園芸学研究
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育種・遺伝資源
ヒュウガナツ(Citrus tamurana hort. ex Tanaka)における成熟花粉の液体培養系の確立
内田 飛香安部 秋晴星野 洋一郎國武 久登
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2012 年 11 巻 2 号 p. 173-179

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抄録
カンキツ類における雄性側自家和合・不和合に関するin vitro培養モデル系を確立するために,ヒュウガナツ成熟花粉を用いて培養環境条件や液体培地組成について検討を行った.最適な培養温度について調査したところ,25℃で最も高い正常発芽花粉率となった.また,最適pHは7.0であり,最も高い正常発芽花粉率と低い花粉管破裂率が観察された.基本培地(Hirano・Hoshino, 2009)を修正して液体培地組成について検討したところ,最適培地組成は,0.04%(w/v)塩化カルシウム,0.01%(w/v)ホウ酸,0.0007%(w/v)リン酸二水素カリウム,0.02%(w/v)酵母エキス,および10%(w/v)ショ糖となった.ヒュウガナツの液体花粉培養には,酵母エキスや塩化カルシウムの添加が有効であり,浸透圧調節やエネルギー源としてのショ糖の添加も重要であることが明らかとなった.これらの最適培養条件と培地組成において,ヒュウガナツ成熟花粉を1 × 105個・mL−1の密度で播種し,25℃,暗黒条件下で培養を行ったところ,培養4時間後に花粉の発芽が確認され,花粉管は1時間当たり約20 μmずつ伸長していた.培養6時間後,最も高い正常発芽花粉率73.6%が確認され,さらに培養8時間後には花粉管は200 μmの長さに到達したものもあった.以上のように,ヒュウガナツの成熟花粉の液体花粉培養系を確立することができた.
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© 2012 園芸学会
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