園芸学研究
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11 巻, 2 号
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原著論文
育種・遺伝資源
  • 森下 昌三, 本城 正憲, 濱野 恵, 山崎 浩道, 矢野 孝喜
    2012 年 11 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    四季成り性品種の連続開花性の簡易評価法を明らかにするために,連続開花性の強さとランナー子株の第1花房の着生節位との関係を調査した.第1花房の着生節位は採苗日および品種間で異なった.6/24区および7/16区では,5/14区に比べて,第1花房の着生節位が上昇した.第1花房の着生節位が高い品種で1株当たり総花房数が少ない傾向が認められた.6/24区および7/16区の第1花房の平均着生節位に基づいて供試品種を分類した結果,第1花房の着生節位と連続開花性の強さはよく一致し,着生節位が低い品種は連続開花性が強く,高い品種は弱いことが明らかになった.以上の結果から,四季成り性品種の連続開花性の強さを簡易評価する指標として,ランナー子株における第1花房の着生節位は妥当であり,評価のためのランナー子株の採苗日は,6月下旬~7月中旬が適していると結論された.
  • 庄 得鳳, 李 蓮花, 立松 翼, 長岡 史祥, 中野 浩平, 景山 幸二, 福井 博一
    2012 年 11 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    ノイバラ‘松島3号’(Rosa multiflora ‘Matsushima No. 3’)はバラ根腐病菌(Pythium helicoides)に対して抵抗性を示し,根組織への侵入過程で菌糸伸長が抑制されることが明らかとなっている.組織内への菌糸侵入阻害にはフェノール化合物が関与しており,病原菌の菌糸侵入によってフェノール化合物の加水分解が誘導され,菌糸伸長抑制物質が遊離されるといわれている.そこで本研究では,抵抗性品種‘松島3号’と罹病性のミニチュアローズ品種‘中島91’(R. ‘Nakashima 91’)の根からフェノール化合物を抽出し,抽出物の菌糸伸長抑制効果を検討した.‘松島3号’の根にはP. helicoidesの菌糸伸長を強く抑制する物質が含まれており,この物質は根の中では結合型フェノール化合物(配糖体)として存在し,加水分解されて遊離型となった場合に高い菌糸伸長抑制活性を示した.両品種の抵抗性と罹病性の差は,根に含まれる菌糸伸長抑制物質の量的差異が関係していると考えられた.結合型フェノール抽出物の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析結果から,‘松島3号’で10分前後に溶出する物質のピークが‘中島91’のそれの約3倍を示した.このピークの物質を分取し,その菌糸伸長抑制効果を検討した結果,このピークの物質は有意な菌糸抑制効果を示し,これがノイバラのバラ根腐病抵抗性の発現に関係すると考えられた.
  • 黒柳 悟, 大石 一史, 伊藤 夢子, 大矢 俊夫
    2012 年 11 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    矮性のトルコギキョウをin vitroで開花させることを目的とし,培地組成,光合成有効光量子束密度(PPFD),培地中のショ糖濃度,通気開始時期がトルコギキョウの成長・開花に及ぼす影響について調査した.培地組成の調査では,修正ハイポネックス(MH)培地を用いた際に,開花率が最も高く,草丈が最も低くなった.PPFDは80 μmol・m2・s1以上で,ショ糖濃度は40および60 g・L1で草丈が約8 cmで開花した.通気の調査では,播種~4週間後に通気を開始した際に開花率が最も高く,草丈が最も低くなった.従って,以下の条件でin vitroにおいて草丈8 cm以下でトルコギキョウを開花させることができる.播種~開花までのPPFDを80 μmol・m2・s1とし,播種4週間後に通気を開始する.播種~4週間後の移植までの培地をショ糖濃度30 g・L1のMS培地とし,次の播種~8週間後の2回目の移植までの培地をショ糖濃度30 g・L1のMS培地とする.最後の2回目の移植~開花までの培地をショ糖濃度40 g・L1のMH培地とする.
