日本企業の東アジアにおける海外生産の拡大は著しい。しかし,それに伴い技術移転がどのように起きたかは明確ではない。本研究は,カラーテレビとカメラを題材に日本企業の海外生産に伴う技術移転を実証的に分析した。どのような順序で技術が移転したか,そして東アジアに対し,急速に技術移転が起きた理由は何かを探った。その結果、第一に,技術革新競争を背景として,技術進歩が技術移転に影響を及ぼすことを明らかにした。生産技術の進歩が海外生産の拡大と並行して起きていることを示し,それらの関連を指摘した。また,IC生産,プラスチックモルド技術の発達などの技術進歩は技術移転を促進することを示した。第二に,海外生産に伴う技術移転の進捗度の測定法を考案した。これは主要部品の調達状況から技術移転度を推定するものである。その方法により,2つの製品間の技術移転度の違い,及び部品間の技術移転度の違いを明らかにした。技術移転の態様を,企業内と企業外に分けてみると,ほとんどの技術移転が企業内で進んでおり,企業外への移転はほとんどみられない。第三に,これらの業種では,日系部品企業のネットワークを通じて部品調達が行われている。これは東アジア諸国にとっては,部品生産技術を移転し,自国資本によって国産化することが困難なことを示している。
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