環境情報科学
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53 巻, 3 号
「環境情報科学」53巻3号
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表紙
目次
特集:人と地球のウェルビーイング
  • 前野 隆司, 荒金 恵太, 高山 範理, 髙橋 若菜
    2024 年 53 巻 3 号 p. 1-7
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/01/31
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    機関誌「環境情報科学」において,「人と地球のウェルビーイング」をテーマとした特集の編集に取り組むにあたり,日本におけるウェルビーイング研究・幸福学研究の第一人者である慶應義塾大学教授の前野隆司氏に,インタビューを行った。「『SDGsを束ねるゴールはグローバル・ウェルビーイングだ』という発想のもとに,もし人類がこれを達成できたら,平和で,健康で,貧困がなくて,環境問題も解決できるので,総合的な問題解決に向かうはず」という見解が示された。また,「視野を広くして,利他的になって,そしてみんなの一つの理念が浸透する世界をつくることが,個人の幸せのためにも人類のためにもいいし,地球のためにもいい」という考え方や,そのような考え方のエビデンスとなるデータを示すウェルビーイング教育の重要性が強調された。
  • 広井 良典
    2024 年 53 巻 3 号 p. 8-14
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル 認証あり
    ここでは Well-being をめぐる国内外の政策展開をまず概観し,日本においては地方自治体が幸福度指標の策定に先導的な役割を果たしてきた流れを確認する。続いて Well-being をめぐる公共政策のあり方を考える基本的視点として,「ウェルビーイング / 幸福の重層構造」という枠組みを提示し,これを手がかりに Well-being に関する公的部門と民間部門の役割分担を考察する。最後に Well-beingと格差・貧困という公共政策上の重要テーマを取り上げ,特に日本において課題となる,「人生前半の社会保障」の充実強化を通じた,個人が人生において「共通のスタートライン」に立てる社会システムの実現について議論を行う。
  • 渡邊 淳司
    2024 年 53 巻 3 号 p. 15-21
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル 認証あり
    筆者は,“ わたしたち ” という視点から,多様な人々がウェルビーイング(身体・精神・人とのつながりなど,さまざまな側面を含む人それぞれのよく生きるあり方やよい状態)をつくりあうための方法論や,探求のためのツール開発を行ってきた。本稿では,“ わたしたち ” の範囲を,身近な人や不特定多数を含む社会に限らず,自然環境や地球の生態系まで含め,自身をその一部としてとらえる視点から,どのようにウェルビーイングを自分個人から地球まで広げて実現することができるのか,個人のウェルビーイングと社会や地球環境の持続可能性が併存する「サステナブル・ウェルビーイング」実現のためのコンピテンシー(資質/能力),およびその獲得に資するテクノロジーについて考察する。
  • 森林空間の利用のススメ
    高山 範理
    2024 年 53 巻 3 号 p. 22-28
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/01/31
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    本稿では,森林空間と私たちの Well-being(生理指標,免疫活性,気分等指標,幸福感,自己肯定感等,QOL 等)との関係について議論した。これまでの科学的研究を整理し,森林空間での滞在が血圧や自律神経系等の生理的指標,免疫系指標,気分・回復感・感情状態等の心理的な指標に良い影響を与え,へドニア的な Well-being が向上することが報告された。一方,エウダイモニア的な Well-beingについては,短期間の森林滞在での変化は難しいが,日常的な森林空間との関わり方によって効果が得られる可能性があることが示唆された。また,最後に国や自治体が取り組みを進める Forest Style および「森林サービス産業」といった Well-being に関わる森林側からの提案について紹介した。
  • 地球のウェルビーイングと人々のウェルビーイング達成に向けて
    小熊 祐子
    2024 年 53 巻 3 号 p. 29-33
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/01/31
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    身体活動促進と SDGs 達成を関連づけたシステムズアプローチの重要性について論じた。慶應スポーツ SDGs センターでは,スポーツを通じた地球と人々のウェルビーイング共存を目指す活動が進行中である。世界保健機関の「身体活動に関する世界行動計画 2018?2030(GAPPA)」を基に,身体活動の促進が健康,経済,社会,環境へ多様な効果をもたらすとされる。日本国内では「健康日本 21(第三次)」や地域介入事例「ふじさわプラス・テン」などが推進され,身体的・精神的・社会的健康を統合的に改善する。これらの取り組みが,持続可能な社会の構築に向けて貢献することが期待される。
  • 大倉 紀彰
    2024 年 53 巻 3 号 p. 34-40
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/01/31
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    2024 年 5 月に閣議決定された第 6 次環境基本計画は,「ウェルビーイング/高い生活の質」を最上位の目的に置いた。それは,気候危機をはじめとする環境危機,経済の長期停滞といった環境,経済,社会の諸問題を同時に解決するため,従来の延長線上ではない「変え方を変える」視点(ストック,長期的視点,本質的ニーズ等の重視)から,国民一人一人の真の豊かさを実現することを経済社会システムの変革の座標軸とすることを提案したものである。また,本計画は,この「ウェルビーイング/高い生活の質」をもたらす「新たな成長」を導くことを環境政策の役割とし,そのための鍵の一つとして,政府,市場,国民(市民社会,地域コミュニティ)の共進化の重要性を掲げた。
  • エコフェミニズムの目指す社会
    萩原 なつ子
    2024 年 53 巻 3 号 p. 41-47
