2024 年 33 巻 2 号 p. 73-77
胸部大動脈ステントグラフトは胸部大動脈疾患の治療体系を大きく変貌させた.治療対象は下行大動脈瘤のみならず,急性および慢性B型大動脈解離や大動脈損傷などが適応とされている.加えてその治療領域はさらに広がる方向にある.本邦に企業製胸部大動脈ステントグラフトが発売され15年が経過し,その成績は良好で,手術件数はなおも増加傾向である.ただし国内外のガイドラインにおいて多くの疾患に対するステントグラフト治療は高い推奨クラスではあるものの,いずれの疾患群においても,経時的に治療介入が増加してくる.治療後の形態変化や新たな合併症などもあるため,慎重な経過観察が重要である.