本稿では,ストックによる持続可能性評価という統一的枠組みにより,植田和弘教授の業績の一部を振り返りながら,関連する分野を概観する.1980年前後に提唱された社会金属学は,金属ストックの利用と廃棄が乖離していることに着目し,利用と廃棄の統合を目指した.このコンセプトはその後,産業エコロジー,廃棄物とリサイクルの経済学,持続可能な発展の理論という,今日の環境経済学に欠かせない3つの分野の発展の伏線となったと位置付けられる.また,社会金属学と経済学との統合に向けて,マテリアルフローとマテリアルバランスという2点で折り合いをつける試みが行われた.さらに近年,持続可能な発展の指標として使われている,様々な資本ストックの価値を集計した包括的富について,課題を展望する.
本稿では,自然資本と人工資本の代替不可能性を論点として提起されたクリティカル自然資本(Critical Natural Capital;以下CNC)概念をめぐるこれまでの議論と現状を概観し,CNC概念の到達点と課題を明らかにする.とりわけ,P. エキンズによって構築されたCNCを特定するための枠組みに注目し,CNC概念を深める上で検討すべき課題を提示する.本稿の分析によって,Ekins et al. (2003)の枠組みでは代替可能性や損失の不可逆性,損失の甚大性という概念の規定の仕方によってその解釈には大きな幅が生じることが明らかとなった.今後,技術革新の可能性や割引因子とも関連づけながら,特定条件を精緻化していくことが求められる.
「持続可能な発展の理論」のセッションにおいて,持続可能性の理論がどのように実務に反映されているのかについて「まちづくり」を中心テーマとして報告を行った.本稿では,このセッションの報告内容を基礎として持続可能なまちづくりを構築するためのツールの1つである環境マネジメントシステムをとりあげて,検討を行いたい.まず,国際的な動向として環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001の改訂を概観したのちに,持続可能なまちづくりと地方自治の本旨との関連性をふまえ,地域社会の構成員である自治体,事業者,市民の各側面から環境マネジメントシステムの運用についての検討を行う.以上より,今後の研究展開について議論する.
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