2018 年 27 巻 2 号 p. 87-90
症例は72歳女性.2年前に遠位弓部大動脈瘤に対してVALIANT(Medtronic, Santa Rosa, CA, USA)を用いて左右腋窩動脈間バイパスを併用した胸部ステントグラフト内挿術を施行された.術後CTではendoleakは認めないものの徐々に瘤径が拡大し,待機的手術予定であったが,その2カ月前に左胸痛にて救急搬送され,CT上,胸部大動脈瘤破裂の診断で左開胸による人工血管置換術を施行した.術中所見でも瘤内には明らかな血液の流入や新鮮血栓は認めず,瘤大弯側に小指頭大の破裂孔があり,その破綻した動脈壁からのoozingを認めるのみでendotensionによる瘤破裂と診断した.endotensionは,明らかなendoleakを認めない瘤拡大であり,グラフト素材がその発生に寄与していると考えられている.本症例のように破裂に至ることも稀ではなく,厳重な観察と早期の血管内治療追加も有用な戦略と考える.