2020 年 53 巻 12 号 p. 649-655
症例は61歳, 女性. 嘔気, 腹部膨満感, 上腹部痛を認め救急搬送された. 著明な腹部膨満と, 両下肢にチアノーゼ, 網状皮斑を認めた. 造影CTでは著明に拡張した胃が腹部大動脈を圧排しており, 腎動脈レベル以下の造影効果が消失していた. 胃軸捻転症と診断し, 経鼻胃管を挿入して胃の減圧を図り腹部大動脈の圧迫を解除すると下肢の急速な色調改善が認められたが, すぐに血圧が低下し意識障害を呈したので人工呼吸器管理とした. 動脈血ガス分析では高度の乳酸アシドーシスと高カリウム血症を認め, 尿はポートワイン尿を呈していた. 腹部大動脈圧迫が解除され生じた虚血再灌流により, 筋腎代謝症候群 (myonephropathic metabolic syndrome: MNMS) が生じたと判断し急性血液浄化療法を開始した. 全身状態改善後に虚血となった胃の全摘術を施行し, 約1か月後に透析離脱することができた. 広範囲の虚血再灌流の場合, MNMSに対する迅速な急性血液浄化療法の施行を検討する必要があると考えられた.