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル 認証あり
    心身ともに「最高水準の健康に恵まれること」を保障し,社会的,経済的,環境的な状況によって決定されるウェルビーイングを考える上で,基本的人権としてのジェンダー平等は前提条件である。エコフェミニズムはジェンダー平等と環境問題解決を中心に沿えた平和思想である。本稿では,人新世・SDGs 時代における〈エコフェミニズム〉の意義を,ウェルビーイングの視点も踏まえて再考する。
  • 髙橋 若菜, ウィッケンバーグ ビョルン, キッシュ バーナデット
    2024 年 53 巻 3 号 p. 48-54
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/01/31
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    本論文は,スウェーデンにおいて,sustainabilityとwell-beingの統合がどのように進められているかを考察することを目的としている。この目的に即して,まずsustainabilityとwell-beingに関連する先行研究をレビューし,両者の統合に重要とされる概念として,統合的ビジョン,社会的正義,自由の倫理,自然の価値の4点を確認する。続いて,スウェーデンの国レベルでの環境法典や国家戦略,地方自治体レベルではマルメ市の環境プログラムを取り上げ,これら4点がいかに組み込まれているのかを分析する。最後に,マルメ市のプロジェクトを事例考察し,持続可能でwell-beingが高い社会の実現に,4点がいかに寄与しているかを考察する。
  • 鶴見 哲也
    2024 年 53 巻 3 号 p. 55-62
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/01/31
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    経済発展が主観的ウェルビーイングに及ぼした影響は多岐にわたる。本稿では主観的ウェルビーイングの主たる決定要因を概観し,持続可能な発展と主観的ウェルビーイング増大を両立していくための方策を示す。特に今後の政策目標として GDP を補完する指標を検討する「Beyond GDP」の議論の学術的展望を示す。具体的には将来の環境制約の中で高い主観的ウェルビーイングを実現していくための方策そして経済成長を担保しつつ主観的ウェルビーイングを向上させていくための方策を提示する。
  • 南雲 岳彦
    2024 年 53 巻 3 号 p. 63-69
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/01/31
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    地域幸福度(Well-Being)指標は,デジタル田園都市国家構想下で利用されている公式指標である。この指標は,「スマートシティを導入すると,どのように市民の暮らしやすさが向上し,どのように市民とその家族や地域コミュニティの幸福感が高まるのか」が分からないという市民の生活実感に応えることを主眼に生まれたもので,市民の幸福度や生活満足を測定し,またそれらを構成する 24 の因子を主観と客観の両面から説明する構成となっている。現在までに,総合計画やまち・ひと・しごと創生総合戦略策定への利用やウェルビーイング予算編成等の先行事例が生まれており,今後,さらに多くの自治体による積極的な活用が期待されている。
  • 荒金 恵太, 高山 範理, 髙橋 若菜, 薗 巳晴, 石井 雅章
    2024 年 53 巻 3 号 p. 70-74
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/01/31
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連載 環境政策の最前線
研究論文
  • 和歌山県の橋梁を対象として
    中尾 彰文, 宮本 慎一朗, 山本 祐吾
    2024 年 53 巻 3 号 p. 80-86
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,和歌山県が管理する橋梁を対象にして,橋梁,経過年数,健全度を踏まえた更新需要をもとに木造利用ポテンシャルを推計した。また,更新期を迎えた既設橋梁を,構造用集成材を主要部材として用いた木橋に架け替えたときのGHG削減効果を評価した。その結果,1)対象橋梁を木橋に架け替えることで,中長期的な木材需要の創出が可能であること,2)具体的には,橋長30m未満の橋梁を対象とした架け替えにより,2030~2050年における和歌山県の累積木材需要量は2020年時点の素材生産量から17%拡大すること,3)橋梁の主要な部分に木材を利用することで,従来建設資材で構成される橋梁への架替よりもGHG排出量を約26%削減できること,が明らかになった。
  • マザーレイクゴールズ(MLGs)を事例として
    平山 奈央子, 法理 樹里, 佐藤 祐一
    2024 年 53 巻 3 号 p. 87-93
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー
    琵琶湖流域ではマザーレイクゴールズ(以下,MLGs)に基づき,流域内の持続可能な社会を目指す多様な市民活動が展開されている。本研究では琵琶湖や居住地域への愛着がMLGsを目指す活動に与える影響を明らかにすることを目的として滋賀県民を対象としたアンケート調査を実施し,得られた回答を用いて共分散構造分析を行った。その結果,愛着はMLGsを目指す活動意欲に対して直接的に影響を与えるが,活動実態に対しては流域環境保全への関心を介して間接的に影響を与えることが明らかとなった。
  • 平原 俊
    2024 年 53 巻 3 号 p. 94-100
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー
    環境NPOが環境保全にかかわる重要なステークホルダーであると認識されている一方で,「森林・里山保全」や「廃棄物削減」などの各分野において活動する団体が国内にどれだけ存在するのか参照可能な情報源はなく,今後の発展を考えるうえで望ましいとはいえない状況にある。そこで本研究では,NPO法人の定款に記載されている「目的」について計量テキスト分析を行うことで,国内の環境NPOの活動分野の分布について推計を試みた。分析の結果,環境保全を活動目的として記載している団体は26分野にわたり7,708法人存在しており,さらに,設立時期により活動分野の傾向に変化が生じていることが明らかとなった。
報告 環境情報科学センター賞
奥付
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