自閉症は,社会的相互関係の障害や,特定のものへの強いこだわりなどの症状を呈する発達障害の一つである。発症には遺伝的要因が強く関与することが知られるが,なかでもシナプス関連分子では数多くの遺伝子変異が同定され,自閉症との関連が示唆されている。今回,我々は自閉症の兄弟より,シナプス接着分子
NLGN1遺伝子上にアミノ酸置換を伴う一塩基置換を同定し,
in vitro,
in vivoにおける機能解析を行った。
in vitroの試験において,同定した変異は,NLGN1蛋白質の発現量減少やシナプス誘導能の欠失などを引き起こすことが明らかになった。また,他の患者で同定した
NLGN1変異においても,同様のフェノタイプが確認された。さらに,同定した変異を保有する
Nlgn1-P89Lノックインマウスを作製したところ,本マウスは,脳内でNLGN1蛋白質量が減少しており,社会性の試験や空間記憶学習の試験において異常を呈することがわかった。以上の結果は,新規に
NLGN1遺伝子の変異が自閉症と関連することを示唆する。
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