日本ベンチャー学会誌
Online ISSN : 2433-8338
Print ISSN : 1883-4949
最新号
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招待論文
  • ―有田焼陶磁器産地の事例を中心として―
    山田 幸三
    原稿種別: 招待論文
    専門分野: 経営学
    2025 年 45 巻 p. 3-18
    発行日: 2025/03/15
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー
    本稿では、伝統工芸品産地の自己革新と企業家活動の関係について、有田焼陶磁器産地の事例を基に分析する。有田では、明治維新で藩の陶磁器専売制度が崩壊すると、江戸時代の系譜を継ぐ中枢の事業者が先駆的な組織を設立して伝統技術や技能で磁器を製作し、企業家活動によって内発的に産地を再生した。バブル経済が崩壊した後、辺境の事業者は伝統様式に基づくデザインコンセプトに囚われず、外部の情報や知識を活用した新商品開発を進めた。競争の不文律が触媒となって、ファミリービジネスが主流の辺境と中枢の事業者の企業家活動による新機軸の商品開発と伝統様式を活かした磁器製作との間に循環的関係が成り立つことが産地の存続につながる。
研究論文
  • ―シャプラニールの事例研究―
    前田 佐保
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 経営学
    2025 年 45 巻 p. 19-33
    発行日: 2025/03/15
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー
    NPOにおいて事業承継は喫緊の課題である。なかでも創設者の影響力が世代交代の阻害要因とされる創設者シンドロームの克服は重要課題であるが、それに対する理事会の有効性は証明されていない。そもそも、事業承継研究は、主に理事会を責任主体と想定し、実際に事業承継を動かす主体が何であるのか不問に付している。一方、ガバナンス研究では近年、多元的ガバナンス・システムの概念が提唱されているが、経験的知見が不足している。そこで本研究では、国際協力NPOのシャプラニール=市民による海外協力の会の単一事例研究を通して、事業承継を複数世代にわたって成功裡に実現させる多元的ガバナンス・システムを構成する主体や機能・メカニズムについて検討した。その結果、それは、理事会を超えた多様な主体が4つの役割(監督、支援、連携、代表)を担う「信頼に基づく統制および協働」のシステムであり、そのシステムのもと、多元的なプリンシパル関係と重層的な人材循環オープンシステム、集合的協働、多様なステークホルダーによる多元的ボイスが機能することによって複数世代にわたる事業承継が実現していることが明らかになった。
  • ―多様なCVC形態の比較分析―
    吉田 晃宗, 牧 兼充
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 経営学
    2025 年 45 巻 p. 35-50
    発行日: 2025/03/15
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー
    本稿では、日本のスタートアップ約3,000社を対象に、コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)プログラムの形態の違いが、投資先企業の成長にどのような影響を与えるかを分析した。事業会社本体やCVCの直接投資がIPOの実現にポジティブな影響を与えるという先行研究に沿う結果が確認された。一方、二人組合ファンド形態からの投資がIPOの確率を高め、IPOまでの期間を短縮するというエビデンスは得られなかった。
  • ―Global Entrepreneurship Monitorによるパネルデータ分析―
    吉田 日向子, 大江 秋津
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 経営学
    2025 年 45 巻 p. 51-64
    発行日: 2025/03/15
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究はどのような施策が国家のアントレプレナーシップを高めるのかという研究課題を持つ。研究目的は、言語の多様性と移民の流入が受け入れ国家のアントレプレナーシップに与える影響を実証することである。データはGlobal Entrepreneurship Monitorを使用した。2015年から2019年の5年間、26か国130件のデータにより、変量効果モデルによる重回帰分析を行った。その結果、移民を積極的に受け入れている国は、アントレプレナーシップ意思に負の影響を与えていた。しかし、移民の言語の多様性が高い場合はこの関係が逆転し、移民が増加するほど受け入れ国民のアントレプレナーシップ意思が高くなることも実証した。本研究は移民を受け入れる国のアントレプレナーシップ意思向上のメカニズムを実証し、アントレプレナーシップ研究に理論的貢献をするだけでなく、アントレプレナーシップ政策と移民政策に実務的貢献をする。
研究ノート
書評
特集
  • 徳田 賢二
    原稿種別: 特集
    専門分野: 経営学
    2025 年 45 巻 p. 79-87
    発行日: 2025/03/15
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー
    「シン!地域創発エコシステム」は、新潟県を中心に、地域資源を活用した持続可能な成長モデルを構築する取り組みである。その共有されたビジョン、ミッション、ゴールを提示する。1) ビジョンは、「地域特有の資源や強みを活かし、オープンイノベーションによる課題解決と新産業創出を通じて、全国に展開可能なモデルを確立する」ことである。2) ミッションとして、「産学官の連携により「ヒト(人材)」「モノ(技術)」「カネ(資金)」「教育」「場」「機会」を統合し、地域のエコシステムを強化する。」3) ゴールとして、「若手起業家の育成、伝統技術と先端技術の融合、地域金融機関との資金循環モデルの確立、教育プログラムの進化を目指す。」本エコシステムは、地域活動を「点」から「面」へと広げ、知識創造の循環を促進し、全国・国際展開を視野に入れた発展を目指している。これにより、地域経済の持続可能な成長とイノベーションの促進を実現するものである。
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