岩手医科大学歯学雑誌
Online ISSN : 2424-1822
Print ISSN : 0385-1311
ISSN-L : 0385-1311
7 巻, 1 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
総説
最近の歯科医学の動向
原著
  • 藤沢 容子, 武田 泰典, 佐藤 方信
    1982 年 7 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 1982/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    巨大細胞性封入体症で死亡した48歳, 男性の剖検例で全身諸臓器の小動脈壁に偽石灰沈着様病変が認められたので, その本態の解明を目的に, 特にこの病変の顕著に見られた臓器のひとつである唾液腺を中心に病理組織学的に検索し, 種々の疾患に際して出現する同様の病変と比較検討した。その結果, 本症例における病変はこれまで報告されている種々の疾患にみられる血管病変のそれらとは, 沈着部位および染色性が異なっていた。また, このような特異な偽石灰沈着様病変の形成は巨大細胞性封入体症が trigger として働いた可能性を推察した。

  • 一Richter法の改良一
    村井 繁夫, 斉藤 弘子, 米倉 秀夫, 畠山 赳夫, 伊藤 忠信
    1982 年 7 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 1982/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    著者らはマウスの唾液分泌量測定法に関して, 少量のウレタンと固定板を併用する新しい不動化法(M法)を考案し, 測定感度, 測定値の撒布度, マウスの死亡率などについて Richter法 (R法) や Parkes 法 (P法) と比較検討した。

    不動化はM法がウレタン0.5g/kgと固定板の併用, R法はウレタン1.8g/kgの単独投与, P法はジアゼパム50mg/kgの単独投与で行い, ピロカルピンはそれぞれ0.8mg/kg(s.c.), 2mg/kg(s. c.) および1mg/kg(i.v.) を投与した。測定感度は三方法ともほぼ同程度であったが, 測定値の撒布度はM法が最小で, R法とP法の約半分であった。 M法の不動化条件は催唾剤のLD50をむしろ高め, M法ではマウスの死亡例はみられなかった。一方, R法とP法は催唾剤の毒性を著しく増強し, その結果, 測定中にも死亡例が発現し24時間後の死亡率は50%を越した。

    以上の結果より, M法は従来のR法やP法と比較して実験精度の高さとマウスに対する為害性の低さの点で優れていると考えられる。

  • 高橋 博, 清野 和夫, 塩山 司, 菊田 隆三, 羽田野 明, 石橋 寛二
    1982 年 7 巻 1 号 p. 34-43
    発行日: 1982/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    支台歯と共に撤去された全部鋳造冠を支台装置とする臼歯部橋義歯と, 陶材焼付鋳造冠を支台装置とする前歯部橋義歯の2試料を入手する機会をえたので, これらについて, 肉眼的, 顕微鏡的観察および各部位におけるセメント層の厚さの測定を行い, 橋義歯の適合度に影響を及ぼす因子について考察した。

    その結果, 冠辺縁部のセメント層の厚さは, 平均値で示すと, 臼歯部橋義歯では, 4|:265μm, 5|:260μm, 7|:340μm, 前歯部橋義歯では, 1|:300μm, 2|:405μmであった。また, 冠辺縁部にはオーバーハングと冠辺縁の過不足も認められ, 臨床的にきわめて不良な適合状態であった。

    今回の観察結果から, 冠辺縁の不適合を生み出す因子の中で, 支台歯形成の不備, 支台歯辺縁部の印象採得の不備, ワックスパターン辺縁の歪みや過不足, ワックスパターン撤去時の変形, 鋳造体辺縁の仕上げ研磨の不備, 合着時の傾斜や浮き上がりなどが影響することが推察された。

  • 野坂 久美子, 佐々木 仁弘, 守口 修, 丸山 文孝, 山田 聖也, 袖井 文人, 甘利 英一
    1982 年 7 巻 1 号 p. 44-52
    発行日: 1982/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    著者らは, 乳歯の外傷固定に, ダイレクトボンディング法と®Imprelon (1mm厚さ) を用いて圧力成形法で作成したスプリントの併用方法を用いた。今回は, そのスプリントの製作方法ならびに整復から固定までの術式, また, それを用いた8症例を紹介した。この固定法は次のような利点を有している。1)製作時間が短い。2)成形後のスプリントの厚さが0.5~0.7mmで薄く, 異物感が少ない。3)表面が滑沢のため, 軟組織への損傷が少ない。4)弾力性と維持力に富み, 破折に強い。5)咬合圧で変形しない。6)除去が容易。7)透明であるため, 患歯の確認が容易。8)低年齢児にとくに, 有効である。また, 整復時に線結紮を行っておいた方が, その後のスプリントの製作, 装着が容易であった。なお, 固定期間中, スプリントの脱落は認められず, 固定期間は3週間が適切であった。