  • 坂田 好輝, 杉山 充啓, 吉岡 洋輔, 小原 隆由, 吹野 伸子, 森下 昌三, 下村 晃一郎, 小島 昭夫, 野口 裕司
    2012 年 11 巻 2 号 p. 165-171
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    果実の光沢に優れ,全身に毛がない新しいタイプのキュウリ,‘きゅうり中間母本農6号’を育成した.これは,North Carolina州立大学から導入した無毛性のNCG 90に,わが国の節成型実用品種‘翠星節成’を4回連続戻し交雑し,光沢性と果実形質をもとに選抜・固定した系統である.‘きゅうり中間母本農6号’はブルームレス性のため,果実の光沢は優れる.果実表面にイボ・トゲがなくスムーズであり,また,苦みもなく,食味は良好である.主枝および側枝に着果する.わが国の一般的なキュウリ品種に比べ,果実はやや太めである.果皮は緑色で斑紋はなく,成熟期には黄緑色になる.また,茎葉には毛がなく,無毛性である.ブルームレス性で果実光沢に優れる特性は,無毛性の多面発現と考えられ,単一の劣性遺伝子により制御されていると推定される.本中間母本は,果実光沢に優れるブルームレス性キュウリ品種育成のための育種素材である.さらに,果実表面にトゲやイボがないことから,洗いやすく衛生的なキュウリ品種の育種素材としての可能性を有する.
  • 内田 飛香, 安部 秋晴, 星野 洋一郎, 國武 久登
    2012 年 11 巻 2 号 p. 173-179
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    カンキツ類における雄性側自家和合・不和合に関するin vitro培養モデル系を確立するために,ヒュウガナツ成熟花粉を用いて培養環境条件や液体培地組成について検討を行った.最適な培養温度について調査したところ,25℃で最も高い正常発芽花粉率となった.また,最適pHは7.0であり,最も高い正常発芽花粉率と低い花粉管破裂率が観察された.基本培地(Hirano・Hoshino, 2009)を修正して液体培地組成について検討したところ,最適培地組成は,0.04%(w/v)塩化カルシウム,0.01%(w/v)ホウ酸,0.0007%(w/v)リン酸二水素カリウム,0.02%(w/v)酵母エキス,および10%(w/v)ショ糖となった.ヒュウガナツの液体花粉培養には,酵母エキスや塩化カルシウムの添加が有効であり,浸透圧調節やエネルギー源としてのショ糖の添加も重要であることが明らかとなった.これらの最適培養条件と培地組成において,ヒュウガナツ成熟花粉を1 × 105個・mL−1の密度で播種し,25℃,暗黒条件下で培養を行ったところ,培養4時間後に花粉の発芽が確認され,花粉管は1時間当たり約20 μmずつ伸長していた.培養6時間後,最も高い正常発芽花粉率73.6%が確認され,さらに培養8時間後には花粉管は200 μmの長さに到達したものもあった.以上のように,ヒュウガナツの成熟花粉の液体花粉培養系を確立することができた.
  • 竹村 圭弘, 黒木 克翁, 松本 和浩, 森口 卓哉, 中田 昇, 田村 文男
    2012 年 11 巻 2 号 p. 181-187
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    ‘おさ二十世紀’の自殖後代でS4sm遺伝子をホモで持つニホンナシ系統TH3,台湾在来ナシ横山,およびそれらの交雑によって得られたF1系統群の萌芽率を3年間にわたり調査した.F1個体は,S遺伝子の判定とSSRマーカーによる親子鑑定の結果から,全個体がこの両親に由来する後代であると同定された.全調査日において横山の萌芽率は60%以上であり,11月下旬~1月上旬までの間に自発休眠に導入されなかった.一方,TH3の萌芽率は常に横山に比べて低く,その値は12月上旬~1月上旬にかけて徐々に上昇した.いずれの調査日ともに,F1個体が示す萌芽率は横山とTH3の萌芽率の間に広く分布した.全9回の調査日のうち8回の調査日において,F1個体の萌芽率の平均値は横山よりTH3の萌芽率に近い値を示した.そこで,TH3が自発休眠の深度に関する優性遺伝子をホモで持つと仮定してχ2検定を行ったが,この仮定は棄却された.これらの結果から,低温要求量を決める遺伝要因にはQTLが存在すると考えられた.多くのF1個体の落葉期は,TH3の落葉日に比べて横山の落葉日に近かった.一方,F1個体の展葉期は,横山とTH3の展葉日のほぼ中間にあたる4月9日に集中していた.
