創傷
Online ISSN : 1884-880X
ISSN-L : 1884-880X
3 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
第3回日本創傷外科学会総会・学術集会(2011年7月,札幌)
特別プログラムより
特集1 : 単純縫宿 vs 局所皮弁 ・ Z形成術
  • 荻野 晶弘, 丸山 優, 岡田 恵美, 大西 清, 林 明照
    2012 年3 巻2 号 p. 41-51
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
    顔面皮膚腫瘍切除により生じた小範囲の皮膚・軟部組織欠損の再建においては,欠損の大きさによって単純縫縮するか,局所皮弁を用いるかの判断に苦慮する場合も少なくない。その判断の際には,欠損部の皮膚の性状や,周囲の解剖学的land markを考慮したうえで,最も適した方法を選択する必要がある。局所皮弁を選択する場合,顔面は整容的配慮が必要であり,単なる欠損の被覆のみでなく色調・質感の連続性を有する形態の再現,すなわちesthetic mindを踏まえたunit原理下再建の有用性は高い。しかし,顔面は部位によって皮膚の性状,質感,厚みなどが異なり,たとえunit形態に合致した再建であっても,質感,色調,厚さなどの異なる組織を移行した場合,不自然な形態を生じ,二次修正術を要することもまれではない。そのため,欠損部皮膚に適合した採取部,移植法を選択し,皮弁の薄層化など厚みの調整を行うなどの配慮が必要である。
  • 久保 盾貴, 大崎 陽子, 前田 大介, 細川 亙
    2012 年3 巻2 号 p. 52-57
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
    腫瘍切除後などの皮膚欠損の閉鎖に,局所皮弁はよく使用されている。近年身体各部の血管解剖が研究され,穿通枝皮弁などさまざまな有用性の高い皮弁が開発されてきたが,その一方,進展(前進)皮弁,Limberg flapなどの古典的な幾何学的皮弁もまた依然として有用性は高い。特に顔面皮膚は血行が豊富であり,ランダムパターンの局所皮弁をかなり自在に活用できる部位である。幾何学的局所皮弁の適用に際しては,皮膚の余裕・性状や剥離の程度なども考慮して術後の縫合線がどういう形態をとるか予測し,それをしわの向きやエステティックユニットの境界などに合わせて目立たないようにする工夫が必要である。
  • 元村 尚嗣, 羽多野 隆治, 小林 理恵, 坂原 大亮, 藤井 奈穂, 原田 輝一
    2012 年3 巻2 号 p. 58-63
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
    顔面皮膚腫瘍の治療法として,顔面の立体構造が損なわないように,われわれは局所皮弁による再建を行うことが多い。特にわれわれは oblique sigmoid 皮下茎皮弁 (OSS flap) を多用し良好な結果を得ている。顔面原発皮膚悪性腫瘍患者,男性 5 例,女性 6 例に対してOSS flapによる再建を行った。腫瘍の内訳は,基底細胞癌 6 例,有棘細胞癌 1 例,ボーエン病 2 例,日光角化症 2 例であった。部位は,内眼角部 2 例,鼻根 2 例,頬部 5 例,外眼角部 1 例,鼻唇溝部 1 例であった。皮弁は全例で生着し,全例で整容的に満足いく結果となった。局所皮弁による再建は,正常皮膚の切除量が少ないこと,顔面の凹凸を損なわず面として再建できる点が優れている。OSS flapは Onoらにより1993年に報告された皮弁である。適応としては顔面の15mm以下の良性小腫瘍の再建法として優れていると報告されてきたが,われわれは適応を拡大して顔面皮膚悪性腫瘍切除後の比較的大きな欠損に対しても良好な結果を得ている。顔面皮膚腫瘍切除後再建においては,ほとんどの欠損に対してOSS flapは非常に優れた方法である。
  • 木村 中
    2012 年3 巻2 号 p. 64-71
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
