土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
80 巻, 1 号
通常号(1月公開)
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構造工学,地震工学,応用力学
論文
  • 松原 拓朗, 右高 裕二, 藤野 陽三, 田村 洋, シリンゴリンゴ ディオンシウス , 矢部 正明
    2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 23-00145
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

     緊急輸送道路が大規模地震の発災直後からその機能を発揮するためには,レベル2地震動により道路に設置された照明柱に車両の通行を妨げるような損傷が生じてはならない.本研究では,都市高速道路に設置される実大の照明柱を用いた載荷実験によりその耐力,変形能および損傷形態を確認した.載荷実験の結果と緊急輸送道路としての機能を確保するうえで照明柱に許容できる変形量から,照明柱の限界状態2を定めた.高架橋上の照明柱には,高架橋によって増幅された応答加速度が作用するため,大きな地震応答が生じることがある.高架橋と照明柱を一体とした動的解析結果から,高架橋上の照明柱に生じる地震応答が限界状態2を超えるかどうかを照査するための実用的な耐震照査法を提案した.また,一例として実在する高架橋上の照明柱の耐震性を照査した.

  • 比江島 慎二, 出石 悠人
    2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 23-00149
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

     強風による観覧車ゴンドラの回転現象の発生メカニズムについて検討した.この回転は,ゴンドラ側面に吹き付ける風によって煽られて生じるのではなく,ゴンドラ正面に吹き付ける風により励起されるギャロッピング振動が風速とともに増幅し,その角度振幅が180°を超える風速に達すると回転に至るのが原因である.ただし,ギャロッピングが励起されるには,ある閾値以上の初期回転角が与えられる必要がある.また,閾値以上のいかなる初期回転角を与えた場合も,増幅や減衰の過渡応答を経て,同一風速であれば同一の応答振幅の定常応答に収束する.このとき,角速度の応答振幅は風速に比例し,振動時だけでなく回転時にもこの比例関係が維持される.

河川・海岸・海洋工学と水文学
論文
  • 原田 守博
    2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 23-00142
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

     気候変動に伴う降雨外力の激化を受けて河畔遊水地の整備に注目が集まっている.本研究では,上流からの洪水流量の波形に対し遊水地を最適に設計するための基本方針について理論的検討を行った.まず,洪水波形をピーク流量とピーク時刻を含む式形で与え,河道の水位を求めて越流堤からの流入による遊水地の滞留過程を定式化した.その解に基づき,限られた容量の遊水地を有効に活用するための越流堤の最適な諸元を導くとともに,遊水地容量とピーク流量低減効果の関係を表現した.最後に,気候変動に伴う洪水流量増加に対し,遊水地の治水効果の低下幅や,所定の治水効果を得るために必要となる遊水地容量を試算した.本研究における理論展開は幾つかの仮定に基づくものの,任意の洪水波形に対して最適な遊水地を立案する上での基本的指針を与えている.

地圏工学
論文
  • 山田 淳夫, 千々松 正和, 鈴木 誠, 小峯 秀雄
    2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 23-00094
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

     ベントナイトを用いた放射性廃棄物処分施設の人工バリアの施工時の品質管理において,一般的な盛土工事等における品質管理手法を適用した場合,現場密度試験などの頻度は数百~数千m3につき1回程度となり,数が限られたデータから遮水性能を評価する必要がある.そこで本研究では,地盤統計学的手法を用いて透水係数の3次元空間分布モデルを作成する方法を適用し,土構造物の全体での遮水性能の評価を浸透流解析等で行った.既往の施工試験のデータを参照し,測定頻度の解析結果のばらつきへの影響を評価した.その結果,解析結果のばらつきを抑制するために最低限必要な測定数を把握することができた.

  • 井澤 淳, 小島 謙一, 荒木 豪, 大西 高明, 林田 晃, 藤原 寅士良, 細井 学, 水野 弘二, 舘山 勝
    2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 23-00132
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

     筆者らは,脈状の改良体を液状化地盤内に割裂注入し,改良体周辺地盤を密実化させることで液状化抵抗を増大させ,効率的に液状化程度を低減する脈状地盤改良工法を開発している.本稿では,自然地盤に対する適用性や改良効果の持続性を検討するために実施した施工試験について報告する.試験の結果,自然地盤に対しても小さな隆起量で所定量を注入可能であること,換算N値の計測から十分な改良効果が得られていることを確認した.また,細粒分含有率が高い地盤の場合,十分な改良が実施できた場合でも換算N値では改良効果を過小評価する可能性があるが,密度検層,孔内水平載荷試験を用いることで合理的に改良効果を評価できる可能性があることも確認した.なお,これらの試験を1~2年後にも実施し,改良効果が維持できていることを示した.

