結節性硬化症は全身の過誤腫を特徴とする常染色体優性遺伝性の疾患で,近年その原因遺伝子
TSC1,TSC2が染色体の9 番,16 番上に同定された.本症の好発部位は,中枢神経系,皮膚および腎であり,腎病変は本症の80%以上に認められるが,大部分は良性の血管筋脂肪腫 (AML) あるいは腎嚢腫で,腎癌の発症はまれである.また,現時点では,本症と腎癌の関係については不明な点が多い.今回我々は腎癌を伴った結節性硬化症の一例を経験した.症例は,18 歳の女性で,典型的な結節性硬化症の臨床症状を呈し,16 番の染色体上にpoint mutation が確認されたTSC2 の孤発例である.腎症状は血尿と腹痛のみで,腎エコーやCT 検査でも多発性の AML と血腫の所見のみで,腎癌の所見は認められなかった.突然の腎出血のために,腎摘出術が施行され,摘出腎の組織検査の結果,AML に合併する多発性の腎癌が判明した.腎癌は病理組織学的にはclear cell carcinoma で,免疫組織化学的にはAML 部で認められたHMB-45の発現が陰性で,cytokeratin, anti-human epithelial membrane antigenの発現が認められた.
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