地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
112 巻, 5 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
論説
  • 石井 英一, 安江 健一, 田中 竹延, 津久井 朗太, 松尾 公一, 杉山 和稔, 松尾 重明
    2006 年112 巻5 号 p. 301-314
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/14
    ジャーナル フリー
    北海道北部,幌延地域における新第三紀堆積岩分布域において,地表割れ目踏査,ボーリング調査(コア観察・EMI検層・比抵抗検層・水質分析),反射法地震探査,およびAMT探査を実施し,当域に分布する大曲断層の位置,連続性,および水理特性について検討した.その結果,以下のことが示された.(1)大曲断層はダメージゾーンを主体とした幅120 m程度の断層帯であり,その透水性は高い.(2)研究所設置地区近辺における大曲断層帯の三次元分布が明らかとなり,地表部ではover-stepし,地下では収斂する形態をなす.(3)「塩水系」と「淡水系」の2種類の地層水が存在し,顕著な岩相変化を示さない堆積岩においては,電磁探査を用いた調査が,断層帯の位置,連続性,および水理特性などを検討する際に有効である.
  • 秋山 美奈子, 武藤 鉄司
    2006 年112 巻5 号 p. 315-330
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/14
    ジャーナル フリー
    河川系複雑応答説は,河川系は1回の基準面低下に対してその下流域と上流域とが相互にフィードバックしあうように応答し,複数段の河岸段丘を生成すると述べている.この学説を小規模水路実験で検証した.水路下流部に堰を設け,平衡河川を実現させたあと堰を取り外すといった方法を用いたところ,下流域沖積河川系に関して次の知見を得た.(1)河川系が平衡状態におかれているときであっても,初期の段丘状地形(初期段丘)が生成しうる.(2)基準面低下はそれ以前に出現していた初期段丘の相対的高度を増幅させるように機能するだけである.(3)複数段の段丘を形成した複雑応答は河川系の自己組織的応答とみなせる.(4)本実験で観察された基準面低下後の自己組織的応答は河川系における河床物質の拡散過程として進行した.天然の小規模高勾配礫床河川系の下流域沖積区間でなら,この拡散的応答現象はきわめて短時間のうちに完了しうると予想される.
  • 小林 祐哉, 大塚 勉
    2006 年112 巻5 号 p. 331-348
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/14
    ジャーナル フリー
    根尾-和泉地域の美濃帯左門岳ユニットでは,近年の著者らの研究により,岩相・構造・年代・変形構造・弱変成作用の検討が行われ,構造形成過程が明らかにされた.しかし,その堆積環境は,砂岩の卓越する単調な岩相や強い変形のため不明であった.この研究では,まず高い頻度で発達する断層の出現位置と岩石の放散虫化石年代の変化を比較することによって,断層による層序の改変や重複の程度を検討した.その上で,堆積環境の検討のため,2つの断層に挟まれた整合な部分のみを用いて,堆積相の累重関係の検討を行った.その結果,砂岩優勢部では,17個の堆積相が認められ,それらは5個の堆積相組み合わせにまとめられる.堆積相組み合わせは,チャネル充填堆積物,ローブ状堆積物,ローブ縁辺部の堆積物,半遠洋~遠洋性堆積物を示す.砂岩優勢部の堆積環境は,ローブ状堆積物が卓越することから,海溝底に形成された海底扇状地が示唆される.
  • 中澤 努, 中島 礼, 植木 岳雪, 田辺 晋, 大嶋 秀明, 堀内 誠示
    2006 年112 巻5 号 p. 349-368
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/14
    ジャーナル フリー
    大宮台地の地下に分布する更新統下総層群木下層の形成過程について,コアの層相および産出する化石群集を基にシーケンス層序学的な検討を行った.大宮地域の木下層は,開析谷システムにより形成された下部とバリアー島システムによって形成された上部に分けられ,下部および上部のそれぞれに上方細粒化と上方粗粒化のセットからなる堆積相累重様式が認められる.花粉化石とテフロクロノロジーおよびMISカーブの対比に基づくと,下部はMIS6~5e前期,上部はMIS5e後期に対比され,下部の開析谷システムは低海面期堆積体および海進期堆積体,上部のバリアー島システムは高海面期堆積体と解釈される.
エラータ
口絵
feedback
Top