土木計画学
論文
  • 相澤 大輝, 河野 達仁
    2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 22-00299
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,二次元空間における放射状道路と環状道路から形成される道路ネットワークにおいて,道路整備が商業集積と都市の厚生にどのように影響するかを理論的に分析する.本研究は,放射状道路と環状道路における単位距離当たりの移動費用が異なる場合の市場均衡に着目する.これにより,放射状道路と環状道路それぞれの整備で生じる商業の二次元的な集積パターンの変遷を明らかにする.分析を通じて,1) 道路整備計画における整備順序の変更は集積パターンと社会厚生を変化させることと,2) 最善の社会厚生を達成する二次元空間上の商業集積の空間分布が,市場均衡における集積の空間分布とどのように異なるかを示す.

  • 平井 節生, 羽藤 英二
    2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 23-00039
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,明治期に,日本の鉄道橋がイギリス人等のお雇い外国人主導で定規化され,製造の面においてもイギリス等からの輸入に頼っていた事実に焦点を当て,その不可解性を指摘した上で,明治期の鉄鋼業界の分析,鉄道界と造船業との比較,明治期の鉄道界を率いた井上勝の思想の分析等を通じて,明治期に鉄道橋が輸入されていた要因の解明を目指した.その結果,明治期に鉄道橋が輸入された鉄道固有の要因として,当時の鉄道界が急速なネットワーク拡大に邁進していたこと,井上勝が日本の橋梁技術に対する無力感を持っていたこと,鉄道橋梁に携わったお雇い外国人が鉄道当局から高い信頼を得ていたことが背景にあることがわかった.

  • 室岡 太一, 松場 拓海, 川合 春平, 谷口 守
    2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 23-00096
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

     深刻化する人口減少に対して,広域的な拠点設定による機能の分担が目指されているにもかかわらず,拠点の選定基準やその包括的な実態は不明瞭であり,自治体の枠を超えた横断的な視点が欠けていた.そこで本研究では.既存のストックがあり人々の活動の場となりうる拠点候補地の経年的な変化実態を明らかにすることで,今後の広域的な機能補完への示唆を得ることを目的とした.分析の結果,1)中山間部では鉄道駅よりも非鉄道駅の候補地のほうが実態としての階層が高いこと 2)都市部では滞留人口や施設が中心的な拠点候補地から流出する一方で,郊外部ではこれらが維持または増加する分散化が生じていること 3)自動車に頼らないと未だに日常的な生活サービス機能を有する拠点候補地へのアクセスが困難な地域があることが明らかになった.

  • 金森 貴洋, 厳 網林
    2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 23-00156
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

     東日本大震災の津波被災地では,高齢化が進む中で集団移転を実施した.津波に対する安全性は向上したが,生活の拠点だった低地沿岸部から移転したことで,高齢者の徒歩による生活環境は大きく変容したと考えられる.本研究は,職住分離を推進した中で行われた集団移転が,高齢の移転参加者の徒歩による生活環境に与えた影響を,集団移転団地から生活施設・生業施設までの徒歩アクセシビリティより明らかにした.その結果,1)市誘導型は市街地部に多く徒歩圏から徒歩圏外に,協議会型は郊外・集落部に多く徒歩圏外からより徒歩圏外に移転し,2)商業施設や公共交通は郊外・集落部で撤退し内陸部側に,住まいは市内全域で立地が拡大・分散したことで,住まい・一部生活施設・生業施設が離れ,徒歩による生活環境に影響を及ぼし得ることが示唆された.

  • 宮本 歩武, 青木 俊明
    2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 23-00195
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,事業説明会を模した討論実験を行い,協議方法と協議状況が今後の説明会への参加意向に与える影響を検討した.実験では,地層処分場の受け入れについて,オンラインチャットと対面の2方法で別々に討論を行った.その際,否定的発言で発言機会を独占する人物の有無で協議状況を操作した.分析の結果,参加意向への主効果は認められなかったが,対面協議で発言独占者が不在の場合,参加意向や利益感が高まる交互作用が認められた.協議方法にかかわらず,協議に参加すると今後の参加意向が高まることも示された.参加意向は利益関心と運営の適切さからなることも示された.雰囲気の良さや運営の公正さについては対面協議の主効果が認められた.最後に,行動コストを考慮する必要性が考察された.

報告
  • 矢野 康明, 宮田 真幸, 寺沢 直樹, 佐野 薫, 土井 麻記子, 山村 剛, 海老原 寛人, 松井 祐樹
    2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 22-00218
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

     2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故で放射性物質による環境汚染が生じ,除染等による環境回復が進められた.これにより発生した除去土壌や廃棄物(約1,400万㎥)を福島県外で最終処分するまでの間,環境省は安全で集中的に管理・保管する施設である中間貯蔵施設を整備し,保管している.福島県内各地に仮置されている大量の除去土壌等を中間貯蔵施設に搬入するため,最大時には,1日当たり1,700台程度(延べ3,200往復程度)の大型ダンプトラックが稼働するため,道路混雑・渋滞発生による一般車両への影響が懸念された.本稿では,輸送計画,交通影響モニタリング及び輸送中のマネジメント(PDCA 管理)の実績について事例報告する.

