アンサンブル
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14 巻, 3 号
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特集「京」
連載
  • (16) 凝縮系の第一原理計算の方法論について—
    高橋 英明
    2012 年14 巻3 号 p. 130-133
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル フリー
    前号で紹介したエネルギー表示の理論を、電子の密度汎関数理論(DFT)をベースとするQM/MM法と結合する方法(QM/MM-ER)を解説する。QM/MM-ER法により、効率良く正確に凝縮系の化学反応の自由エネルギーを計算することが可能となる。前号で述べたとおり、エネルギー表示の理論を含む溶液論では溶質—溶媒間の相互作用が2体的であることを前提としているので、QM/MM系のような多体の相互作用を含む系を扱うには何らかの工夫が必要である。本方法の要諦は、QM 系の溶質の電子密度がある空間分布n(r)に固定された中間状態を経由することにある。これによって、溶質の溶媒和自由エネルギーを2体的な相互作用による寄与と溶質の電子分極による多体的な寄与とに分割する。2体的な寄与については標準的なエネルギー表示の理論が適用可能であり、多体の寄与もエネルギー表示の理論の枠組みで計算することが可能である。
  • 志賀 基之
    2012 年14 巻3 号 p. 134-137
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル フリー
    近年の大型並列計算機の発展とともに分子シミュレーションと電子状態計算を統合した第一原理シミュレーションが普及し,国際標準になりつつある.これを用いて,従来では扱えなかった複雑な化学反応動力学や,光吸収や電磁場応答のような電子状態由来の物性などを対象に,さまざまな応用研究が広まっている.本稿では,電子状態理論の基礎をなすHartree-Fock 法について,分子シミュレーションとの接点を少し意識しながら再考したい.
最近の研究から
  • 古沢 浩
    2012 年14 巻3 号 p. 138-144
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル フリー
    直径が1 µm 以下のナノバブルは,マイクロバブルと呼ばれる直径が10 µm 前後の微小気泡と異なり,浮上や液中消滅することなく長時間にわたって液中で安定分散することが,最近の研究により明らかとなった.では,このナノバブルは,従来のコロイド科学に何か新しい題材を提供する対象なのだろうか?本稿では,ナノバブル系のユニークな電気的性質を,電荷符号反転現象という強結合クーロン系固有の現象に焦点を当てながら紹介する.
  • 鷹野 優
    2012 年14 巻3 号 p. 145-149
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル フリー
    キュバン型[4Fe-4S]鉄硫黄クラスターは生体内で電子移動,酵素反応等を行う補欠分子である.このクラスターには従来各々の鉄イオンにCys 残基が配位しているが,近年構造が明らかとなった暗所作動型プロトクロロフィリド還元酵素(DPOR)中には,四つの鉄イオンのうち一つにCys でなくAsp が配位している [4Fe-4S]クラスター(NB クラスター)が存在していた.Asp をCys に置換した変異体ではこの酵素が機能を示さないことから, Asp の配位が鉄硫黄クラスターの機能に必須であると考えられる.本研究では, [4Fe-4S] クラスターの電子構造と機能に対するCysからAspへの変換の影響を密度汎関数法により調べた.その結果,親水性の強い環境になるとNB クラスターが従来の[4Fe-4S]クラスターより電子を渡しやすくなることが明らかとなった.またDPOR の結晶構造から,NB クラスターは水分子や周りのアミノ酸と水素結合を多く形成しており親水性の高い環境中にあった.このことから[4Fe-4S]クラスターの配位子がCys からAsp へと変わることでプロトクロロフィリドの還元に必要な電子を渡しやすくしていると考えられる.
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