日本の付加体中に含まれる中古生代の海洋性岩石(主に石灰岩と層状チャートからなる)は,陸源砕屑物の到達しないパンサラッサ海の遠洋域で長期間堆積した記録を持つ.これらの堆積岩類は,微化石研究の進展により詳しい年代決定が可能になり,さらに1990年代からは主要・微量元素や同位体分析による多元素の情報を得ることで,高い時間解像度で古環境の復元が行われてきた.本巡検では,九州東部の津久見地域および高千穂地域に分布する秩父帯のペルム系〜ジュラ系石灰岩・層状チャートを対象として,これらの堆積岩類が記録した中古生代の古環境イベントに焦点を当てた巡検を予定している.特に,(1)ペルム紀キャピタニアンの寒冷化と絶滅イベント,(2)ペルム紀末大量絶滅,(3)前期三畳紀の海洋無酸素事変と中期三畳紀の回復過程,(4)後期三畳紀のカーニアン多雨事象,(5)後期三畳紀ノーリアンの天体衝突,(6)前期ジュラ紀トアルシアンの海洋無酸素事変を記録した堆積岩類を観察する.