  • 小笠原 利恵, 住吉 稔, 川原 勇太, 加藤 淳太郎, 福井 博一
    2012 年 11 巻 2 号 p. 189-194
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    スパティフィラム(Spathiphyllum)の新品種育成を目的として,塊茎へのコルヒチン浸漬処理による四倍体の作出を行った.展開葉および未展開葉を除去した塊茎をコルヒチン0,0.1,1.0および10.0 mM(DMSO 1%)に12,24および48時間浸漬処理した.処理後に生育した植物体の倍数性をフローサイトメトリー分析で判定した結果,コルヒチン10.0 mM処理区で二倍性細胞と四倍性細胞のキメラ個体が3個体得られた.四倍体を獲得するために,キメラ個体の茎頂培養を行い,多芽体を形成させ再分化した植物体を順化した.生育した植物体の倍数性を再度判定した結果,1個体の四倍体を獲得した.四倍体は二倍体と比較して,気孔の肥大,葉幅/葉長比の増大,花茎や肉穂花序の肥大化,仏炎苞の卵形化と肥厚化などの形態的な変化が観察された.
  • 八重垣 英明, 土師 岳, 末貞 佑子, 中村 ゆり, 京谷 英壽, 西村 幸一, 三宅 正則, 吉田 雅夫, 山口 正己
    2012 年 11 巻 2 号 p. 195-198
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    ウメにおける緑萼(青軸)性の遺伝様式の解明のために,41組み合わせの交雑から得られた626実生について,アントシアニン生成能力の有無を調査した.両親がともにアントシアニン欠如の組合せでは,すべての実生がアントシアニン欠如であった.アントシアニン欠如 × アントシアニン生成およびアントシアニン生成 × アントシアニン欠如の組合せでは,すべての実生がアントシアニン生成となる組合せと,アントシアニン生成とアントシアニン欠如が1 : 1に近い割合で分離する組合せがあった.両親ともにアントシアニン生成の組合せでは,すべての実生がアントシアニン生成となる組合せと,アントシアニン生成とアントシアニン欠如が3 : 1に近い割合で分離する組合せがあった.以上の結果から,ウメの緑萼性は劣性の一遺伝子(a)によって支配されていると考えられ,25品種・6系統の遺伝子型を推定した.
  • 井上 栄一, 本間 貴司, 佐々木 道康, 郷内 武, 霞 正一
    2012 年 11 巻 2 号 p. 199-203
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    クリの自家不結実性は,他の果樹のようには完全でないと報告されているが,その自家結実性の程度については明らかになっていない.そこで本論文では,花粉遮断試験とSSR遺伝子座の遺伝解析によって,品種間における自家結実性の変異を明らかにした.花粉遮断試験の結果,調査した51品種・系統の約47%にあたる24種類において結実が確認された.そのうちの5品種とその自家結実実生13個体について,SSR遺伝子座の遺伝を確認したところ‘伊吹’,‘大峰’および‘豊多摩早生’由来の8個体が自殖実生であると推察された.特に,‘豊多摩早生’に関しては着毬率(62.5%)と結果率(33.3%)も他の品種・系統と比較して極めて高く,調査した6個体すべてが自殖実生であることが確認された.一方,‘笠原早生’,‘丹沢’および‘大峰’に由来する5個体は,他家受粉に由来すると考えられた.以上の結果より,クリにおいては品種によっては自家結実が可能であるが,それはごく低頻度であり,基本的には自家不結実であると結論した.しかし,今回用いた品種・系統のうち,‘豊多摩早生’だけは自家結実性と判断した.
繁殖・育苗
  • 津田 浩利, 小島 祥子, 鉄村 琢哉, 小松 春喜, 國武 久登
    2012 年 11 巻 2 号 p. 205-212
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    我が国に自生するスノキ属植物とブルーベリー栽培品種において,多芽体由来シュートを用いた染色体倍加を検討した.オリザリンとコルヒチンを様々な濃度や時間でシュートに処理し,その後5 mg・L−1 zeatinを添加したMW培地で培養した.培養したシュートの腋芽から新たに発生したシュートの倍数性を解析した.染色体倍加個体の誘導率は有糸分裂阻害物質の種類,処理濃度,処理時間および供試した種により異なったが,本処理条件内では,オリザリンの方がコルヒチンより高い値を示した.特に,0.005%・24時間でオリザリン処理を行った場合,北部ハイブッシュブルーベリー‘Berkeley’,スノキ,コケモモおよびクロマメノキにおいて23.3,5.6,40.0および57.8%の染色体倍加個体が得られた.これらの染色体倍加個体は,ラビットアイブルーベリー台木に接ぎ木した後,順調な生育を示している.以上のように,多芽体由来シュートへのオリザリン処理により,スノキ属植物の染色体倍加個体を効率的に誘導できることが明らかになった.
