抄録
心原性ショックに陥った左冠動脈主幹部病変の急性心筋梗塞症例に対して,長期に補助循環を使用し救命しえた。患者は51歳,男性。経皮的心肺補助(percutaneous cardiopulmonary support, PCPS)・大動脈内バルーンパンピング(intraaortic balloon pumping, IABP)サポート下で経皮的冠動脈形成術(percutaneous transluminal coronary angioplasty, PTCA)を施行後,高度心不全,腎不全に陥りPCPS離脱が不能となった。そのため,さらに左心補助効果が強く長期使用可能な左心補助人工心臓(left ventricular assist device, LVAD)を装着し,離脱に成功した。しかし腎機能は回復せず慢性腎不全となった。この症例を通じ急性心筋梗塞後の高度心不全症例に対して,補助循環を使用して心機能の回復まで全身状態を維持する,あるいは心移植が1つの治療法となった現在では心移植までのブリッジとし救命しうる可能性が示唆された。