日本集中治療医学会雑誌
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心原性ショックに対する経皮的人工心肺装置の有用性とその問題点
安田 聡野々木 宏後藤 葉一宮崎 俊一伊藤 彰大黒 哲笹子 佳門土師 一夫
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1995 年 2 巻 3 号 p. 101-106

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抄録
[目的]経皮的人工心肺装置(Percutaneous cardiopulmonary support system: PCPS)の臨床的有用性とその問題点を明らかにすること。
[対象]'90年1月から'93年4月までに施行されたPCPS21例のうち,待機的に使用された5例を除いた16例(男11例,女5例,平均年齢61歳:心原性ショック10例,blow-out型心破裂3例,致死的心室性不整脈3例)を対象とした。
[結果]基礎疾患は14例(88%)が虚血性心疾患で,拡張型心筋症,弁膜症が各々1例であった。PCPSから離脱し救命できたのは4例(25%:心原性ショック3例,心室細動1例)であった。心原性ショック3例の基礎疾患は虚血性心疾患で,全例PCPS下の血行再建により救命し得た。5例(31%)では,大動脈内バルーンポンプ法が無効で,PCPSが血行動態の維持に有用であった。蘇生術に伴う縦隔内出血を2例で合併し,1例が出血性ショックのために死亡した。下肢血管損傷の合併例はなかった。
[総括]PCPSによる心筋保護効果は不十分で,ショックが遷延した場合には,不可逆性の心筋障害をきたして救命が困難であった。そのため特に虚血例では,PCPSの開始とともに早期の血行再建が必要であると考えられた。また,PCPSに必要な抗凝固療法に伴い,重篤な出血性合併症を発生することがあり,蘇生術後の症例では注意が必要であると思われた。
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