  • 高橋 和彦, 秦名 俊光, 石川 林, 荻原 勲
    2012 年 11 巻 2 号 p. 213-217
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    絶滅に瀕するサギソウ自生地を復活させるために,自生地からサギソウの実生育成に適する菌株の分離を試み,自生地における実生育成の可能性を検討した.まず,サギソウを無菌播種して得られた球根を自生地に早春に植え付け,発根した根に菌根菌が感染し始めた頃にその個体を回収し,根の細胞から菌株を分離した.次に,分離した菌株のうち,低温条件下でも菌糸が伸長し,サギソウプロトコーム生育促進効果の高い菌株を見出した.この菌株を当該自生地のサギソウプロトコームに接種し,ゲル状に被覆して自生地に設置する,菌根菌接種ゲル被覆サギソウプロトコーム設置法により自生地に設置したところ,サギソウプロトコームの生存率が格段に高まるとともに,生育状況も良好となった.この方法により,自生地を復活できる可能性が示唆された.
土壌管理・施肥・灌水
  • 真野 隆司, 水田 泰徳, 森口 卓哉
    2012 年 11 巻 2 号 p. 219-225
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    樹勢の異なるイチジク(Ficus carica L.,‘桝井ドーフィン’)に対し,不織布マルチの被覆とかん水が樹体の生育と果実品質に与える影響を検討した.不織布マルチは着色良好で糖度の高いイチジクを生産できるものの,いや地条件下やかん水量の少ない樹勢の弱いイチジクに対して行うと,一層樹勢を弱め,小玉果や変形果の発生を助長した.一方,密植栽培で樹勢の強いイチジクに対して不織布マルチをする場合,pF 2.5程度を維持できれば,密植樹の樹勢を抑制でき,収穫時期も早まるとともに果実品質も向上することが明らかになった.
  • 今野 裕光, 桝田 正治, 村上 賢治
    2012 年 11 巻 2 号 p. 227-234
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    トマトの防根給水ひも栽培において,栽培後に肥料袋を除去する「紐上置肥(以下,置肥)」を培地再利用が容易な砂に適用し,生育,収量および養分溶出率について土培地と比較した.また,両培地における混肥と置肥の施肥法の違いについても同様に調査した.供試材料には中玉トマトを用い,第7段摘心栽培とした.栽培期間は,2009年9月~2010年2月の136日間であった.草丈および摘心部の新鮮重・切断直径には,全処理区間で差がなかった.可販果収量は砂と土区間に差はなく,両培地における施肥法間にも差がなかった.砂区の果実は土区より全段位で酸度が低く,高段位でグリーンバック果の発生率が高かった.肥料を栽培後に培地から取り出し分析したところ,total-NおよびK2Oの溶出率は80%を超えており,砂区は土区より若干溶出率が低かった.砂区における施肥法間には,溶出率にほとんど差はなかった.一方,見かけの養分吸収量は,特にK2Oで少なく,砂区が土区より約4 g低い値を示した.これは元の培地の含有量に依存するものであり,砂区における果実酸度の低下とグリーンバック果の多発に関係していると考えられた.以上より,砂培地の肥料設計は,土培地よりもK2Oの肥効を高める必要があると考えられた.