土木技術とマネジメント
論文
  • 高津 光, 五艘 隆志
    2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 23-00022
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

     我が国の無償資金協力事業における入札不落発生要因について予定価格と応札価格の乖離にはJICAの採用する積算基準の精度よりも無償資金協力事業の契約形式や制度が大きく関わる可能性が示唆された.そこで本稿では積算精度以外に予定価格/応札価格の乖離に関わっていると推定される契約約款に記載されている事項と業務遂行実態の違いに着目し要因を分析した.その結果,総価契約方式によりリスク対応費を適切に積上げられない事,入札時における詳細施工計画確認の難しさ,契約変更過程の契約条項と実務上の運用の差異といった要因が挙げられた.入札不落率を低減させるためには予定価格の積算精度を高めることは勿論,適正な契約形態や契約約款によりコンサルタント,コントラクターのリスクをいかに低減できるかが重要である.

  • 渡邉 諭, 藤原 将真, 吉田 郁政
    2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 23-00029
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

     鉄道の安全・安定輸送の脅威となる洗掘災害に対する維持管理の品質向上のためには,鉄道の河川橋梁の橋脚で生じる局所洗掘に対する発生危険度を評価し,被災の可能性が高い河川橋梁を抽出する必要がある.本研究では,洗掘の発生危険度を表す指標を提案することを目的として,鉄道橋梁において洗掘災害が発生した際の水文統計量から河床へのせん断力(掃流力)の無次元化量である無次元掃流力およびその正規化量を求め,被災と無被災時の各値を比較・整理した.その結果,災害が発生する正規化量と根入れ比との間には一定の線形関係があり,根入れ比に対応した正規化量の再現期間を比較することで,洗掘が懸念される橋梁を相対的に抽出できる可能性を示した.

環境と資源
論文
  • 加藤 雄大, 望月 克也, 宮瀬 文裕, 宇野 昌利, 正井 洋一, 山田 史章
    2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 22-00331
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

     夜間工事照明は周辺の広い範囲に影響を及ぼすため,露光範囲の削減や誘虫性の低い光源の使用が求められる.誘虫性の低い光源としてLED灯が挙げられるが,種によってLED灯にも大量に誘引される.本報では,様々な波長と点滅周期のLED灯を用いた誘虫試験を実施した.さらに,通常の白色LED灯と,100Hzで点滅してかつ様々な色温度を持つLED灯を用いて,それぞれの誘虫量を比較する試験を実施した.結果,波長,点滅周期ともに昆虫種によって異なる影響が確認された.波長の比較では,多くの目で赤色の波長を多く含む色への誘虫量が減少する傾向が見られた.点滅周期の比較では,点滅の周波数が低くなるほど少なくなる傾向が見られたが,100Hzのパルス点灯LED灯と定電流点灯LED灯の比較では一部の目でパルス点灯の方が増加する傾向が見られた.

  • 真砂 佳史, 槇田 容子, 藤田 知弘
    2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 23-00011
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

     2022年8月1日までに策定された地域気候変動適応計画を対象に,その策定状況や記載されている適応策数,対象分野数等と地方公共団体の区分や計画の位置づけ方等の関係を分析した.その結果,地方公共団体の区分や人口により計画策定率,適応策数,適応策の記載がある分野に差が見られ,地域の特性や体制等を反映した計画となっていることがうかがえた.93%の計画が地球温暖化対策推進法に基づく地方公共団体実行計画(区域施策編)と併せて策定され,また11件の計画には緩和策等他の施策との関連に関する記載があった.今後は小規模な市区町村の計画策定率の向上を図る一方,策定済みの地方公共団体では計画更新に向け内容の深化が望まれる等,計画策定におけるニーズの多様化が想定され,それらに応える知見の蓄積や情報提供が求められる.

  • 河瀬 玲奈, 一瀬 護, 芳賀 智宏, 松井 孝典, 日下 博幸
    2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 23-00127
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,複数の代表濃度経路や共通社会経済経路に対する複数の全球気候モデルによる気候シナリオを用い,2030~2059年の滋賀県の将来人口変化を考慮した市町別熱中症搬送者数の推計を行い,地域および集団のリスクをそれぞれ総数および10万人あたりにて,対2010年代年平均比で示しリスク変化の大きな地域の特定を行った.また,県全体と市町間の幅,全球気候モデルの違いによる幅,年変動の幅を分析することで気候変動影響評価における不確実性の検討を行った.地域のリスクは,草津市や守山市で高く,甲良町や多賀町で低かった.65歳以上の集団のリスクは米原市や大津市が高かった.また,全球気候モデルにより経年的な傾向に差が生じること,全球気候モデルや気候シナリオ間の幅よりも年変動の方が大きくなる可能性が示唆された.

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