経済地理学年報
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政治地理学における国家研究
高木 彰彦
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1994 年 40 巻 1 号 p. 20-31

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抄録
政治地理学は伝統的に国家を対象とする学問であったが, 伝統的アプローチにおいては, 有機体的国家観が支配的であった. 先進諸国では, 1960年代以降, 福祉攻策の充実化にともなって国家の役割が増大し, 地理学者の国家の役割に関する関心も高まることとなった. 同時期に政治学において「マルクス主義国家論のルネッサンス」が進行したため, こうした研究動向が地理学内にも導入されるようになった. その結果, 地理学においても国家の形態や機能に関する研究が増加した. 政治経済的アプローチに依拠するこうした研究は伝統的なアプローチとは異なり, 国家の役割や国家と社会あるいは社会集団との関係を問題規するものであった. しかしながら, わが国の地理学においてはこうした研究の展開はみられない. 本来地理学者が行ってしかるべき研究が政治学者によって行われている状況が認められる. 社会諸科学において空間への熱いまなざしが語られる中, 政治学においても「空間」に注目した研究が増加の兆しを見せており, わが国地理学界においても, 国家への関心の高まりが期待されるところである.
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© 1994 経済地理学会
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