岩手医科大学歯学雑誌
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9 巻, 1 号
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原著
  • 太田 耕造, 坂巻 公男
    1984 年 9 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1984/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    より良いX線写真を作り, 不良画像となる各種条件の除去を目的とする quality assurance の観点から, 今回は考えうる諸条件のうち現像液と定着液の疲労に主眼を置いて実験を行った。方法は, まず新鮮な現像液, 定着液を使用し適正な現像処理が得られるための現像温度一現像時間の関係を求めた。疲労現像液, 定着液を水により希釈する事により想定し, 夫々十希釈濃度液, 十濃度液を作製した。同一条件下で撮影した被写体のX線フィルムをこの希釈液で現像処理し, 正規濃度によるものと比較検討した。被写体はアルミニウム階段及び骨ファントームである。

    アルミニウム厚さ一黒化度曲線, ファントーム下顎大臼歯のX線豫を比較すると正規の濃度及び十濃度で現像処理した場合, その差は顕著でなかった。一方, 十濃度液で処理した像は著しくカブリが上昇し, 写真コソトラストの低下した像で診断に供せられない像であった。適正な画質を有する X 線写真の作製にあたり, 画像に関する quality assurance の確立が急務である。

  • 塩山 司, 三浦 幹也, 石橋 寛二, 石毛 清雄, 草深 英二, 杉岡 範明
    1984 年 9 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 1984/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    陶材焼付鋳造冠を支台歯に装着したまま一緒に抜去した試験例と臨床例について, 肉眼的観察を行った後, それらをエポキシ系樹脂リゴラックに包埋し, 8分割して,臨床的適合度について辺縁部セメント層の厚さ, 冠辺縁の位置, オーバーハング量を万能投影機にて計測し, それらについて比較検討を行い不適合となる原因とその対策について考察した。その結果, 試験例では辺縁部セメント層の厚さは平均 47.5μm, 冠辺縁の位置は -215~+7μm, オーバーハング量は -20~+141μm であった。臨床例では, 辺縁部セメント層の厚さは平均 154.5μm, 冠辺縁の位置は -453~+144μm, オー・ミーハング量は -129~+217μm であった。 以上の結果から試験例の適合は良好であるが, 臨床例は不良であった。今回の観察結果より, 陶材焼付鋳造冠のより良い適合を得るためには, 支台歯形成からセメント合着までの各段階における技術の占める範囲は広く, とくに今回は,支台歯歯頸側辺縁形態, ワックスパターン辺縁, 合着時の浮き上がりなどに十分な対策を講じた。

  • 守口 修, 袖井 文人, 野坂 久美子, 甘利 英一
    1984 年 9 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 1984/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    岩手医科大学歯学部附属病院小児歯科所蔵の永久歯列模型 1085 例のうち, 中心結節を有する 28 例を観察し, 以下の結果を得た。

    (1) 出現頻度は 2.58% であり, そのうち男子は 0.74%, 女子は 1.84% で, 女子に多かった。

    (2) 上顎より下顎に多く出現し, 歯種では,下顎第 2 小臼歯が 56.45% と最も多く, 次いで上顎第 2 小臼歯, 下顎第 1 小臼歯, 上顎第 1 小臼歯の順であった。

    (3) 左右同名歯に対称的に結節の出現が認められたものは, 71.43% であり, このことは患歯発見の一助になると思われた。

    (4) 結節の出現部位は, 頬側三角隆線が 53.23%, 中央溝が 33.26% を占めており, その他は舌側三角隆線, 近心舌側であった。

    (5) 結節の形態がシリンダー状のものは, 46.72% 認められ, 大半が頬側三角隆線または中央溝に位置していた。形態が三角形のものは 25.81% であり, 頬側三角隆線に位置するものが最も多かった。形態が露滴状のものは 4.84% で, 中央溝にのみ認められた。結節が破折していたものは 22.58% であり,その出現部位は頬側三角隆線または中央溝であったが, 中央溝部のものは, 歯髄障害を起こしている場合が多いことから, 早期予防処置が必要と思われた。

    (6) 中心結節の大きさは, 平均値で近遠心径 2.01mm, 頬舌径 2.36mm, 舌側の高さ 1.31mm, 頬側の高さ 0.63mm であった。

    (7) X 線所見で結節内に歯髄腔を認めたものは, 61.36% であった。

    (8) 中心結節保有歯の大きさは, 近遠心径および頬舌径とも大きな値を示し, カラペリー結節の出現, 咬頭の突出, 辺縁隆線や三角隆線の発育良好な所見が認められた。

