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持田 香織, 岡林 比呂子, 今村 光佑, 吉田 知栄子, 増永 愛子, 坂上 拓郎
2025 年 14 巻 3 号 p.
108-112
発行日: 2025/05/10
公開日: 2025/06/13
ジャーナル
認証あり
症例は17歳男性.両側気胸に対する手術を契機に血管型Ehlers-Danlos症候群(血管型EDS)と診断された.以後気胸を繰り返していたが,いずれも経過観察または胸腔ドレナージのみで軽快していた.しかし今回胸腔ドレナージ後も気瘻が持続したため,自己血による胸膜癒着術を2回施行し気瘻を停止できた.結合組織の脆弱性をきたす疾患特性から侵襲的処置を避ける必要があり,血管型EDSに伴う難治性気胸は治療選択肢が限られるが,侵襲性が低い自己血による胸膜癒着術は安全に行える有効な治療と考えられた.
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大庭 優士, 美園 俊祐, 森田 薫, 米 未紀子, 田中 謙太郎, 籾 博晃
2025 年 14 巻 3 号 p.
113-117
発行日: 2025/05/10
公開日: 2025/06/13
ジャーナル
認証あり
症例は72歳,男性.進展型小細胞肺癌に対する一次治療としてカルボプラチン(carboplatin)+エトポシド(etoposide)+デュルバルマブ(durvalumab)を投与したが,1コース終了後に構音障害,左上肢の違和感が出現した.精査の結果,デュルバルマブによる抗Hu抗体陽性自己免疫性脳炎と診断し,発症早期に免疫抑制治療を行い,症状は速やかに改善した.免疫関連有害事象としての自己免疫性脳炎の頻度は高くないが,適切な診断と治療により改善が期待されることから,迅速な対応が必要である.
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川﨑 樹里, 藤本 栄, 神宮 浩之, 三好 孝典
2025 年 14 巻 3 号 p.
118-121
発行日: 2025/05/10
公開日: 2025/06/13
ジャーナル
認証あり
67歳男性.食思不振を主訴に当院を受診,精査の結果進展型小細胞肺癌と診断された.下肢筋力低下による歩行障害が出現し,抗P/Q型VGCC抗体陽性,反復刺激試験の30Hz刺激における漸増現象から,Lambert-Eaton筋無力症候群と診断された.プラチナダブレットとatezolizumabの併用療法を開始し4コース投与後に完全奏効を得た.筋症状は横ばいであった.Atezolizumabによる維持療法を継続し,腫瘍の再発や筋症状の悪化なく経過している.
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小澤 亮太, 山本 学, 牛島 祐哉, 廣田 周子, 牧野 睦月, 伊藤 以知郎
2025 年 14 巻 3 号 p.
122-126
発行日: 2025/05/10
公開日: 2025/06/13
ジャーナル
認証あり
67歳男性.体重減少を主訴に前医を受診した.右鎖骨上窩リンパ節の経皮的針生検で淡明細胞形態を呈する低分化癌を認めた.病変は右鎖骨上窩から右肺門縦隔リンパ節に限局していた.さらなる精査と治療のため当院へ紹介となった.稀な細胞形態のT0肺癌と診断し,カルボプラチン(carboplatin)+パクリタキセル(paclitaxel)による同時併用化学放射線療法とデュルバルマブ(durvalumab)の地固め療法を施行した.腫瘍は完全奏効となった.
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古橋 一樹, 藤本 源, 平井 貴也, 小久江 友里恵, 都丸 敦史, 小林 哲
2025 年 14 巻 3 号 p.
127-130
発行日: 2025/05/10
公開日: 2025/06/13
ジャーナル
認証あり
症例は55歳,男性.両膝痛,下腿痛を契機に医療機関を受診した.身体所見でばち指を認め,四肢単純X線写真および骨シンチグラフィで長管骨の骨膜新生を認めた.精査の結果,肺性肥大性骨関節症を合併した肺腺癌stage Ⅳ Bの診断となった.1次治療としてカルボプラチン+ペメトレキセド+デュルバルマブ+トレメリムマブを投与し,腫瘍の縮小とともに関節炎等の症状は改善した.肺性肥大性骨関節症に対して抗PD-L1抗体および抗CTLA-4抗体を投与した報告はなく,稀な症例と考え報告する.
