園芸学研究
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2 巻, 3 号
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総説
原著論文
育種・遺伝資源
  • 香取 正人, 野村 和成, 渡辺 慶一, 米田 和夫
    2003 年 2 巻 3 号 p. 153-156
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    日本,中国で古くから栽培されているハナハス品種,アメリカキバナハス,ならびにアジアハスとアメリカキバナハスの種間雑種に基づく品種を供試し,RAPDによるDNA多型に基づく系統関係について検討した.10-merのプライマーを単独または無作為に2種類組み合わせた合計54組み合わせのプライマーを用いてPCRを行った.このうち,増幅バンドが確認され,かつ多型バンドが認められたのは43組み合わせであった.PCRごとの多型バンド数は1~8本で,平均は4.7本であった.多型を示したバンドの合計は204本であった.RAPD分析により,供試したハナハス品種は,アジアハス群,キバナハスとその交雑種群,ならびに日本の古い地層から出土した種子由来の品種群の3群に区分されることが示された.わが国に古くから栽培されている品種のうち,西日本で成立したと考えられる原始蓮,玉繍蓮,藤壺蓮および一天四海は,東日本で成立したと考えられる大賀蓮,行田蓮および皇居和蓮を含む品種群と遺伝的に異なることが明らかにされた.前者の葉表面は粗,後者は滑であり,両群は葉表面の粗滑によって区別された.
  • 田尾 龍太郎, 山田 あゆみ, 江角 智也, 本杉 日野, 杉浦 明
    2003 年 2 巻 3 号 p. 157-160
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    8月中旬に採取した六倍体カキ(Diospyros kaki)‘藤原御所’の未熟果実より得られた種子中から胚を切り出し救助培養を行った.植え付けた103個の胚のうち102個がゼアチン5μMを添加したMS寒天培地で発芽した.得られた102個体の植物体の倍数性をフローサイトメトリーによって調査したところ,67個体が六倍体であり,残りの35個体が六倍体よりは大きな倍数性を示すことが明らかになった.これらの多くは九倍体あるいは12倍体であり,中には異数体も存在するものと推定された.得られたいくつかの植物体について,根端分裂細胞の染色体観察を行ったところ,フローサイトメトリーで倍数性変異がみられると推定された個体の染色体数は六倍体の90本より多いことが確認された.無核完全甘ガキ品種を育成するための育種母本としての‘藤原御所’の利用可能性について議論した.
繁殖・育苗
  • 入船 浩平, 田中 昭男
    2003 年 2 巻 3 号 p. 161-164
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    シンテッポウユリの液体タンク培養を用いた子苗生産システム確立のため,その培養条件を多鱗茎誘導条件およびその後の肥大化条件についてそれぞれ検討した.5 mg・liter−1カイネチン,3%ショ糖を含むMS培地で約1か月間培養することで1鱗片当たり5個以上の小鱗茎が誘導できた.さらに,この鱗片を3%ショ糖を含むMS修正培地を入れたタンク容器で約2か月間培養することで鱗片上の小鱗茎が鉢あげ可能な子苗に肥大することが確認された.本システムで1タンク(2 liter)当たり年間4,500個の子苗生産の可能性が示された.
  • 水田 洋一, 川西 孝秀, 矢澤 進
    2003 年 2 巻 3 号 p. 165-170
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    培地を無くし,遮根できる布(底面遮根材)を用いて底面給液することにより,根域を薄層化することで,セル成型育苗システムを軽量化した“セルシート”育苗法を開発した.底面遮根材および根域を保護する資材(根域保護材)が,苗の接着性,生存率,地上部生体重に及ぼす影響をレタス,ハクサイ,トマトで調査した.底面保護材にテトロン200 lpiまたはテトロン250 lpiを用いると,シートを垂直にぶら下げた程度では苗は全く落下せず,苗を剥がしても根が傷がつかず,適当な苗の接着性があった.底面保護材にテトロン200 lpi,根域保護材に80 ℃で乾燥したピートモス200~400 ml/シートの組み合わせで,対照のセルトレイ区よりも地上部生体重が大きくなった.しかし,レタスではセルシートを根域保護材で被覆した場合,生存率が低下した.