栽培管理・作型
  • 大江 孝明, 櫻井 直樹, 岡室 美絵子, 根来 圭一, 土田 靖久, 中西 慶, 細平 正人
    2012 年 11 巻 2 号 p. 235-240
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    ウメ‘南高’果実の着果位置の違いが果実の成熟や化学成分含量に及ぼす影響について,4年間調査した.いずれの年も,収穫指標とした毛じの抜け具合が30%以上となった時期が内層の果実では遅く,収穫の開始が外層の果実よりも4~10日遅かった.果実重,果皮色L*値およびb*値は,果実発育が進むにつれて増大し,硬度は減少する傾向があったが,樹冠の内層と外層の青果収穫開始期に採取した果実間で比較すると,両者に差はなかった.果肉のクエン酸,ソルビトールおよびβ-カロテン含量は,果実発育が進むにつれて増加する傾向であったが,樹冠の内層と外層の青果収穫開始期に採取した果実間で比較すると,両者に差はなかった.一方,ポリフェノール含量および抗酸化能は,果実発育が進むにつれて減少する傾向があり,樹冠の内層と外層の青果収穫開始期に採取した果実間で比較すると,内層の果実で少なかった.これらの結果は,内層の果実は収穫を遅らせることにより,果実重やいくつかの機能性成分を外層の果実と同等にできるが,ポリフェノール含量や抗酸化能は同等にできないことを示している.
  • 川西 孝秀, 島 浩二, 林 寛子, 道園 美弦, 久松 完
    2012 年 11 巻 2 号 p. 241-249
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    スプレーギクにおいて,冬季の加温コスト低減を目的として,日没の時間帯からの短時間の昇温処理(以下,EOD-heating)の適切な処理法とその効果について検討した.‘セイプリンス’および‘レミダス’を用いて,栄養成長期,花芽分化期および花芽発達期の各生育ステージにおけるEOD-heatingの処理法を検討した結果,栄養成長期では,日没の時間帯~3時間17°Cとし,その後朝まで9°Cとすることで,処理期間中の生育はやや劣るものの,夜間15°C一定管理と同等品質の切り花が得られた.同様に,花芽分化期では,日没の時間帯~7時間20°C,その後13°C,花芽発達期では,日没の時間帯~3時間17°C,その後11°Cとすることで,それぞれ18および15°一定管理と同等品質の切り花が得られた.また,これら各生育ステージの処理を組み合わせ,21品種でEOD-heatingの適応性を検証した.その結果,到花日数は,EOD-heating区では慣行区と比べて8品種で同等となり,13品種で有意に増加したが,そのうち11品種の増加日数は3日以内であった.また,品種によって切り花長,切り花重および花序数の減少や花首長の増加が認められたものの,19品種において秀品の規格を満たすものとなった.これらのことから,夜間の温度管理技術として,燃料消費量の削減が見込めるEOD-heatingを利用できることが示された.
  • 立石 欣也, 山本 晴彦, 岩谷 潔, 土谷 安司, 倉橋 孝夫, 門脇 稔, 金子 奈々恵
    2012 年 11 巻 2 号 p. 251-255
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    ブドウ‘デラウェア’において,魚眼レンズを装着したデジタルカメラを用いたLAI推定技術を確立するため,その撮影方法と撮影条件の検討を行った.デジタル画像の2値化により,葉とそれ以外の部分に分け,そのピクセル値から光学的仮説に基づき,LAI推定値を算出した.晴天日の日中は開空度が大きく変化するため,LAI取得のための全天画像の撮影は曇天日,および,晴天日では太陽高度の低い時間帯である日の出や日没付近が望ましいことが示唆された.高さ150 cm程度の棚面に植栽された‘デラウェア’の性質上,棚面からの距離が100~150 cmの間で撮影すれば,より実測値に近いLAI推定値となることが確認されたが,LAI推定値は過大評価傾向を示した.過大評価となる原因を検討したところ,果実の有無の影響は撮影の時間帯による影響よりも小さかった.棚面,ハウスの構造材などの影響は無視できなかったため,開空度にその影響を加算し,LAI推定値を再計算する補正を行った.この補正により,従来の新梢長と葉面積の関係式から推定する手法より,迅速かつ簡易なLAI推定が可能であることが示された.