  • 一第1報, 初診時口腔内の実態と咬合管理一
    守口 修, 八木 實, 野坂 久美子, 亀谷 哲也, 奈良 卓
    1982 年 7 巻 1 号 p. 53-60
    発行日: 1982/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    唇顎口蓋裂は咬合系の先天異常で, これは患者の発育とともに増悪することが多い。したがって, その口腔管理は出生直後から成人期までの長期間を必要とする。とくに発達の各段階で最終目標としての永久歯咬合をどう捉えるかが重要となる。すなわち, 乳歯咬合期のう蝕予防, 混合歯咬合期での顎骨の成長誘導が大きな課題となり, これらは保護者と患者に対する口腔衛生指導を基礎として成り立つと考えられる。 そこで今回は, 岩手医科大学歯学部附属病院小児歯科外来を訪れた生後5カ月から7歳5カ月までの唇顎口蓋裂児68名 (男子37名, 女子31名) について口腔内の実態とその管理内容について検討した。

    乳歯のう蝕罹患状況では, 一般児に比べて罹患者率, def歯数, def歯率はいづれも低年齢から高い値を示し, とくに上顎の前歯部および臼歯部で高かった。また, 裂型別では唇顎口蓋裂が最も高く, う蝕は広範囲におよんでいた。

  • 田中 誠, 亀谷 哲也, 石川 富士郎, 高橋 敬, 一戸 孝七
    1982 年 7 巻 1 号 p. 61-79
    発行日: 1982/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    歯科医学における最近の著しい進歩によって, 臨床の場で取り扱う情報の質と量は多岐にわたり, 膨大なものとなってきている。

    そのため, これら大量の情報処理に対し, 電子計算機の導入が考えられ, 一部では多変量解析などが適用されている。しかし, 今日一般に行われている電子計算機の導入の方向は, 研究者が特定の研究のために研究課題ごとにプログラムを作成し, 単独に利用しているのが現状である。

    そこで我々は, 矯正臨床に関する定型的なすべての情報や, 関連する他の情報についても整理, 登録, 保管が可能であり, 多変量解析を含む統計解析が会話型処理によって, 簡単なキーの選択により進めることができる患者情報処理システムをORDASと名付けて, 現在開発中である。

    今回は, システムの概要と処理例の一部について報告する。

症例報告
  • Yasunori Takeda
    1982 年 7 巻 1 号 p. 80-83
    発行日: 1982/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    その頻度は稀ではあるが, リンパ節の被膜あるいは小柱内に nevus cell の集族巣が認められることがあるとの報告がある。このリンパ節における nevus cell の由来については未だ明らかではないが, 病理組織診断にあたって転移性悪性腫瘍との鑑別が重要となってくる。本稿で紹介した症例は51才男性の上顎癌(扁平上皮癌)の転移のみられたものである。転移のみられた頸部リンパ節の被膜中に小細胞の集族巣が認められ, これまでに報告されているnevus cell の集族巣に類似した所見を呈していた。しかし, 本症例では治療のために大量の放射線照射がなされており, 転移した腫瘍細胞の変性像との異同が問題となった。この様な所見の鑑別診断は更に検討を要する点である。

  • 飯田 就一, 坂倉 康則, 石関 清人, 立花 民子, 普和 良吉, 名和 橙黄雄
    1982 年 7 巻 1 号 p. 84-88
    発行日: 1982/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    岩手医科大学歯学部における1981年度解剖実習において, 左閉鎖動脈が外腸骨動脈本幹から直接分枝し, 右側では閉鎖動脈が下腹壁動脈と共同幹を形成して外腸骨動脈から分枝し, いずれも内腸骨動脈との連絡がみられない破格例に遭遇した。本例は慢性肺不全で死亡した57歳の日本人男性屍体の両側にみられたものである。閉鎖動脈の起始状態については, 古くから多くの報告があるが, 外腸骨動脈本幹より直接分枝する例はきわめて稀で, 本邦では20例目である。また, 本例と同様な型で左右両側に閉鎖動脈の起始異常をみる報告は塚本の1例あるのみである。本例の左閉鎖動脈および右閉鎖動脈の起始はそれぞれ塚本の図14および図15に相当するものと考えられる。

  • 横須賀 均, 都筑 文男, 藤村 朗, 伊藤 一三, 大沢 得二, 佐々木 利明, 野坂 洋一郎
    1982 年 7 巻 1 号 p. 89-92
    発行日: 1982/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    岩手医科大学歯学部における1978年度解剖学実習において, 左側僧帽筋の下部筋束が完全に欠如した破格例を見出した。本例は食道癌で死亡した60才の日本人男性屍体に認められた。

    左側僧帽筋は上部筋束および中部筋束は正常形態を示すが, 第4~第12胸椎棘突起より起始する下部筋束は完全に欠如している。このような僧帽筋の欠如は本例を含めて過去9例の報告がみられるのみである。

総会記事
岩手医科大学歯学会第7回総会抄録
feedback
Top