COVID-19の診断にPCR検査は有用だが,症状改善後もPCR検査陽性は続くことがあり医療施設内での隔離解除の判断が難しくなることがある.今回,当院のCOVID-19入院症例226例(2022年1月1日〜2023年5月8日)の患者背景を抽出し,PCR検査陽性期間に関連する因子を検討した.高齢,糖尿病,血液悪性腫瘍,悪性リンパ腫,B細胞枯渇療法といった免疫抑制状態の症例ではPCR検査陽性が有意に延長していた.これらの症例では長期のウイルス排出が報告されており隔離解除には注意が必要である.
肺非結核性抗酸菌(NTM)症患者109例の初診時,COPD assessment test(CAT)を検討したところ,CAT高値例(10点以上)では低値例よりも炎症反応が高値で喀痰抗酸菌塗抹陽性率が高かった.治療導入した29例中18例で6ヶ月後のCATが改善(2点以上の低下)した.治療前CAT高値例では低値例よりも排菌陰性化率は低かったが,治療によるCAT改善率が高く,排菌陰性化しなくてもCATの改善がみられる症例が多かった.肺NTM症治療においてCATによる健康関連QOL評価は有用な治療効果指標となりうる.
症例は70歳代女性.咳嗽を主訴に当科を受診し,造影CTで低吸収域の浸潤影内に明瞭な血管影と5cm大の巨大な空洞を認めた.開胸手術で得られた病変は14×15×9cm大であった.空洞は気管支近傍にあり,線維性壁に覆われていた.粘液産生が確認され,浸潤性粘液性腺癌(IMA)を組織型とするpT4N0M0, pStage ⅢAの左下葉肺癌と診断した.IMAは肺炎に類似した所見を呈することが多いが,本例のように巨大な空洞形成を伴うことがあることを認識しておく必要がある.
症例は69歳,男性,胸部CTで左上葉結節影を認め,気管支鏡下肺生検で肺腺癌と診断された.胸腹部造影CTでは両側鎖骨上に造影効果を伴わないリンパ節腫大を,右鼠径,骨盤内に早期に強く造影されるリンパ節腫大を認めた.FDG-PET/CTでは右鼠径・骨盤リンパ節は鎖骨上リンパ節よりFDG集積が弱かった.肺癌以外の疾患合併を疑い右鼠径リンパ節生検を施行した.病理診断で特発性多中心性キャッスルマン病と診断された.悪性腫瘍に合併するリンパ節腫大を転移性病変と判断ができないときは積極的に生検を行うことが重要である.
症例は69歳,女性.20XX-17年に左下葉肺腺癌に対して左下葉切除術を施行した(pStage ⅠA).20XX年に見当識障害や歩行障害が出現し,頭部造影MRIから髄膜炎が疑われた.腰椎穿刺を施行し髄液細胞診から上皮性悪性腫瘍による髄膜癌腫症が疑われた.CEAも高値であり,手術検体と髄液からEGFR deletion 19を検出し,術後再発としての髄膜癌腫症と診断した.オシメルチニブ(osimertinib)投与後,神経症状とCEA高値は改善した.肺腺癌術後17年目に髄膜癌腫症で再発を認めた非常に稀な症例と考えられたため報告する.
46歳女性.労作時呼吸困難を契機に,間質性肺炎および混合性結合組織病(MCTD)と診断した.進行性間質性肺炎の制御目的にプレドニゾロン(prednisolone)およびシクロホスファミド(cyclophosphamide)静注療法(IVCY)を開始し,改善を認めたが,治療開始10日後に40℃の発熱,関節痛を呈した.血球減少,AST,LDH上昇からマクロファージ活性化症候群と判断した.ステロイドパルス療法,IVCYの追加により汎血球減少は改善し救命し得た.MCTDは比較的予後良好とされるが,病状悪化時には膠原病内科医との連携による治療が必要である.
46歳,男性.両下腿の紅斑および水疱様皮疹の治療中に肺病変・呼吸不全を呈した.ステロイド治療を開始しつつ,精査を行い好酸球性多発血管炎性肉芽腫症と診断した.ステロイド漸減中に非対称性浮腫,筋肉痛,筋腫大,神経障害が出現し,末梢血好酸球数の再上昇を認めた.ステロイド再増量で症状は軽快し,ステロイド減量のため,メポリズマブ(mepolizumab)を導入したところ,症状再燃なくステロイドを減量できた.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は呼吸器症状以外に多彩な症状を呈することに留意し,新規知見を集積していくことが重要である.
症例は46歳女性.潰瘍性大腸炎に対して20XX-1年9月よりメサラジン(mesalazine),寛解導入療法に20XX年10月よりベドリズマブ(vedolizumab)が開始された.20XX年12月より咳嗽と呼吸困難が出現し当科を受診した.血液検査で好酸球数増多,胸部CTで肺末梢辺縁を中心に気管支透亮像を伴う浸潤影を認めベドリズマブによる薬剤性好酸球性肺炎と診断し薬剤を中止,プレドニゾロン(prednisolone)で治療を開始し速やかに改善が得られた.今回ベドリズマブによる薬剤性好酸球性肺炎の1例を経験したため報告する.
症例は48歳男性.急性心筋梗塞で当院に入院となりエベロリムス溶出性冠動脈ステントが留置された.X+10日頃から両肺野の透過性低下を認め広域抗菌薬の投与,心不全治療の強化をされたが,呼吸状態が悪化しX+17日に人工呼吸管理を開始となった.メチルプレドニゾロンパルス療法後にプレドニゾロン維持投与,リコンビナントトロンボモジュリンの併用で両肺野の陰影および呼吸状態は一旦改善したが,再度増悪しX+33日に永眠した.エベロリムス溶出性冠動脈ステントによる薬剤性肺障害が疑われたため報告する.
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら