2020 年 21 巻 2 号 p. 70-78
高齢化が加速する日本において、国民の過半数が終末期に自宅での療養を希望する一方、在宅医療を受ける際、症状急変時すぐに入院できるか不安があることが示されている。そのため、これらの不安感を軽減させる対応が求められる。また、多くの当該患者を受け入れる病院側の視点として、経営に与える影響を考慮することもまた重要と考えられるため、当該患者の特徴に係る全体像を把握することは意義深い。そこで本研究は、高齢者を対象として在宅医療の有無の観点から入院患者の特徴と救急車搬入により入院となる割合の違いを明らかにすることを目的とした。診断群分類研究支援機構が有するDPCデータより、在宅医療の有無別に高齢入院患者の属性、入院時の状況、退院時の状況などの違いをみた。その結果、在宅医療がある症例はない症例と比較して、認知症やがんなど併存症を伴う割合や低栄養および低ADL患者である割合が高く、在院日数の長期化がみられ、介護施設へ転院となる割合が高かった。また、がんをはじめ多くの主傷病において救急車搬入により入院となる割合が高かった。本結果より、在宅医療を受けている患者に対する入院加療を多く担当する病院は、当該患者の治療に対し在院日数遷延に伴う経営への影響に留意することが必要となるため、後方連携の充実など入退院管理の最適化に努め、経営への悪影響がないよう取り組むことが重要と思われた。