肺NTM症患者89例中17例(19.1%)でアスペルギルス(Aspergillus)IgGが陽性(10 AU/mL以上)だった.IgG陽性17例のうち,β-Dグルカン陽性は5例,アスペルギルス培養検出は6例のみだった.Non-fumigatusが検出された5例のうちIgG陽性は1例のみだった.IgG陽性例は男性,有空洞例,COPD,陳旧性結核が有意に高頻度であり,CRP,血沈,CAT点数が有意に高値だった.肺NTM症経過中に炎症反応亢進や症状悪化があれば慢性アスペルギルス症合併を鑑別すべきである.
症例は83歳男性.術後再発したMET exon 14 skipping変異陽性肺腺癌に対し,カルボプラチン(carboplatin)+ペメトレキセド(pemetrexed),ナブパクリタキセル(nab-paclitaxel),ニボルマブ(nivolumab),テポチニブ(tepotinib),ビノレルビン(vinorelbine)を順次投与したが病勢進行した.増大した肝転移から再生検し小細胞癌を認め,FoundationOne CDxにてMET exon 14 skipping変異を検出した.腺癌から小細胞癌への形質転換と診断し,カルボプラチン+エトポシド(etoposide)に不応で,アムルビシン(amrubicin)に変更し肝転移と左胸膜播種の縮小を得た.
症例は70歳男性.右水気胸の精査加療で当科を紹介された.胸腔ドレナージ後に胸腔鏡下ブラ切除術を施行した.しかし高度癒着あり開胸にて右上葉および中葉部分切除を要した.病理検体では間質性肺炎,反応性中皮過形成の診断であったが中皮腫は否定できなかった.5ヶ月後のPET/CTから中皮腫が否定できないため病理所見を再検討し上皮様中皮腫の診断となった.手術は,年齢や低肺機能を考慮して根治的切除は困難と判断した.化学療法は間質性肺炎の増悪あり継続できず,免疫チェックポイント阻害薬は継続でき32ヶ月後に永眠された.
症例は77歳男性.易感染性となる原因や溺水・交通外傷歴はなく,20年前から咳嗽,喀痰を自覚していた.検診異常で受診し,CTで気管支拡張を伴う粒状影・粘液栓を認めた.喀痰培養でScedosporium apiospermumを分離し,気管支擦過で糸状菌を認めた.ただ無菌検体からの証明が得られず定着の可能性がある.ボリコナゾール(voriconazole)の内服を開始し症状や画像は改善したが,MICが耐性域で薬剤効果との関係は限定的と考えられる.免疫健常者でも原因不明の肺炎では積極的に真菌培養を行う必要があると考え報告する.
症例は72歳女性.慢性閉塞性肺疾患(COPD)で近医加療中に喀血し,心不全と貧血の合併もあり紹介入院となった.心エコーで高度の肺高血圧症が疑われ,CTでモザイクパターンとエアートラッピングを認めたが,肺高血圧の原因確定には至らず転院となった.転院先での造影CT,右心カテーテル,肺換気血流シンチグラフィで慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)と診断された.CTのモザイクパターンに加えて,COPD病期と不釣合な肺高血圧症を認める場合は,CTEPHを疑う所見となりうることが示唆された.
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら