わが国の起業活動は他の先進国と比べて低迷しており、その大きな要因の1つが起業態度にある。 第15回日本ベンチャー学会全国大会(2012年)でも報告したように、日本では起業態度を有する人の割合が圧倒的に少ない。つまり、グローバル・アントレプレナーシップ・モニター(Global Entrepreneurship Monitor: GEM)のモデルにおける起業家予備軍(Potential Entrepreneur)が少ないことが、起業活動に従事している人の少なさにつながっている。しかし、日本の場合、起業家予備軍からの起業率を見ると、多くの先進国を上回り、米国並みの水準になることもあわせて報告した。本稿では、他の先進国の中での日本の特徴が、国内の異なる地域間でどの程度まで当てはまるのかを検証した。つまり、GEMのデータによると、日本国内でも、地方圏は大都市圏に比べて起業活動は低迷している。そして、活動水準の違いは態度水準の違いに反映されている。ここまでは、世界の中の日本の特徴が、日本の地域間の特徴になって表れているが、起業家予備軍からの起業率を見ると、地域間に違いはない。以上から、起業態度に働きかける方法は、日本においては地域を問わず有効である一方で、地域間の起業活動の違いは起業態度だけでは十分に説明できないことも明らかになった。
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