発育制御
  • 山崎 篤, 田中 和夫, 位田 晴久
    2012 年 11 巻 2 号 p. 257-263
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    緑植物春化型の植物であるネギの花芽分化に及ぼす苗の大きさおよび葉数(発芽からの本葉の出葉数)の影響について,‘金長’,‘浅黄九条’,‘長悦’および韓国在来の‘金陵’を用いて検討した.露地に秋播きした実生の自然条件における花芽の分化・発育と植物体の大きさとの関係を経時的に調べたところ,各品種とも葉鞘径などの植物体の成長や葉数の増加が一時的に停滞する相転換期があり,花芽分化する時期に重なっていた.この時期における苗の葉数は,‘金長’においてはいずれの播種時期でも約5で,播種時期に関わらず安定していた.‘浅黄九条’,‘長悦’および‘金陵’でも同様の傾向がみられた.これらのことから,ネギの花芽分化における分化可能な最小の生育量の指標としては,葉数を用いるのが適切であると考えられた.
収穫後の貯蔵・流通
  • 照屋 亮, 澤岻 哲也, 広瀬 直人, 牧志 佑子, 大城 良計
    2012 年 11 巻 2 号 p. 265-271
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    効率的なマンゴー炭疽病の防除を目的として,従来の温湯処理(HWT)よりも処理時間が短い短時間温湯処理(SHWT)が,炭疽病防除効果および果実品質に与える影響について検討した.In-vitro試験において,炭疽病原菌のC. gloeosporioides(Cg)胞子は,60℃,5秒で発芽が抑制された.マンゴー果実にCg胞子を接種し,SHWT(60℃,30秒および60秒)を行ったところ,防除効果が認められた.さらに30秒前後の防除効果について検討したところ,SHWTは60℃,40秒処理において,HWT(52℃,20分,処理後水冷10分)と同等の防除効果を示した.SHWTによる果実品温上昇は,HWTと比較して小さいことから,WHT後に行われている処理後の冷却は不要であると考えられた.官能評価では,室温貯蔵5日目における果皮の香りおよび光沢は,SHWTが無処理より低く評価されたが,果肉の香りと味には差がなかった.
  • 大江 孝明, 櫻井 直樹, 山崎 哲弘, 奥井 弥生, 石原 紀恵, 岡室 美絵子, 細平 正人
    2012 年 11 巻 2 号 p. 273-279
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    ウメ果実の追熟条件の違いが梅酒中の香気成分および苦み成分に及ぼす影響について調査した.におい嗅ぎ分析により,熟した果実を原料とした梅酒の芳香香気に関与する成分の一部がγ-デカラクトン,δ-デカラクトン,酪酸エチル,酢酸ブチルであると判断された.これら芳香香気成分量は,より収穫を遅らせた果実を用いた方が多く,原料果実を20℃で4日,30℃で3日追熟すると高まった.梅酒の青っぽい香気に関与する成分と判断された安息香酸エチルは,20℃では5日以内,30および35℃では3日以内の追熟により,収穫直後に漬けた場合と比べて同程度かそれ以下で推移した.また,苦みに関与するプルナシンおよびシュウ酸含量は20℃で4日,30℃で3日追熟すると減少した.以上のことから,原料果実の収穫時期や貯蔵条件により梅酒加工品の香気成分および苦み成分が大きく変わることが確認され,芳香香気を高め,青っぽい香気成分や苦み成分を抑えるためには,より熟した果実を収穫して,20℃で4日もしくは30℃で3日追熟させてから加工するのが良いと考えられた.
作物保護
  • 村上 覚
    2012 年 11 巻 2 号 p. 281-287
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/15
    ジャーナル フリー
    キウイフルーツ‘レインボーレッド’の果実肥大促進を目的とした側枝の環状はく皮において,処理回数,処理時期,結果数との関係および連年処理について検討した.さらに,環状はく皮の処理部位の違いについても検討した.その結果,‘レインボーレッド’においては側枝の環状はく皮処理により,果実肥大が促進された.また,収穫時に糖度が向上し,硬度が低下するなど,熟期が促進される傾向を示した.一方,果肉の赤みは処理により減少する傾向を示した.処理条件として,満開30日後以内に1回処理するのが適切であり,処理する際には結果枝当たりの果実数を1~2果に調整するのが適当と考えられた.連年処理を3年間行った結果,果実の肥大効果は3年とも認められ,側枝の生育や花数への影響はみられなかった.また,亜主枝に処理した場合ははく皮部が癒合せず,果実肥大も側枝での処理より劣った.以上の結果から,‘レインボーレッド’においては,側枝への環状はく皮は果実肥大促進に有効であると考えられた.
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