咽頭皮膚瘻に対し遊離組織により瘻孔を閉鎖する場合,放射線照射や感染,または以前の手術により頚部周囲に移植床血管を求めるのが困難なことがある。本稿では,咽頭皮膚瘻に対し,大網をBridge flapとして用い,さらに遊離空腸を用いることにより良好な結果を得たので報告する。
症例は 2001 年 1 月から 2010 年 12 月までの 10 年間において大網をBridge flapとして利用し,遊離空腸弁とあわせて移植した症例は 9 例であった。そのうち 4 例(全例男性,平均年齢 72.8 歳)が咽頭皮膚瘻の閉鎖目的で手術を行った。この 4 例に対し遊離大網弁をBridge flapとして用い,内胸動静脈に右胃大網動静脈を吻合した。さらに右胃大網動静脈の遠位に空腸動静脈を吻合し,遊離空腸移植を行い再建した。
全例において遊離組織片の生着は良好で,普通食の摂取が可能となった。
大網をBridge flapとして用い,内胸動脈を移植床血管として利用することにより,安全に手術が施行でき,さらに遊離空腸移植により咽頭皮膚瘻の閉鎖を行うことは,有用な手術方法の 1 つであると考えられた。
抄録全体を表示