アーキテクチャの概念に,組織能力,能力構築の環境の視点を加えたアーキテクチャ・ベースの戦略論に基づき,自動車やエレクトロニクスなどの産業に関する数多くの研究が展開されている.この戦略論は,経営戦略論における「分析型戦略論」の視点を取り入れたものである.一方,経営戦略論には「プロセス重視型戦略論」も存在し,また,実際の企業活動にはプロセスに関連する活動もみられる.筆者らは,リチウムイオン電池産業を例にとり,経営戦略論の視点からアーキテクチャ・ベースの戦略論を再考し,韓国・中国の電池メーカーが「プロセス重視型戦略論」の視点も取り入れた「統合アプローチ」を採っていたことを明らかにしている.本稿では,アーキテクチャ・ベースの戦略論における,「統合アプローチ」の考え方について考察した結果を述べる.