支台歯と共に撤去された全部鋳造冠を支台装置とする臼歯部橋義歯と, 陶材焼付鋳造冠を支台装置とする前歯部橋義歯の2試料を入手する機会をえたので, これらについて, 肉眼的, 顕微鏡的観察および各部位におけるセメント層の厚さの測定を行い, 橋義歯の適合度に影響を及ぼす因子について考察した。
その結果, 冠辺縁部のセメント層の厚さは, 平均値で示すと, 臼歯部橋義歯では, 4|:265μm, 5|:260μm, 7|:340μm, 前歯部橋義歯では, 1|:300μm, 2|:405μmであった。また, 冠辺縁部にはオーバーハングと冠辺縁の過不足も認められ, 臨床的にきわめて不良な適合状態であった。
今回の観察結果から, 冠辺縁の不適合を生み出す因子の中で, 支台歯形成の不備, 支台歯辺縁部の印象採得の不備, ワックスパターン辺縁の歪みや過不足, ワックスパターン撤去時の変形, 鋳造体辺縁の仕上げ研磨の不備, 合着時の傾斜や浮き上がりなどが影響することが推察された。
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