2020 年 29 巻 3 号 p. 181-183
症例は7年前に急性大動脈解離で上行大動脈置換術を受けた58歳男性,血液検査でHb 6.9 g/dL, LDH 2684 IU/L, T-Bil 6.9 mg/dLと黄疸と伴った溶血性貧血と診断された.CTで弓部大動脈の解離が残存し,遠隔期に偽腔拡大することで,術直後から認められていた人工血管の屈曲が増していた.再手術はオープンステントグラフトを内挿して弓部全置換術を行い,人工血管の屈曲を解除した.術後すみやかに溶血は消失した.屈曲の原因として不適切なグラフト長に,遠隔期に末梢側の残存解離腔の拡大が推測された.