総合健診
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日本総合健診医学会 第45回大会
日本総合健診医学会 第45回大会・シンポジウム5
健診・人間ドックは加齢性リスクに挑めるか!?
認知症予防の最前線
伊賀瀬 道也
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 44 巻 3 号 p. 511-516

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抄録
 われわれは2006年から開始している抗加齢ドックのデータを基にした加齢に伴う認知症発症リスクに対する検討を行っている。根本的な治療薬のない現在「可能な限り早期に認知症および認知症予備群を発見して適切な生活への介入を行うこと」が求められている。近年、正常加齢と認知症の境界領域と考えられる軽度認知障害(Mild cognitive impairment: MCI)が注目されており、MCIと関連するファクターを探索し、それらに対する介入を試みることは臨床面からも有用であると考えられる。MCIは65歳以上の高齢者の約5%にみられ、年間約10-15%がADに移行することが知られている。われわれはMCIの診断には「MCI screen」を用いている。このテストを用いて2017年に2本の論文がpublishされた。
論文1)高齢者のMCI診断におけるSAFの有用性
 AGEs(Accumulation of advanced glycation endproducts)の蓄積と認知症の発症の関連性が示唆されている。しかしながら認知症発症の前段階と考えられるMCI(mild cognitive impairment)とAGEsの関連を検討した報告は少ない。そこで本研究では健常高齢者におけるMCIと皮膚に蓄積したAGEsとの関連について検討した。本研究から非侵襲的なAGEs測定法であるSAF(Skin autofluorescence)は健常者におけるMCIスクリーニングを行う上で有用なバイオマーカーである可能性が示唆された。
論文2)高齢者におけるエクオール産生能と認知機能低下の関連
 豆イソフラボン摂取による心血管疾患の予防効果が知られているが、認知機能予防効果については愚論のあるところである。個人差がある原因として大豆イソフラボンの代謝産物である「エクオール」(Equol)産生能の有無が関連している可能性がある。本研究結果からは1)エクオール産生者では有意にタッチパネル式認知機能検査の点数が高い2)エクオール非産生者では有意にMCIの存在率が高い、ことからエクオール産生者では認知機能の予防効果がある可能性がある。
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© 2017 一般社団法人 日本総合健診医学会
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