特集2 : ケロイドの治療戦略
  • ~われわれの放射線治療の使い分け~
    吉龍 澄子, 吉田 謙
    2012 年3 巻2 号 p. 72-81
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
    ケロイドの切除後照射療法は,おもに電子線による外照射と小線源による組織内照射の 2 つの方法がある。われわれは症例に応じて使い分け良好な結果を得ている。
    切除後照射を行うのは原則として前胸部,恥骨上部,肩関節周囲の症例である。その他の部位では真性ケロイドのある症例や,再発例,患者の強い希望のある場合に照射を行う。平坦で下に骨組織のある部位や,皮弁の場合は外照射のよい適応になる。一方,複雑な曲面や再発症例などは組織内照射が適している。
    1 年以上経過観察したケロイド・瘢痕切除症例は 51 例,64 部位であったが,このうち 13 例,19 部位に術後照射を行っている。外照射は 15Gy (3分割),組織内照射は 12~24Gy (2~4 分割) で照射した。照射例 19 部位中 2 例で再発した (10.5%) が,これは真性ケロイドに対して組織内照射 12Gy (2 分割) した症例であった。部位や病因に応じて照射方法や線量のさらなる検討が望まれる。
  • 小川 令, 赤石 諭史, 土肥 輝之, 百束 比古
    2012 年3 巻2 号 p. 82-88
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
    肥厚性瘢痕やケロイドは創傷治癒過程での異常が原因で生じる皮膚の線維増殖性疾患であり,慢性的に持続する炎症が特徴的である。文献的考察から,ケロイド・肥厚性瘢痕の局所的因子として,(1)創にかかる周期的な皮膚張力,(2)不適切な湿潤環境,(3)異物反応,アレルギー反応,(4)感染の反復に加え,その後の ⌈炎症の持続⌋ があると考えられた。特に(1)~(4)の原因となる ⌈物理的刺激の軽減⌋ と対症療法としての ⌈炎症の軽減⌋ に重点を置くことにより,現在の治療がどのような目的で行われているか医師も患者も理解しやすくなり,治療が円滑に進むと考えられた。また,われわれが行っている物理的刺激の軽減に関与する治療法として,1. 減張縫合の改善,2. Z形成術,3. Small Wave Incision,4. くり抜き法,5. 皮弁による再建,6. ジェルシートやテープによる創の固定,また炎症の軽減に関与する治療法として,1. 術後放射線療法,2. ケロイドに対する放射線単独治療,3. レーザー治療,4. 副腎皮質ホルモン剤の工夫,について考察した。
原著
  • 八木 俊路朗, 鳥山 和宏, 小野 昌史, 神戸 未来, 亀井 譲
    2012 年3 巻2 号 p. 89-93
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
    咽頭皮膚瘻に対し遊離組織により瘻孔を閉鎖する場合,放射線照射や感染,または以前の手術により頚部周囲に移植床血管を求めるのが困難なことがある。本稿では,咽頭皮膚瘻に対し,大網をBridge flapとして用い,さらに遊離空腸を用いることにより良好な結果を得たので報告する。
    症例は 2001 年 1 月から 2010 年 12 月までの 10 年間において大網をBridge flapとして利用し,遊離空腸弁とあわせて移植した症例は 9 例であった。そのうち 4 例(全例男性,平均年齢 72.8 歳)が咽頭皮膚瘻の閉鎖目的で手術を行った。この 4 例に対し遊離大網弁をBridge flapとして用い,内胸動静脈に右胃大網動静脈を吻合した。さらに右胃大網動静脈の遠位に空腸動静脈を吻合し,遊離空腸移植を行い再建した。
    全例において遊離組織片の生着は良好で,普通食の摂取が可能となった。
    大網をBridge flapとして用い,内胸動脈を移植床血管として利用することにより,安全に手術が施行でき,さらに遊離空腸移植により咽頭皮膚瘻の閉鎖を行うことは,有用な手術方法の 1 つであると考えられた。
症例報告
feedback
Top