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我謝 正平, 赤嶺 盛和, 有馬 聖志朗, 那覇 唯, 内原 照仁, 山本 和子
2025 年 14 巻 3 号 p.
131-135
発行日: 2025/05/10
公開日: 2025/06/13
ジャーナル
認証あり
肺ノカルジア症は日和見感染症として知られる稀な感染症である.免疫低下状態の患者で発症することが多く,全身に播種性病変をきたすことで知られる.今回胸水培養からNocardia pseudobrasiliensisが検出され,播種性病変として脳膿瘍の合併を認めた症例を経験した.シプロフロキサシン(ciprofloxacin:CPFX)を中心とした抗菌薬治療を計12ヶ月間行い各病変の消失を確認した.本菌はスルファメトキサゾール・トリメトプリム(sulfamethoxazole-trimethoprim)に耐性を示すことも多く,菌種の正確な同定と抗菌薬感受性試験が重要と考えられる.
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泉 祐介, 乙原 雅也, 川本 数真, 松本 奈穂子, 谷脇 雅也, 山﨑 正弘
2025 年 14 巻 3 号 p.
136-140
発行日: 2025/05/10
公開日: 2025/06/13
ジャーナル
認証あり
症例は86歳男性.COPDと前立腺癌,猫の飼育歴があった.画像検査で左下葉に無症候性の浸潤影を認め,陰影が悪化傾向となり気管支鏡検査を施行した.気管支洗浄液の培養検査でPasteurella multocidaが検出され,抗菌薬治療を行った.症状はないものの同部位の陰影の悪化と抗菌薬治療を繰り返したが,猫の飼育をやめた後陰影は消退した.ペットの飼育歴と呼吸器系の基礎疾患や免疫能低下がある患者では,P. multocida肺感染症に留意が必要である.また改善後も慎重にフォローする必要がある.
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嶋田 有里, 伊東 友好, 吉村 聡一郎, 石山 福道, 服部 剛士, 稲田 祐也
2025 年 14 巻 3 号 p.
141-146
発行日: 2025/05/10
公開日: 2025/06/13
ジャーナル
認証あり
症例は49歳女性.入院72日前に左卵管癌に対してペグリポソーム化ドキソルビシン(pegylated liposomal doxorubicin:PLD)を初回投与したが,労作時呼吸困難,咳嗽を自覚したため精査目的に当院に入院となった.胸部CTで両肺野にびまん性のすりガラス陰影を認めた.PLDの中止とステロイドの開始により,呼吸状態,画像所見ともに改善し,同薬剤による薬剤性肺障害と診断した.
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福本 洋介, 神田 響, 今里 優希, 佐々木 圭
2025 年 14 巻 3 号 p.
147-151
発行日: 2025/05/10
公開日: 2025/06/13
ジャーナル
認証あり
症例は76歳男性.20XX年9月より進行性前立腺癌に対してアパルタミド(apalutamide),デガレリクス(degarelix)による治療を開始.20XX年10月下旬より咳嗽と労作時呼吸困難が出現し,11月2日に当科を受診.胸部CTで両側肺に多発する斑状のすりガラス陰影を認めた.両薬剤の休止とステロイドパルス療法にて陰影は速やかに改善した.経過でアパルタミドに対する薬剤リンパ球刺激試験(drug-induced lymphocyte stimulation test:DLST)が強陽性と判明し,同薬剤による薬剤性肺障害を強く疑った.DLST陽性となったアパルタミドによる薬剤性肺障害の報告はこれまでなく,有用な症例と考え報告する.
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石黒 卓, 野々上 明, 工藤 昌尚, 西村 ゆう, 清水 禎彦
2025 年 14 巻 3 号 p.
152-157
発行日: 2025/05/10
公開日: 2025/06/13
ジャーナル
認証あり
症例は目立った既往のない67歳女性.入院2週間前から息切れを自覚した.近医で心不全を疑われて当院を受診,血小板減少や高LDH血症,肺野のすりガラス陰影,肝脾腫から血管内大細胞型B細胞リンパ腫(intravascular large B-cell lymphoma:IVLBCL)か肺動脈腫瘍塞栓症を疑った.右心カテーテル検査で軽度の肺高血圧を認め,肺動脈吸引細胞診で異型B細胞を認めた.骨髄生検と皮膚生検によりIVLBCLと確定診断,化学療法にて改善を認めた.
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