今回,5例の産褥精神障害の患者に対して,患者,新生児,家族をひとつのユニットと考え,治療する方法「母児同室治療」を実践し,良好な治療経過を得ることができた.1例のみ経産婦で前回分娩後に,マタニテイブルー症状を経験したものがあったが,それ以外は初産婦で,精神神経疾患は罹患既往なく,今回が初発であった.発病形態から見た分類では,非定型精神病型3例,うつ型2例であった.すべて,入院後1週間以内にタッチングもしくは母児同室を開始し,薬物療法を行いながら,症状が安定したあたりから心理療法もとりいれることにより,精神神経症状のみならず母児関係の改善がもたらされ,完全母児同室と自立育児が可能となった.また,母児同室入院は,家族がかかわることで家族関係の改善につながり,患者の心理的負担を軽減するという結果につながった.「母児同室治療」は,母子のみならず家族をひとつのユニットとして,問題解決の場を与えてくれるという意味で,大きな治療効果をもたらすものと考える.
抄録全体を表示