土壌管理・施肥・灌水
  • 吉田 裕一, 宮田 英幸, 後藤 丹十郎
    2003 年 2 巻 3 号 p. 171-174
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    培養液に使用可能な原水中塩濃度の限界を明らかにするため,イチゴ‘女峰’をピートバッグ(28 × 80 cm,培地量18 liter,8株植え)で栽培し,水道水(EC15 mS/m; Na, 0.35; Cl, 0.29 mM)で作成した培養液へのNaCl添加がイチゴの生育,収量に及ぼす影響について検討した.NaCl (0, 4, 8, 12 mM)以外の基本培養液濃度(NO3-N, 8; NH4-N, 0.85; P, 0.85; K, 3.8; Ca, 2.05; Mg, 0.93 mM)は,季節に応じて50~100%の間で変化させた.葉柄中のNaとClの濃度は,NaCl濃度が高くなるほど高くなった.果実の糖濃度と滴定酸度は,対照区が最も高かったが,NaCl濃度による差は認められなかった.12 mM区では各花房1番花のガクにチップバーンが多発し,平均果実重と総収量が他の3処理区より低くなった.8 mM区でも,チップバーン発生が増加する傾向にあったが,総収量は対照区とほぼ同等であったことから,NaClやその他のイオンを含む場合であっても,原水のECが8 mM区に相当する100mS/m程度までであれば,ピートバッグでイチゴ栽培に利用できる可能性が高いと考えられる.
  • 中野 明正, 上原 洋一
    2003 年 2 巻 3 号 p. 175-178
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    化学肥料を基肥として用いる無機基肥区,液肥用化学肥料を用いる通常のかん水同時施肥区(無機養液区)および有機性液肥を用いる有機養液区の3処理を設定してメロンを栽培し,生育と果実品質に及ぼす影響を検討した.有機養液区にはCSL(実験1)とメタン消化液(実験2)を用いた.液肥用メタン消化液には酢酸を添加し,リン酸やカルシウムなど肥料成分を可溶化した.実験1では3処理区中CSL区の収量および可溶性固形物含有率が最も低かった.CSLのみを液肥として用いる有機養液土耕はメロンの栽培法として問題があると考えられた.実験2では,通常の栽培とほぼ同等の収量および可溶性固形物含有率の果実を得ることが示された.これは,メタン消化液の窒素成分の70%が無機態窒素であるため,初期の肥効が確保され,初期の生育が良好であったためと考えられた.
栽培管理・作型
  • 文室 政彦
    2003 年 2 巻 3 号 p. 179-182
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    被覆条件下のベッド栽培における‘刀根早生’と‘新秋’の安定生産を目的に,結実に及ぼす摘蕾と人工受粉の影響を検討した.
    ‘刀根早生’の結実には摘蕾処理の効果が大きく,人工受粉でも結実促進効果が認められた.
    ‘新秋’の結実には受粉が必要であり,花粉の希釈倍率が高いほど結実率と種子数が低下した.‘禅寺丸’花粉は10倍希釈でも比較的結実率が高かったが,‘西村早生’花粉と‘サエフジ’花粉ではやや低い傾向がみられた.花粉収量は‘禅寺丸’が最も多かった.摘蕾と人工受粉との併用により,結実率が向上した.
  • 文室 政彦
    2003 年 2 巻 3 号 p. 183-186
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    被覆条件下のベッド栽培における‘刀根早生’と‘新秋’の最適な着果基準を明らかにするために,収量と果実品質に及ぼす葉果比の影響を検討した.
