2018 年 21 巻 6 号 p. 766-771
症例は40代の女性。突然の腹痛と呼吸困難を訴え,昭和大学藤が丘病院救命救急センターへ搬送された。EF 15%程度と低心機能状態で,カテコラミンを投与しても循環動態を保つことができず,腹部造影CT検査で右副腎腫瘤を認めたことから,褐色細胞腫が原因によるカテコラミン心筋症を疑い経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support;PCPS)を導入した。速やかに血行動態は改善し,第5病日にPCPSを離脱した。第13病日に施行された123 I-MIBGシンチグラフィ検査では異常集積を認めなかったが,第3病日の血中カテコラミン3分画はいずれも異常高値を認めた。褐色細胞腫の診断で第46病日に腹腔鏡下右副腎腫瘍摘出術を施行した。カテコラミン心筋症による心原性ショックに対してPCPSを導入し,その後速やかに血行動態が改善した症例を経験した。病理所見では褐色細胞腫の広範な壊死所見を認めた。臨床経過および病理所見から,大量のカテコラミン放出後に腫瘍壊死となり,カテコラミン放出を認めなくなったため血行動態が安定したと考えられた。