環境経済・政策研究
Online ISSN : 2188-2495
Print ISSN : 1882-3742
ISSN-L : 1882-3742
2 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
Articles
  • 明日香 壽川
    2009 年2 巻1 号 p. 1-15
    発行日: 2009/01/29
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    環境省の自主参加型国内排出量取引制度,経済産業省の中小企業と大企業とのクレジット取引制度,日本政府による京都メカニズム・クレジット取得制度,排出量取引の国内統合市場の試行的実施,オフセット・クレジット制度などのカーボン・クレジット活用策に関して,政策決定プロセス,割当方法,効果,費用効率性,京都目標達成との関係,などの点から比較評価およびその発展経路を分析した.その結果,1) 国内排出量取引制度のインフラは確実に構築されつつある,2) 国内排出量取引とクレジットの海外調達とでは,大きな費用効率性の差は存在しない可能性がある,3) 排出量取引制度の制度設計の内容が日本の目標達成に影響する,4) 副次的な効果なども考慮すれば排出量取引制度導入などによる国内排出削減支援は拡充すべきである,などが明らかになった.

  • 岡 敏弘, 畔上 泰尚, 山口 光恒
    2009 年2 巻1 号 p. 16-27
    発行日: 2009/01/29
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    排出権取引市U度がその目的である効率的な排出削減を達成するための条件という観点からEUETSにおける排出権の初期配分方法を吟味する.条件とは,直接排出削減のみならず製品消費の減退を通じた削減も含めて限界排出削減費用が均等化することである.排出者の生産物の市場について,完全競争の場合,寡占市場でクールノー均衡の場合,寡占市場でフル・コスト価格づけの場合の3つの場合について,(i)排出者のいかなる行動からも独立の許可排出量が配分される場合,(ii)現在の生産量に比例した許可排出量が配分される場合,(iii)現在の排出量に比例した許可排出量が配分される場合,(iv)過去の生産量に比例した許可排出量が配分される場合,(v)過去の排出量に比例した許可排出量が配分される場合が,諸活動の排出水準に与える効果を特定化する.その結果に照らして,EUETSの現実の配分方法がもつ意味を明らかにする.過去または現在の生産量に比例した量が配分される少数の部門の原単位削減活動の限界排出削減費用だけが排出権価格に等しくなり,その他の活動の限界排出削減費用はきわめて低い水準にとどまり,かつ,互いに等しくならないことが明らかになる.そうした配分方法は,域内産業の競争力を確保し,かつ,初期無償配分の不公平さを避けるために,効率性をあきらめたものだと解釈される.

  • 藤田 敏之
    2009 年2 巻1 号 p. 28-38
    発行日: 2009/01/29
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    越境汚染問題に対処するためのマッチング協定の有効性を検討する.協定の第1段階において各国は話し合いによってマッチング率を定め,第2段階では汚染の基準削減量を非協力的に定める.通常の環境協定とは異なり,国は協定で定められた量の削減をそのまま課されるのではなく,自国の基準削減量に加え,他のすべての国の基準削減量の合計に第1段階で定めたマッチング率を乗じた量の削減を命じられる.プレイヤーを対称的な国家として関数形を特定化したマッチング協定のゲームモデルの分析を行った結果,効率的な結果を導く自己拘束的かつ衡平な協定が存在することが明らかになった.これはマッチング協定の有効性を示している.

  • 山本 雅資
    2009 年2 巻1 号 p. 39-50
    発行日: 2009/01/29
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    循環型社会の構築を推進するには,かつて動脈経済がそうであったように静脈物流網の整備が重要な意味をもつ.そこで本稿では比較的データの豊富な一般廃棄物処理について,その収集運搬の費用構造に注目して実証分析を行った.収集運搬費用と中間処理等の費用を明示的に分けて分析したことが本稿の特徴となっている.その結果,収集運搬とそれ以外の費用は規模の経済性という観点からは大きく異なる構造をもつことが確認された.また,収集運搬について,その運営形態が費用にもたらす分析についても検討したところ,民間委託による効果はあるものの民間企業1社による独占は必ずしも費用を低下させないという結果を得た.

  • 錦 真理
    2009 年2 巻1 号 p. 51-63
    発行日: 2009/01/29
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    クリーン開発メカニズムは,GHG削減は効果的に行われている一方で,途上国の持続可能な発展には十分に寄与していないという批判がある.そのため本稿では,国際レベルにおけるCDMルール設定の過程に着眼し,①地域コミュニティの意見がどのように扱われたか,②京都議定書12条の「持続可能な発展」の概念がルール設定過程でどのように扱われてきたかを,パートナーシップの側面から分析した.分析の結果として,(i)ルール設定ではGHG削減に重点が置かれる一方で,持続可能性という視点は議論の埒外に置かれていたこと,(ii)手続き上は多様な参加の機会を確保しているが,実際には一部の政府や私企業の参加に限られていることが明らかになった.

  • 渡辺 聡
    2009 年2 巻1 号 p. 64-82
    発行日: 2009/01/29
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    温暖化対策としてのエネルギー節約新技術の開発を含めた環境技術革新の誘発に関する経済学的な研究は,理論的研究の枠組みにおいて検討されることが多いものの,実証的な研究はまだ数少ない.本研究では,誘発的技術革新仮説を理論的基礎としたPopp (2002) の実証研究の枠組みに基づき,日本における1974-2005年のエネルギー節約のための新技術に関する特許出願件数に対する原油価格の変化の影響を分析した.分析にあたり,技術を省エネルギーおよび新エネルギーに分類し,誘発技術革新における要素代替と要素節約のそれぞれの効果を分析した.

    実証分析の結果から,省エネルギー技術では誘発技術革新効果が見られたのに対し,新エネルギー技術では原油価格以外の変数について正かつ有意な影響があり,省エネルギー技術の開発に比べるとより過去に出願された特許の蓄積やR&D支出に依存したことを意味している.本研究における分析結果から得られた含意としては,原油価格の上昇はエネルギー節約のための技術革新を促進しうるものの,より代替的な技術の開発にはその分野での研究開発を進めるための政策が必要である.

feedback
Top