    いずれの品種とも葉果比が高いほど収量が低下し,平均果重が増加する傾向がみられた.果実品質では‘刀根早生’は葉果比の影響を受けなかったが,‘新秋’では葉果比が高いほど可溶性固形物含量が増加した.
    収量と平均果重および果実品質からみて,最適葉果比は‘刀根早生’では15,‘新秋’では20であると考えられた.また,‘刀根早生’の最適総結果母枝長は1樹当たり6 m程度であると考えられた.
  • 大石 一史, 深田 俊典, 奥村 義秀, 森岡 公一
    2003 年 2 巻 3 号 p. 187-191
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    ポットマムの効率的な小鉢生産を目的として,花芽が分化した枝を挿し穂に用いる「花芽挿し」栽培について検討した.
    「花芽挿し」の適期は,親株に対する短日処理を開始して2週間程度経過し,頂花の花芽が小花形成期に達した時期であった.実験に用いたスプレータイプのキクおよび一輪ギクともに,「花芽挿し」栽培によって栽培期間が大幅に短縮され,開花時にはコンパクトな草姿の植物が得られた.スプレータイプのキクの場合,「花芽挿し」栽培により着花数がやや減少したが,その中では多花性のイソギク交配種は着花数減少の程度が少なく,「花芽挿し」栽培により適すると考えられた.
  • 杉浦 広幸, 藤田 政良
    2003 年 2 巻 3 号 p. 193-198
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    夏秋ギク系大輪ギクの80 cm以上の切り花を9月に露地圃場で採花するため,エセフォン散布と挿し穂冷蔵を組み合わせ,その伸長生長効果を電照と比較し,平野部と準高冷地で成育を検討した.供試した品種における切り花長伸長の効果はエセフォン散布,電照および挿し穂冷蔵の組み合わせにより付加的に増加した.平野部における‘サマーイエロー’の開花日は,挿し穂冷蔵30日とエセフォン散布4回区が9月19日,切り花長は90.9 cmであった.挿し穂冷蔵45日とエセフォン散布による開花遅延と切り花長の伸長効果は,準高冷地が平野部と比べて高かった.準高冷地の‘サマーイエロー’の挿し穂冷蔵45日とエセフォン散布4回区で,開花日が9月28日,切り花長が80.1 cmであった.
    以上より,夏秋ギクの80 cmを越える切り花をエセフォン散布と挿し穂冷蔵により,9月下旬に露地で採花できた.
  • 稲葉 善太郎, 堀内 正美
    2003 年 2 巻 3 号 p. 199-203
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    キンギョソウ3品種‘メリーランドピンク’,‘ライトピンクバタフライII’および‘ヴェルン’を冬期の夜温(6℃,11℃),日長(自然日長,16時間日長)の組み合わせで摘心栽培および無摘心栽培を行った.摘心栽培においては夜温が高いと開花が早くなったが,長日による開花促進は認められなかった.採花本数は‘ライトピンクバタフライII’では夜温11℃と長日処理の組み合わせで最大となったが,‘メリーランドピンク’と‘ヴェルン’では処理による差はみられなかった.切り花品質および切り花長には長日処理の影響はみられなかった.無摘心栽培においては夜温が高いと定植~発らいおよび発らい~開花の両期間を短縮したが,長日処理は発らいまでの期間のみを短縮した.長日処理により供試品種の節数が減少したが,‘ライトピンクバタフライII’では夜温が高いことでも節数が減少した.
発育・制御
  • 李 進才, 趙 習姮, 松井 鋳一郎, 前澤 重禮
    2003 年 2 巻 3 号 p. 205-208
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    Sophrolaeliocattleya Estella Jewel (Cattleya)とCymbidium Sananami (Cymbidium) を10月10日から室外で2か月間栽培した株を低温順化株とし,13~28℃のハウスで管理した株を未順化株とした.低温順化株と未順化株に対して低温処理(5℃,暗黒条件,24時間)を行った.
