ミエリン形成時期以前からNiA欠乏飼料で飼育したラットの脳では,ミニリン含量が低下し,ミエリン脂質の長鎖脂肪酸の割合が低下する原因を明らかにすることを試みた. 1)生後12目目に離乳したのち,NiA欠乏飼料叉はNiA添加飼料で飼育したラットに経時的に<14>^C-acetateを腹腔内注射L,脳及び肝臓の脂質に取り込まれた放射活性を測定した.NiA欠乏飼料及びNiA添加飼料で飼育したラットともに肝臓の脂肪酸合成は成長するに従って増加したが,脳の脂肪酸合成はミエリン形成の時期を過ぎると急激に低下した. 2)NiA欠乏飼料叉はNiA添加飼料で飼育したラットの脳をスライスにし,Krebs-Ringer bicarbonatebuffer中で<14C>-acetateとともにincubateして脂質に取り込まれた放射活性を測定すると,NiA欠乏飼料群ではNiA添加飼料群に比べて低下していた. 3)NiA欠乏飼料叉はNiA添加飼料で飼育したラット脳の脂肪酸合成に関与する酵素の活性を測定すると,fatty acid synthetase活性には両群の間で差は見られたかったが,fatty acid e1ongating enzymeの活性はNiA欠乏飼料群ではNiA添加飼料群に比べて低下していた. これらの結果から,NiA欠乏飼料で飼育したラットの脳ではミエリンの形成が抑制されるのは,ミエリン形成期に増加する脳の脂肪酸の合成,特に長鎖脂肪酸の合成が抑制されるため,ミエリン脂質の構成成分として必要た長鎖脂肪酸の不足によるものと推測された.
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