2020 年 29 巻 3 号 p. 157-160
遺残坐骨動脈は,胎生期に下肢を灌流していた坐骨動脈が遺残する稀な先天血管異常であり,腹部大動脈瘤との合併は極めて稀である.症例は65歳男性で,前医にて腹部大動脈瘤を指摘され当院受診した.造影CTにて最大短径53 mmの腹部大動脈瘤,完全型左遺残坐骨動脈を認めた.また,左外腸骨動脈および大腿動脈は低形成であった.将来的に瘤化,閉塞のおそれのある遺残坐骨動脈も治療する方針とし,手術は腹部大動脈瘤人工血管置換術,遺残坐骨動脈結紮,左大腿動脈–膝窩動脈バイパス術を施行した.術後造影CTにて左遺残坐骨動脈の完全な血栓化を確認した.