【目的】 摂食・嚥下機能が衰えた高齢者や障害者に行うリハビリテーションでの間接訓練に,メンデルゾーン手技がある.この手技は舌骨喉頭挙上の改善を目的としているが,患者への教示が難しく,動作習得に時間がかかるという欠点がある.そこで著者らは,バイオフィードバック手法を用いて効率的に喉頭挙上を目指す訓練法を考案した.本研究の目的は,喉頭運動測定器SFN/3A の開発,および本装置を用いた喉頭挙上訓練効果の検証である.
【方法】 被験者は,健常成人男性10 名および老人保健施設に入所する高齢男性4 名とした.健常者は,バイオフィードバックを用いる群と,用いない群とに分けた.健常者(BFあり群)と高齢者群では,次の3 ステップで喉頭挙上実験を行った:1)画面を見ない,2)画面を見る,3)画面を見ない.健常者(BFなし群)は,3 ステップすべてを通して,画面を見ずに喉頭挙上した.1 回当たりの喉頭挙上時間は5 秒とした.分析から,1)喉頭挙上量 [mm],2)喉頭挙上時間 [s],3)挙上維持時間 [s] のパラメータを算出した.
【結果】 喉頭挙上量は,健常者(BF あり群)ではステップ1~3 を通して増加傾向が確認されたが,健常者(BFなし群)では変化がなかった.喉頭挙上時間は,両群とも変化がみられなかった.挙上維持時間では,両群ともに増加傾向がみられた.高齢者では,全パラメータにおいて,ステップ1/2 間で有意な増加や増加傾向がみられた.ステップ2/3 間では,挙上維持時間のみで有意な減少が確認された.
【考察】 健常者は,一度バイオフィードバック訓練を行うと,その後バイオフィードバックを与えなくとも,喉頭挙上ができたと考えられる.一方,高齢者は,5 分程度のバイオフィードバック訓練を行うだけでは,喉頭挙上法を完全には体得できないと考えられる.以上まとめれば,健常者と高齢者では,両者ともにバイオフィードバック効果は認められたが,高齢者では,動作習得のために繰り返しの訓練が必要になると考えられる.
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