デジタルツインは、装置やプロセスをシミュレーション空間上に再現し、センシングデータと組み合わせてリアルタイム監視・分析を可能にする技術である。しかし、高精度モデルの作成は困難であり、導入・運用コストも高いという課題がある。本報告では、モデルベース開発(MBD)において作成した1D-CAEモデルの集合体を用いた簡易デジタルツインによる異常原因推定を提案する。本手法は対象の完全複製ではなく一部モデルに留まり、非モデル化要素やノイズによる誤差を含むが、これらを許容した上で異常原因推定を可能とする事例を示す。
JAXAでは宇宙空間での物資補給やデブリ捕獲等の軌道上サービスの実現を担うドッキング機構やデブリ捕獲機構の開発を進めている。これらの開発において、その成立性やリスクの評価において、物理空間において実運用環境を模擬した地上試験に加えて、仮想空間でのデジタルモデルによるシミュレーションの構築を進めるとともに、それらの融合にも取り組んでいる。本発表では、これらの宇宙システムを対象としたデジタルツインズの活用について報告する。
民間航空機の予知保全を導入における課題を,ライフサイクルにおける様々なステージにおけるエアライン,機体メーカー,認証機関といったステークホルダー間でのコンテキストに介在する情報の関係性をオントロジーを用いて整理する.特に,予知整備の効率化のための最適化問題定式化に着目し,オントロジーを通した情報構造化の有効性を議論する.
Accurate prediction of remaining useful life (RUL) is crucial for efficient maintenance of industrial equipment. Although various deep learning-based RUL prediction methods have been studied in recent years, effectively utilizing unlabeled data and long RUL data remains challenging. In this study, we apply a previously proposed method to the semi-supervised RUL prediction using time-series data. In this approach, a survival function modeled by neural networks is learned under hazard constraints. Introducing the survival function allows for consistent probabilistic handling of both labeled and unlabeled data. Experimental results on the CMAPSS dataset demonstrate that the proposed method outperforms baseline approaches.
In the development of human-robot collaborative systems, comprehensive risk assessment by designers and users is demanded. We previously proposed a risk assessment method that automatically identifies design information related to objective assessment by designers, using a dependency model of design information and a digital twin. In this study, the previous method is improved to take users' perception into account, using virtual reality. By developing a feasibility prototype of a collaborative conveyance system in a warehouse, the spatial design information related to worker's visual perception of a robot suddenly appearing from behind an obstacle was identified.
本研究は小規模データによる画像検査の異常検知に量子機械学習を適用した。量子カーネル空間が古典カーネル空間より優れた表現力を持つと仮定し、農産物等の製品画像検査で実証実験を実施。市場収集した少数の農産物画像データセットに対し、回転ゲートと制御ゲートを簡素化した様々な量子カーネルを組み込んだSVMで学習を行った。各量子カーネルのF1スコアはCNOTゲート使用により顕著な改善を示し、量子シミュレータでの確認後、実際の量子コンピュータでも有用性を検証。特定の量子カーネルを用いたSVMは古典カーネルと比べ有意に高いAUC値を達成した。
精密部品であるコネクタピンの不良品検査において,目視検査は人手不足や生産効率および検査精度の問題がある一方,自動検査のための検査装置は初期コストが高額となる問題がある.本研究では検査精度の向上を低コストで実現するため,市販のベルトコンベアとiPad Airのカメラを用いたシステムにおいて,背景差分法による物体検出とオートエンコーダによる異常検知を組み合わせて,コネクタピンの自動検品を実現する方法を提案する.実験の結果,様々な長さのコネクタピンの曲がりの検知だけでなく,長さが異なる異品を検知できることが明らかになった.また,自動検品の速度としても実用的なリアルタイム性を実現できることがわかった.
デジタルツインは,M.Grievesが2002年にPLMコースでその概念を提唱し,2012年にNASAが宇宙機の寿命予想にはじめてその言葉を使ったとされる.2019年にはガートナーが注目ワードの一つに挙げ,最近では,製造業だけでなくスマートシティ,防災,ヘルスケアなど応用は広がりを見せている.しかし,急速に拡大・進展が行われたため,定義や解釈が曖昧になっているのが現実である.本報告では,デジタルツインとは何か,その定義と概念的枠組みについて製造業を中心に改めて整理・明確化を試みるとともに,標準化や実装方法の動向についてレビューする.また,研究会活動や大学における教育や人材育成の事例を紹介する.