青年期に入るときに,“一人前の大人になる”という課題がある。青年は大人になることの未知・未確定性の故に不安を抱き,それは危機を形成する。(青年期危機非行)は,その不安を解消させ,大人に脱皮する1手段であるとしてとらえる。
青年期危機非行には4つの類型がある。
1) 過剰行動型
2) 実験と証明型
3) 抗議と自由解放型
4) 目標拡散の麻痺型
性格や家庭環境などの歪みの伴わない青年期非行がふえており,この取り扱い方についても提案する。
1. 継続的に非行を繰返えす少年の最初の問題行動は,① .怠学(29.2%)②.窃盗(16.5%)③.けんか・暴行(7.8%)④.喫煙(7.5%)⑤.性交(6.5%)の順であった。
初発問題行動として怠学は全体の約30%と多い。一般に怠学位いと甘く考えることは非常に危険である。またその他の前述の問題行動も習慣性非行少年になりやすい行動なので,その行動を発見した時は真剣に取組むことが大切である。特に義務教育中は家庭と学校の緊密な連絡によって,その発見も早くなり,両者の協力で効果のあがる少年が多いように思われた。
2. 初発問題行動の年代別発生率を多い順からみると,①.中学生(40.4%)②.小学校高学年(20%)③.小学校低学年(19.7%)④.中学卒業後(12.9%)⑤.就学前(7%)であった。
中学生は約40%と小学生の二倍であり,青年前期の指導が難かしく,失敗しやすいことをしめしている。中学生になって問題行動が発生した時は,青年前期であることを考えると,少年非行の専門家に相談することが効果的であろう。
3. 初発問題行動としての怠学について,年代別に発生率の多い順にあげると,①.中学生(44.8%)②.小学校低学年(25.8%)③.小学校高学年(14.7%)③.中学卒業後(14.7%)であった。
怠学の約70%は中学生と小学校低学年に発生している。このことはこの年代が学校生活への適応の大切な時期であるので,特段に家庭と学校の緊密な連絡の必要なことをしめしている。
4. 怠学した少年について,中学になって発生した少年よりも,小学校低学年頃から発生している少年は,問題のある親に育てられ,怠学すると家でぶらぶらしており,能力的には普通以上の者が多く,その後になって施設へ収容される少年が多い。なお,その後の窃盗発生率は80%と多かった。
5. 初発問題行動としての窃盗について,年代別に発生率の多い順にあげると,①.中学生(40.6%)②.小学校高学年(21.9%)③.小学校低学年(20.3%)④.就学前(10.7%)⑤.中学卒業後(6.3%)であった。
中学生の窃盗の大部分は遊び型非行といわれているものであるが,非行少年になる率が高いことをしめしているものであり,注意すべきであろう。
6. 窃盗した少年について,中学生になって発生させた少年よりも,幼少期に発生した少年は,親のしつけが不適切で,小学校の学業成績の悪い少年が多かった。なお,窃盗の再犯率は100%である。
7. 怠学と窃盗の背景としては,幼少期窃盗した少年は,怠学少年より欠損家庭に育っている少年が多く,中学生になって窃盗した少年は,怠学少年より問題のある親に育てられた少年が多かった。即ち,怠学した少年よりも,窃盗した少年は幼少期においても,中学生においても親の影響が大きいといえる。
1.外国人女性の治療にあたり,行動療法的考え方を取り入れた結果,非常に効果が認められ,言語的ハンディキャップを克服し,サイコセラピーの可能性を立証した。
2.多彩な症状を示す拘禁反応は,複雑な問題をかかえており,不安感が強いなど,特殊な個人的要因を有しているものと思われる。
3.女性の精神疾患者においてはその輿奮反応は特に月経直前に著明に現われる。
4.女性の場合,拘禁反応の治療にあたっては,薬物療法よりサイコセラピーに有用性を認める。
5.心因性無言症はその発声過程に,心理機制の変化が理解できる。故に細かい観察によって患者の心理を了解する必要がある。
6.治療にあたっては,いわゆる正の強化が効果的であるが,矯正施設では治療者間に甘やかしすぎるとの批判がでることもあり,職員の行動療法的理解への配慮が必要である。
7.女性病棟における個人療法には常に他患への配慮が必要であり,矯正施設では特にこの感が強い。
8.治療上,家族とのかゝわりは非常に重要で,いわゆる家族ぐるみの治療が効果的である。
9.適切な早期治療によって,症状の固着化,パターン化を防ぐことができる。
(本論文の一部は第27回矯正医学会総会において発表した。なお,本例は精神生理的側面からSkin potential activityによるorienting reflex の habituationを観察してSPAによるBiofeed backを行ったが,これについては稿を改める。)