  • 金子 良司, 武田 泰典, 鈴木 鍾美
    1984 年 9 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 1984/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    ラット両側下顎切歯を鈍的に完全破折し, その経時的形態変化を観察した。その結果,破折後3日目では, 歯髄ならびに歯周組織に限局した化膿性炎, 細菌の集塊, 壊死組織等がみられたが, 歯髄深部に炎症が波及したものはなかった。破折後4日目には,化膿性炎はほぼ消退し露髄面には幼若肉芽組織の形成がみられ, 7~10 日目には dentin bridge が形成されていた。介達的に破折した象牙質はその離開度にかかわらず, 離開部に肉芽組織が充満し, 経過とともにその歯髄側壁より幼若新生象牙質が新生添加されていた。

    なお, 破折した歯牙はその経過中対照群のものと同程度に発育伸長していた。また実験群の半数には根端付近の舌側部幼若象牙質層ならびに象牙芽細胞層の不規則な波状化, また一部には根端付近唇側のエナメル質形成異常がみられた。以上の結果より, ラット切歯の歯髄は臼歯で報告されているものにくらべ治癒能力がより強いものと考えられた。さらにそれぞれの所見について考察を加えた。

  • 本田 寿子, 田近 志保子, 高橋 義和, 浜田 育男, 金子 克
    1984 年 9 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 1984/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    E. corrodens は口腔常在微生物の1種で, 骨髄炎1), 心内膜炎2’3)など, 疾患からの分離報告があり, 最近では歯周疾患との関連性が話題になってきている。

    私たちは歯周疾患との関連性を検討することを目的として, 口腔内より E. corrodens の分離を試み, その生化学的性状検査と薬剤感受性試験を行った。

    歯周疾患の認められない学生 66 名の歯垢から 25 株 (37.9%), 唾液から1株 (1.5%), 歯周疾患患者 28 名の歯肉溝滲出液から 10 株 (35.7%) 計 36 株の E. corrodens を分離した。また3 種類の培地 (血液寒天培地, Chocolate 寒天培地, Todd-Hewitt 寒天培地) と 4 種類の培養法 (嫌気培養, 10% CO2, 培養ローソク培養, 好気培養) で E. corrodens の培養条件を検討したところ, 培地は KNO3 21ng/ml, hemin 10 μg/ml を添加した血液寒天培地が優れており, 培養条件は嫌気培養, 10% CO2 培養, ローソク培養いずれの方法でもよい成積を得たが, 好気培養法では発育が悪かった。

    E. corrodens 分離株を glucose 無添加 Heart infusion ブイヨンと glucose 3% 添加 Heart infusion ブイヨンで培養したところ, glucose 無添加 Heart infusion ブイヨンでは壁固着性がみられたが, 3% glucose 添加 Heart infusion ブイヨンでは壁固着性が抑制されることがわかった。また E. corrodens分離株 36 株についてペニシリソ系薬剤 6 剤, セフェム系薬剤 15 剤, Clindamycin, Erythromycin, Amikacin, Chloramphenicol, テトラサイクリン系薬剤 2 剤, Fosfomycin, Azthreonam の計 29 剤を用い最小発育阻止濃度を測定した。その結果, ペニシリン系薬剤にはすべて感受性を示し, セフェム系薬剤の中では Latamoxef, Ceftizoxime, Cefotaxime に高い感受性を Cephalexin, Cefroxadine, Cefadroxil には耐性を示した。また Amikacin, Clindamycin, Fosfomycin には耐性を示した。

  • 小松 賀一, 米沢 輝男, 太田 耕造, 杉江 恒人, 坂巻 公男
    1984 年 9 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 1984/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    本学歯科放射線科において, 唾液腺造影検査を実施した 85 症例について検討を行った。その症例の内訳は, 依頼科臨床診断の病態別にみると, 炎症 16 例, 唾石症 18 例, 腫瘍 35 例, その他 16 例であった。またその症例数を唾液腺別にみると, 耳下腺 26 例 (31%), 顎下腺 58 例 (68%), 舌下腺 1 例 (1%) であった。

    これら 85 症例の内, 病理組織学的診断, あるいは口腔外科における確定診断の得られた, 53 症例についての臨床的評価を検討した。これら 53 症例の内で明らかに造影検査が有効であったと評価されるものは 38 例であった。症例の確定診断には, 腫瘍性病変などの様に摘出後, 病理組織学的に検索を加えられた症例を除くと, 造影所見が確定診断に大きな役割をはたしていると考えられた。

    以上の結果をまとめると, 唾液腺造影検査は歯科口腔外科領域の診断に有効であった。特に唾石症においては, その位置の確認に有効で治療上欠くことのできない検査法である。疾患に特有の X 線造影像を示すも のも多く, 腫瘍性病変あるいは静止性骨空洞の鑑別では, 腺との関係把握に有効であり, さらに超音波診断, シンチグラフィー, C-T 検査を併用すれば, より精度の高い診断が可能と思われた。

総会記事
岩手医科大学歯学会第9回総会抄録
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