローチ橋を振動単位としてモデル化し, 数値シミュレーションにより, その地震時相互作用について検討した. その結果, 大地震時に桁が大きく変位し, 可動支承が移動制限装置にあたった場合, 構造物全体に大きな荷重が作用することを確認した.
  • 藤井 堅, 三木 千壽, 藤井 崇文
    1999 年1999 巻633 号 p. 181-192
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    ステンレスクラッド鋼は, 防食を目的として橋梁に使用できる. 本文では, まず, ステンレスクラッド鋼の製造過程で発生する板厚方向の残留応力を解析的に求め, 残留応力の解析的推定が可能であることを示す. さらに, 多層複合材料からなる板の複合非線形有限要素解析プログラムを開発して, 圧縮を受けるステンレスクラッド鋼板の座屈耐荷力を求め, 初期不整が圧縮耐荷力に及ぼす影響を明らかにする. 解析結果から, 圧延ステンレスクラッド鋼の圧縮耐荷力は, 初期たわみの方向, すなわちその形状がステンレス側に凸か凹かによって, 降伏強度の10%近い差が現れる場合があること, また, クラッド比が0.2以下であればクラッド比が耐荷力におよぼす影響は小さいことなどの知見を得た.
  • 西海 健二, 沖本 眞之
    1999 年1999 巻633 号 p. 193-203
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    開口部を有する鋼板 (有孔鋼板) がコンクリート中に埋め込まれた場合, 開口部でコンクリートとのずれ止め機能が期待できる. 補強がされていないコンクリート中における有孔鋼板のずれ耐力研究では, 開口部コンクリートの割裂破壊が支配的であることが指摘されているため, コンクリート部に割裂を抑制する拘束力を作用させれば, ずれ耐力が大幅に向上することが予測される. そこで,外部拘束力作用下での押抜き試験を行い, 拘束力によるずれ耐力向上効果を定量化した. さらに, 実構造物では, 開口部を鉄筋などで補強することにより破壊時に受働的に拘束力を発揮させることができる. そこで, 鉄筋補強した有孔鋼板の押抜き試験により鉄筋補強によるずれ耐力向上効果を定量化した.
  • 阿部 和久, 深谷 克幸
    1999 年1999 巻633 号 p. 205-215
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    鋼製組立網に用いられる金網の弾塑性解析手法を構成した. 面内変形を対象に, 金網を力学的に等価な二次元連続体によりモデル化した. 構成式は, 金網を構成するユニットセルの頂点における列線作用力の変位微係数を含むかたちで与えられる. 有限要素解析での剛性方程式の作成において, 列線作用力を応力評価点毎に効率よく求めるため, ニューラルネットワークを導入し, その学習結果に基づき任意変形下での列線作用力の評価を行った. 金網の引張り試験との比較を通し, 本手法の妥当性を確認した.
  • 寺田 賢二郎, 菊池 昇
    1999 年1999 巻633 号 p. 217-229
    発行日: 1999/10/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    非均質弾塑性体のためのマルチスケール解析について, 一般化収束論を用いた均質化法の定式化を示し, 新規の弾塑性マルチスケール解析アルゴリズムを提示する. 一般化変分原理に基づく弾塑性問題の基礎式から, Two-scale 収束論を用いてミクロおよびマクロスケールにおける支配方程式を導出し, マルチスケールモデリングの数理構造を明示する. ミクロ, マクロスケールのそれぞれの応答が整合した計算アルゴリズムを確立し, 漸近展開法に基づく定式化を増分表示したつり合い方程式に適用する従来のアプローチとの相違点を強調する. 開発したアルゴリズムを適用した数値解析例を示すとともに, 問題点と実用化への今後の指針を与える.
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