日本消化器内視鏡学会雑誌
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58 巻, 4 号
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総説
  • 今枝 博之, 細江 直樹, 山岡 稔, 芦谷 啓吾, 大庫 秀樹, 柏木 和弘, 中元 秀友, 緒方 晴彦, 金井 隆典
    2016 年 58 巻 4 号 p. 957-969
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    通常の白色光観察では腫瘍性病変の拾い上げに限界がみられるが,自家蛍光内視鏡観察(AFI)を用いることにより病変の検出率の向上が期待される.しかし,早期胃癌では炎症性変化や再生性変化にも反応するため,false positiveが多くspecificityが低いという欠点がある.NBI併用拡大観察を合わせて行うtrimodal imagingによりfalse positiveが減少し,specificityの改善が期待される.大腸腫瘍性病変ではAFIによる病変の検出は有用であるが,過形成性ポリープとの鑑別に有用性は定まっていない.また,潰瘍性大腸炎のサーベイランスにAFIは有用であるが,炎症が目立つ場合には胃と同様に鑑別が困難となる.バレット食道での腫瘍性病変にAFIは有用であるが,ランダム生検の成績をしのぐには至っていない.今後,スコープの細径化や画像解析の進歩によりfalse positiveの低下による正診率の向上が待たれる.
症例
  • 新関 修, 齋藤 衆子, 内田 宅郎, 山下 勉, 福地 聡士, 室 豊吉, 村上 和成
    2016 年 58 巻 4 号 p. 970-975
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性,血便を主訴に当院救急外来を受診した.多量の血便のためショックバイタルとなり,Hb7.9g/dlと貧血を認めた.輸血を行いながら下部消化管内視鏡検査を実施したが,全結腸及び回腸末端に多量に血液が貯留しており出血点を同定できなかった.腹部造影CT検査を行い,回腸末端の憩室から造影剤の血管外漏出を認めた.大腸内視鏡でのアプローチが可能と判断し再検査を実施,バウヒン弁から口側約10cmに位置する憩室から拍動性出血を認めた.クリッピングにより止血され,再出血なく経過した.小腸憩室出血の診断に腹部造影CTが有用であり,出血点の同定が可能であれば内視鏡的止血術が治療の選択肢として考慮される.
  • 藤岡 審, 平川 克哉, 松坂 朋子, 松野 雄一, 吉田 雄一朗, 平田 敬, 川本 徹, 工藤 哲司, 中島 豊, 江崎 幹宏
    2016 年 58 巻 4 号 p. 976-982
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    Diverticular colitis(DC)に対してS状結腸切除術を施行された後に潰瘍性大腸炎へと進展した2例を経験した.手術前に施行された内視鏡像を検討すると,症例1では経過とともに半月襞上の強発赤,ポリープ状隆起,狭窄へと病変が進行していた.一方,症例2ではS状結腸に潰瘍性大腸炎に類似したびまん性発赤顆粒状粘膜を認めた.それぞれ再発性,慢性憩室炎と診断され手術が施行されたが,症例1は術後28カ月目に,症例2は術後13カ月目に下痢,血便が出現し典型的な潰瘍性大腸炎への進展が確認された.DCは潰瘍性大腸炎との鑑別が時として問題となるが,経過中に典型的な潰瘍性大腸炎へと進展する場合もあり,臨床経過を注意深く観察する必要があると思われた.
  • 中條 恵一郎, 長南 明道, 松田 知己, 山岡 肇, 佐藤 俊, 三宅 直人, 三島 利之, 石橋 潤一, 中堀 昌人, 遠藤 希之
    2016 年 58 巻 4 号 p. 983-990
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.大腸内視鏡検査で横行結腸に10mm大の頂部に不整形陥凹を伴う立ち上がりがなだらかな粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた.陥凹内はI型様の類円形pitやIIILに類似したpitから構成されていた.生検で間質に粘液貯留を伴う印環細胞癌を認め,腹腔鏡下横行結腸切除術を施行した.病理組織学的には陥凹部に一致して低異型度の分化型管状腺癌が粘膜層を中心に増殖し,粘膜層から粘膜下層にかけて印環細胞癌が広く浸潤していた.また粘膜下層では粘液が貯留していた.最終病理診断は,adenocarcinoma(muc>sig>tub1),pT1(SM),ly2,v1,pN0であった.術後1年1カ月を経て再発転移は認めていない.印環細胞癌を伴った早期大腸粘液癌の報告例は少なく,報告した.
