Sjögren症候群における唾液腺の病理組織所見としては導管周囲を中心としたリンパ性細胞浸潤, 腺実質の退行性変化, 導管上皮細胞の破壊あるいは増生, いわゆる筋上皮島の形成などが挙げられる。これらの所見のうち, 導管周囲性のリンパ性細胞浸潤, 導管上皮細胞の増生と筋上皮島の形成が本症候群に特徴的な組織像とされている。また稀には硝子様物質の沈着をみることもあるが, このものの由来については未だ明らかではない。本研究では浸潤リンパ性細胞と導管上皮細胞との関連, ならびに硝子様物質を電顕的に観察するとともに, さらに硝子様物質についてはその中に補体が存在するか否かを蛍光抗体直接法にて検討した。 結果は次の如くである:
リンパ性細胞は腺房部ならびに導管系の上皮細胞間に種々の程度に浸潤していたが, この所見は介在部導管において最も著明であった。したがって, Sjögren症候群において唾液腺に浸潤したリンパ性細胞は介在部導管上皮細胞を標的としているものと推察された。
硝子様物質は導管周囲あるいは筋上皮島内外にみられ, 電顕的には不規則に配列した微細線維状を呈していた。この硝子様物質は上皮基底膜(lamina densa)と連続してみられる部分もあり, この様な所見はSLEにおける腎糸球体病変に類似していた。また, FITCラベル抗血清を用いた蛍光抗体直接法では硝子様物質中に Ig G, Ig M, C1q, C3 が認められた。したがって, 硝子様物質の一部は免疫複合物よりなる可能性が示唆された。
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