岩手医科大学歯学雑誌
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8 巻, 1 号
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総説
原著
  • 天日 常光, 兼子 研一, 桂 啓文
    1983 年 8 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 1983/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    歯科用陶材の強度を高めるために, 化学強化法を応用して曲げ強さと熱膨張率の機械的性質について検討した結果, 次の結論を得た。

    1). KNO3溶融塩の処理温度と曲げ強さの関係は, 500℃におけるKNO3溶融塩の時, 最大に達し, 曲げ強さは未処理試料より2倍以上の強さが得られた。しかし処理温度550℃以上では強さは低下した。

    2). 500℃のKNO3溶融塩における浸漬時間を変えた場合, 曲げ強さは5時間浸漬で最大に達し, 未処理試料より2倍以上の強さが得られた。

    3). KNO3溶融塩の処理温度と熱膨張率の関係は, 処理温度が高くなるにつれて熱膨張率は増加し, 550℃で最大に達した。しかし, 処理温度を600℃以上で行うと熱膨張率は低下した。

    4). 浸漬時間と熱膨張率については, 浸漬時間が長くなると熱膨張率は増加し, 5時間浸漬すると最大に達し, その後の浸漬時間が7.5時間以上になっても熱膨張率の増加は小さかった。

  • 濱田 育男, 金子 克
    1983 年 8 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 1983/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    Streptococcus sanguis I の産生する DNase は thymus DNAを分解し, mono-, dL-, tri-, tetra- そしてさらに大きな oligonucleotideを産生した。これらの nucleotide は Sephadex G-25 によるゲルクロマトグラフィーと 7M 尿素存在下での DEAE-Sephacel イオン交換クロマトグラフィーの組み合わせによって検出された。また, 0.8% アガロースゲル電気泳動分析において, native thymus DNA だけに作用して, 約2.2×105daltonまでに分解した。

    しかしながら, λ phage DNA, fd phage DNA, 熱変性 thymus DNA, 熱変性 λ DNA には全く作用しなかった。

    この結果は Streptococcus sanguis I の産生するDNase が thymus DNA に対して高い特異性を有していることを示唆する。

  • Ultrastructural and immunohistochemical studies on salivary gland duct and hyaline-like substance
    Yasunori Takeda
    1983 年 8 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 1983/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    Sjögren症候群における唾液腺の病理組織所見としては導管周囲を中心としたリンパ性細胞浸潤, 腺実質の退行性変化, 導管上皮細胞の破壊あるいは増生, いわゆる筋上皮島の形成などが挙げられる。これらの所見のうち, 導管周囲性のリンパ性細胞浸潤, 導管上皮細胞の増生と筋上皮島の形成が本症候群に特徴的な組織像とされている。また稀には硝子様物質の沈着をみることもあるが, このものの由来については未だ明らかではない。本研究では浸潤リンパ性細胞と導管上皮細胞との関連, ならびに硝子様物質を電顕的に観察するとともに, さらに硝子様物質についてはその中に補体が存在するか否かを蛍光抗体直接法にて検討した。 結果は次の如くである:

    リンパ性細胞は腺房部ならびに導管系の上皮細胞間に種々の程度に浸潤していたが, この所見は介在部導管において最も著明であった。したがって, Sjögren症候群において唾液腺に浸潤したリンパ性細胞は介在部導管上皮細胞を標的としているものと推察された。

    硝子様物質は導管周囲あるいは筋上皮島内外にみられ, 電顕的には不規則に配列した微細線維状を呈していた。この硝子様物質は上皮基底膜(lamina densa)と連続してみられる部分もあり, この様な所見はSLEにおける腎糸球体病変に類似していた。また, FITCラベル抗血清を用いた蛍光抗体直接法では硝子様物質中に Ig G, Ig M, C1q, C3 が認められた。したがって, 硝子様物質の一部は免疫複合物よりなる可能性が示唆された。

  • 増田 義勝, 村井 繁夫, 斉藤 弘子, 西郷 恵弥, 横矢 久, 伊藤 忠信
    1983 年 8 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 1983/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    ハロペリドール (HP) によってマウスに起るカタレプシーが, HP の反復投与で改変するか否かについて検討した。実験には ddY 系雄性マウス90匹を用いた。 HP は 0.1M 酒石酸に 1mg/ml の割合で溶解し, さらに生食水で調整, 0.1ml/10g を経口投与した。カタレプシーの観察は HP 投与3時間後にマウス左前肢を水平の金属棒にのせて行い, 棒から離れるまでの時間をカタレプシー持続時間 (カタ時間) とした。HP の投与量は 0.075, 0.3, 0.6, 1.2, 4.8mg/kg とした。HP の投与間隔はそれぞれの用量において, 21日間連日投与群, 中1日おきの計11回投与群, 中3日おきの計6回投与群とした。0.075 および 0.3mg/kg の反復投与では投与間隔にかかわりなくカタ時間に改変は起こらなかった。0.6mg/kg の場合, 連日群では改変は起こらなかったが, 間欠的反復投与群では投与回数に応じてカタ時間の延長が起った。1.2 および 4.8mg/kg の場合はいずれの投与群においてもカタ時間の改変が起った。すなわち, 連投群ではカタ時間の短縮が, 間欠的反復投与群ではカタ時間の延長が起った。