経験
  • 奥山 祐右, 奥山 智緒, 川上 巧, 中津川 善和, 山田 真也, 鈴木 隆裕, 戸祭 直也, 佐藤 秀樹, 吉田 憲正
    2016 年 58 巻 4 号 p. 991-998
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】ERCP時の放射線被曝を明らかにし,研修会がスタッフの被曝と防護の認識向上に寄与するかを検討する.
    【方法】個人線量計のデータを解析し,透視室でファントムを用い検証実験を行った.その後,被曝と防護に関する研修会を行い,参加者の意識と個人線量計データの変化を検討した.
    【結果】スタッフの被曝に関する認識は不十分であった.検証実験を通じ,立ち位置や高さにより被曝線量は変動し,汎用の防護具の散乱線遮蔽効果は十分であると判明した.研修会の施行により,被曝と防護の認識向上と被曝線量軽減を認めた.
    【結論】被曝線量の検討や研修会の実施,有効な遮蔽板の使用は放射線被曝と防護に対する認識向上に寄与した.
注目の画像
手技の解説
  • 藤崎 順子, 堀内 裕介, 平澤 俊明, 山本 頼正, 五十嵐 正広
    2016 年 58 巻 4 号 p. 1001-1009
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    Helicobacter pyloriHP)未感染未分化型早期胃癌のうち大部分は印環細胞癌であった.これらは通常内視鏡像で95%以上の症例が褪色調を呈し,M.L領域に発生するIIb.IIc型病変であった.色調変化で発見される症例が多いことからインジゴカルミン色素散布では認識しにくく,NBI非拡大でも色調変化で発見しやすい.NBI拡大内視鏡像では窩間部開大のみ構造パターンの所見がメインの病変は癌は粘膜中層にのみ存在し,血管パターンが確認できるものは粘膜中層から上層に発育し,表面の腺窩上皮は消失し,一層の上皮のみで覆われている症例であった.当院で経験されたM癌の症例は同時多発癌症例1例を除いて,すべてESDで治療され,ESD適応拡大病変治癒切除が得られた.HP未感染未分化型早期胃癌の特徴的な所見を知ることにより今後多くなるHP未感染症例のスクリーニング検査での早期胃癌発見のきっかけとなりうる.
資料
  • 山本 博徳, 矢野 智則, 大宮 直木, 田中 周, 田中 信治, 遠藤 豊, 松田 知己, 松井 敏幸, 飯田 三雄, 菅野 健太郎
    2016 年 58 巻 4 号 p. 1010-1017
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    背景及び目的:ダブルバルーン内視鏡(double-balloon endoscopy:DBE)は処置能を備え,全小腸における直接的な精密検査を可能にした.その有用性は認識されているものの,その効果と安全性を前向き多施設研究として大規模には評価されていない.DBEが熟練及び非熟練内視鏡医によって施行された場合の効果と安全性を評価するために,前向き多施設共同研究が日本の5つの大学病院とひとつの一般病院において実施された.
    方法:179件のDBEが施行された合計120人の患者がこの研究に登録された.このうち129件を熟練者が,50件を非熟練者が施行した.主要および副次的評価項目は安全性評価,検査目的の達成率(新たな病変の同定,治療方針決定に寄与する詳細な観察,もしくは全小腸内視鏡観察による有意な病変の除外),全小腸観察率とした.
    結果:検査目的達成率は全体で82.5%(99/120)だった.全小腸観察成功率は70.8%(34/48)だった.有害事象は1.1%で認めた(179件中2件:粘膜損傷と発熱).重篤な有害事象は認められなかった.熟練者と非熟練者の比較ではどの評価項目においても有意な違いは認められなかった.
    結論:DBEは小腸疾患を疑う患者にとって有効かつ安全な検査であり,非熟練者でも簡単なトレーニングを受け,熟練者の監督下で行う限り安全に施行可能である.
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