抄録
1990年10月より1994年2月までに当センターに心・呼吸停止状態で搬送された患者151例のうち,生存退室した12例の心拍再開後の心筋障害について検討した。心筋障害の評価は標準12誘導心電図,断層心エコー図およびSwan-Ganzカテーテルによる血行動態パラメーターにて行った。来院時心電図は心室細動5例,心静止7例で,直流除細動を7例(58%)に行った。心拍再開直後にはST上昇を8例,異常Q波を1例に認めたが,時間経過とともに異常Q波や陰性T波を認める症例が増加した。断層心エコー図では左室の局所壁運動低下を8例,び漫性壁運動低下を1例に認めたが,そのうち2例は時間経過とともに改善した。血行動態的には,心肺蘇生に30分以上要した症例において左室ポンプ機能の低下を全症例に認めた。以上より,心肺蘇生後には心筋障害を認める頻度が高いため,心機能を評価しながら注意深く全身管理を行う必要があると考えられた。