症例報告
  • 中里 滋樹, 水間 謙三, 大坂 博伸, 谷藤 全功, 山口 一成, 藤岡 幸雄, 岡田 一敏, 涌沢 玲児
    1983 年 8 巻 1 号 p. 49-60
    発行日: 1983/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    心疾患を合併する高令者4名の歯科治療にのべ8回の Diazepam 静脈内鎮静法を施行し, 若干の知見を得たので報告する。症例Ⅰ: 87才男性, 主訴は●歯牙破折。昭和49年より高血圧症, 冠不全, 狭心症のため内科で加療中であった。血圧は術前に190/90mmHgと高値であったが, Diazepam 2.5mg 投与で良好な鎮静状態となり, 局麻下に投歯したが術中心電図に異常波形はみなかった。症例II: 84才男性, 主訴は多数歯残根による咀嚼障害である。昭和45年より高血圧症, 冠動脈硬化症, 糖尿病を指摘され加療中であった。術前過度の緊張から血圧230/90mmHgと高かったが, Diagepam 2.5mgと局麻剤の併用により抜歯を施行しえた。症例III: 64才男性, 主訴●C4による咀嚼障害。昭和49年より狭心症のため加療中であった。 Diazepam 7.5mg 投与で舌根沈下が起き, Jaw Lift による気道確保を要した。局麻薬使用下で抜歯を行ったが, 狭心症発作等の合併症はみられなかった。症例IV: 69才男性, 主訴残根による咀嚼障害。昭和55年より心房細動, 冠不全のため加療中であった。Diazepam 投与中, 心室性期外収縮が一時みられたが, Diazepam投与後良好な鎮静状態となり, 局麻薬を併用し抜歯を施行した。

  • 太田 耕造, 坂巻 公男, 前田 光義, 今沢 優, 後藤 美智恵, 小松 賀一, 新里 真理, 米沢 輝男
    1983 年 8 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 1983/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    X線撮影の増加に伴なう患者の被曝の増加を軽減するため, 我々は超高感度口内法X線フィルム (EKTASPEED)の使用を検討した。方法は, 従来のフィルム(ULTRASPEED)とEKTASPEEDについて, 特性曲線による性状の比較, および両フィルムによる骨ファントームX線写真像についての歯科放射線科医員による画質の差の有無, 差の程度についての盲検法による比較観察である。

    EKTASPEEDの特性曲線はULTRASPEEDのそれを平行移動させた様な相似型を呈し, r値, 直線部分ともほぼ同等であった。EKTASPEEDの感度はULTRASPEEDの約2倍であった。骨ファントーン像についての比較観察では, EKTASPEEDはやや粒状が荒いとする意見もみられたが, 概ね診断上障害とならないと評価された。このことから本学歯科放射線科においても被曝軽減の見地から超高感度口内法X線フィルムへの切替えを考えている。タイマー機能を始めとする撮影条件の適正化が図られ次第, 切替えを実施したい。

  • 一受傷後10年間のX線写真による観察一
    安藤 良彦, 遠藤 正道, 久保田 稔, 中里 迪彦
    1983 年 8 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 1983/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    外傷により上顎左側中切歯歯根中央1/3に水平破折を生じた1症例を10年間X線写真により観察した。 同歯牙は受傷後1ヶ月にて冷水痛を生じ抜髄, 根充がなされたが10年を経過した現在においても臨床的には充分機能している。 X線写真上からは, 破折片間の離間が受傷後2年まで進行したが, その後変化は認められず, 10年後の現在, 根全周に歯根膜硬線が明瞭に認められ異常な所見は認められない。

  • 根本 秀樹, 谷口 雄二, 岩本 一夫, 菊月 圭吾, 田中 久敏, 佐藤 良三, 嶋中 豊彦
    1983 年 8 巻 1 号 p. 72-81
    発行日: 1983/03/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    近年, 固定性局部義歯の支台歯に骨内ブレードインプラントを用いることにより, 良好な成績を得たという臨床報告がなされている。

    しかし, インプラント頸部と, これに接する周囲組織の生体反応についての研究報告はいまだに混沌としている。

    今回, 我々は上顎右側犬歯部の骨内ブレードインプラントを支台歯とするインプラント義歯装着後, 疹痛と異和感に悩まされて当科を訪れた患者を経験した。

    診査の結果, インプラント義歯は予後不良と診断された。また, X線的にはインプラント義歯基底面下の歯槽骨に吸収像を認めた。

    インプラントと周囲組織を一塊として摘出した後, インプラント周囲組織の変化について, 病理組織学的ならびに補綴学的検索を行った。 検索の結果, インプラント周囲組織に炎症反応が進行しているのが明らかとなった。

    この症例を見た限りでは, 適切な設計による可撤性局部床義歯よりも, インプラント義歯を用いた治療の方がよりよい結果を得られると結論づけるにはまだまだ疑問が多いように思われた。

総会記事
岩手医科大学歯学会第8回総会抄録
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