抄録
わが国の産業は, 石油危機, 円高ショックなどの激しい環境変化による不況に対して, 個々の企業努力を主体に, そのつどこれらを克服してきた.しかしバブル経済崩壊後の産業活動は, 様々な企業努力にもかかわらず未だ低迷を続けている.そこで本研究は, 今後の産業活動の望ましい方向とその手段を探るため, 過去の環境変化が産業に与えた影響とその活動の変化パターンを明確にすることを目的とする.分析に当たっては, 産業活動を労働量と資本量の投入に対する生産量の産出でとらえ, 投入・産出の効率性を分析する手法であるDEAを採用した.さらに, 産業の活動実績を名目値のみならず実質値でも算出し, 両者を比較分析することで各産業の環境変化に対応する産業特性をより明確にすることができた.この分析結果は, 個別の企業にとっても将来の産業の活動方向を見通すための有益な経営情報になると考えられる.