    低温処理中および処理後の昼間では,両植物種とも低温順化株の葉の過酸化水素含量は未順化株より低かった.Cattleyaのスーパーオキシドジスムターゼ (SOD) 活性は低温順化株において低温処理中,未順化株よりやや高く推移した.アスコルビン酸ペルキシダーゼ (APX) 活性は低温処理中およびその後とも未順化株より高く推移し,カタラーゼ (CAT) 活性は低温順化株において低温処理中は漸次上昇したが,未順化株では大きく変動した.CymbidiumのSODとAPX活性は低温処理中,低温順化株で高い値を示し,CAT活性は低温処理中,低温順化株では未順化株のような一時的低下がみられず,低温処理後も未順化株より低い値を示した.これらの結果から,秋期の低温順化は両植物種の低温耐性を抗酸化的に増強することが示唆された.
  • 石川 一憲, 馬場 正, 谷澤 貞幸, 高橋 久光, 池田 富喜夫
    2003 年 2 巻 3 号 p. 209-213
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    4倍性ブドウ‘藤稔’において,開花前ストレプトマイシン (SM) 200 ppmで誘発した無核ブドウの肥大促進を図るために,満開時および満開11日後のジベレリンGA3 (GA) 単独か,GAと1‐(2‐クロロ‐4‐ピリジル) -3-フェニル尿素 (CPPU) を混用して処理した場合,また,果房の着粒数を変えた場合,果粒肥大や品質に及ぼす影響について検討した.
    1.満開後11日目の,GA25 ppmとCPPU (5, 7.5, 10 ppm) との混合処理では,高い濃度ほど大果房を生産したが,平均1粒重は20 g以下であった.
    2.1果房当たり15~20粒程度に制限した摘果処理効果を比較すると,CPPU処理ほど果粒肥大促進効果はなかった.しかし,大果粒でコンパクトな果房生産には,果革色など品質面から23粒程度に制限する必要があると考えられた.
    3.1果粒重20 g以上の大果粒で450 g程度のコンパクトな果房は,満開時にGA 2.5 ppmで処理され,さらに満開後11日目にGA50または100 ppmとCPPU 10 ppmを混合処理することにより達成された.なお,これらの処理は,果粒の着色は果実品質に著しい影響を及ぼすことはなかった.
作物保護
  • Prommart Koohakan, 池田 英男, 草刈 眞一, 曽田 孝雄, 真野 和人, 増田 竜司
    2003 年 2 巻 3 号 p. 215-219
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    二酸化チタン光触媒を利用した培養液殺菌装置を開発し,その効果を検討した.フザリウム菌では100 literの,ピシウム菌では30 literの水道水に,それぞれ別に培養した分生胞子あるいは遊走子を懸濁し,5~20 liter・min−1の流速で殺菌装置を通過させて殺菌効果を検討したところ,前者ではいずれの流速でも分生胞子の発芽率は速やかに低下し,処理開始10分後には50%の,また60分後には約90%の発芽阻害率となった.しかし,後者ではその程度は流速によって異なり,遊走子の90%の発芽抑制が認められたのは,流速5,10 liter· min1でそれぞれ10分,60分後であった.
    ピシウム菌を接種した培養液で育てると,トマト苗は処理2日後にはほぼ90%が,3日後には全個体が発病した.しかし,培養液を殺菌装置を通過させると,処理3日後では発病率は25%以下であり,全個体が発病するのは処理5~6日後と遅れ,殺菌装置による発病遅延効果が認められた.
    培養液を殺菌装置で処理した場合,トマト苗に鉄欠乏様の黄化が発生し,二酸化チタン膜が褐色となった.培養液中の重金属濃度を測定したところ,鉄と亜鉛の急速な濃度低下が認められたことから,二酸化チタン光触媒を培養液殺菌に利用する場合には,これらの欠乏症の対策が必要と考えた.
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